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本編 幼少期
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しおりを挟むあれからアレイルやアドルフ達4人に練習に付き合ってもらって、4人とも触れ合えるようになった。
「ルーク、病の情報をくれて本当に助かった。プレストン家が中心となって準備を進めてくれたおかげで、被害を最小限に抑えれている」
側近達もエドワード達と情報を共有している為、病の事を事前に知る事が出来ていた。その為、ラルフやライリー伯爵は自領で病が流行ることを知り、直ぐにプレストン達に協力をしたそうだ。
「死者の数も例年の10分の1程らしいな」
「プレストン伯爵達が頑張ってくれたおかげだよ。僕だけでは情報があっても何も出来ない。けど、皆の役に立てて良かったよ」
ルーカスがそう言うと、ラルフがもう一度お礼を言った。
「しかし、私はやはり反対です。人が近付くだけで震えてしまわれるのに、敵しかいない所に潜入するなんて」
「まぁ、その気持ちは俺達も変わらねえが」
アレイルがそう言うと、ライル達も賛同した。
これは皆が皇城に来た時から何度も言われていたことだ。特にルーカスの側近の3人は、その思いが強かった。
「それはもう、父様と話し合って人が近くにいる事に慣れてから再開すると決めたよ」
「しかし……!」
「アレイル」
アレイルが反対の言葉を紡ごうとしたのをアドルフが止めた。
「ありがとう、エイル。僕を心配してくれているのは分かっているよ」
「でしたらもっと、私達を頼ってください! 学園にいたから守れなかった、なんてそんな言い訳をしたくありません……!」
アレイルはすごく辛そうな表情でそう言った。
「うん。君達の事も頼るから、そんな顔しないで」
「エイルの方がルークに慰められてるじゃねえか」
「うう、すみません、ルーカス殿下」
アレイルは申し訳なさそうな顔をしてそう言った。
「ふふふ」
「なんか、ルーちゃんのところは主人と側近って感じが強いな~。私達のとこはただの友人て感じなのにな~」
「まあ、年が5つも離れているし、何より3人共、礼儀良すぎて真面目すぎるからね」
「確かにそうだな。私とラルフは人に遠慮しないし、メーリンはチャラいからな」
「けれど3人だってしっかり側近としての立場を弁えている。君たちの接し方もエイル達の接し方も、どちらも僕は素敵だと思うよ」
ルーカスが微笑んでそう言った。
((そういうとこだぞ……))
それからセドリック達との練習を1週間ほどで終え、帝都に来ていたというオスカー家の人達とも会い、触れ合う練習をして2週間程で克服した。
その後少し経ってから、ルーカスはアーサーに呼び出された。
「全員との接触を克服したそうだな」
「うん。次は他の人達との練習だよね」
「ああ。まずは騎士団や魔法師団の女性達と触れ合ってみるか?」
ルーカスはアーサーの提案を少し考えた。
確かに、僕がよく会うのは騎士や魔法士達だから、早く慣れていた方がいいね。けど、最初は女性ならやはり……。
「最初はリリーの専属侍女のテナでは、だめかな? 最近リリーはティファニー達と一緒にいるみたいだから、少し離れても大丈夫だと思うんだけど」
「コリンか。近い内にリリーに会うつもりか?」
「いや、悲しませたくないから、会うのはリリーが魔法の授業を始める時かな。リリーも庭の方でするのならだけど」
「ああ、そのつもりだ。ならば、9の月までに頑張らないとな。コリンには、私から伝えておく」
「ありがとう」
リリアンはルーカスに会いたがっているらしい。それはリリアンからは、少なくとも嫌われてはいないということだ。
そんな相手から、初対面で怯えられるというのは少し悲しくなるものだ。その為ルーカスは、リリアンと会って震える可能性がある以上は会わないつもりでいるようだ。
アーサーと話してから数日後、コリンと練習する日となった。ルーカスはモニカと皇城の一室へやってきた。
コンコンコン
「ルーカス殿下が参りました」
「お入りください」
ガチャリ
「お待ちしておりました」
ルーカス達が部屋に入ると、侍女が少し離れた位置で立っていた。
「お初にお目にかかります。コリン・テナ・ブルームが第3皇子殿下にご挨拶申し上げます」
「ああ。今日から少しの間よろしく頼む」
ルーカスがそう言うと、コリンは少し驚いた表情をした。
挨拶を済ませると早速練習に取り掛かった。ルーカスはコリンに少しずつ近付いて来てもらう。しかし、5mほどの距離があっても、ルーカスの体は少し震えている。
やはり、初対面ではだめだったかな。
(この距離でも、震えておられるわ。本当に人が怖いのね)
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