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本編 幼少期
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しおりを挟むエドワード達が帰ってきた次の日から、ルーカスはエドワードとウィリアムと一緒に練習をした。驚いた事に、2人との接触に1週間程で慣れる事が出来た。
「これでやっとルークを抱きしめられるね」
「そうだな」
そう言うとウィリアムは、ぎゅうっとルーカスを抱きしめ、エドワードはルーカスの頭を撫でる。
「次の練習相手はどうするんだ?」
「キャシーやティファニー達に付き合ってもらうよ」
「確かに先に女の子の方が良いね」
そして次の日、キャシー達4人に練習に付き合ってもらう為に、4人とソフィアにも集まってもらった。しかし、ルーカスは4人と触れ合っても体が震えることも強ばることもなかった。
「全然大丈夫の様だね」
「そうね」
「ルーが心を開いている女性なら、触れ合っても平気という事かしら?」
他の人と会っていないからそこは分からないけれど。
「一先ず、心を開いた女性は、という事は確かだろうね」
「…ルーカス殿下、次はリヴとエイルを練習相手になさるおつもりですか?」
キャサリンが少し考えを巡らせた後、ルーカスに尋ねた。
「うん、そのつもりだよ」
「でしたら、2人は今日、暇にしておりますのでお呼び致します。もしかすれば、女性だけでなく男性でも心を開いた方なら大丈夫なのかもしれませんので」
「キャシー様の言う通りです。私もノア様達とお試しになられた方がよろしいと思います」
「私もそう思います!」
キャサリンにグレースとナタリーが賛成した。
「それもそうだね。では、お願いしようかな」
「かしこまりました」
キャサリンはそう言った後、体内で魔力を循環させた。
「リヴ、エイル、殿下がお呼びしているわ。共にこちらに来てくれるかしら」
シュンッ!
「お待たせ致しました、ルーカス殿下」
少しするとアレイルとリヴァイが何も無い所から一瞬で部屋に現れた。
2人が来たのを確認してキャサリンは魔力を元に戻した。
「今のが共鳴と転移の魔法なんだね」
「凄く便利ですね!」
今の連携の仕組みは、まずキャサリンが魔力登録をした2人の魔力を辿って、聴覚を共鳴させる事でキャサリンの耳に届いた言葉を2人に届けた。
そして、3人は魔力で繋がった状態になっているため、その繋がりを使ってアレイルがリヴァイの所に転移する。最後に、リヴァイを連れてキャサリンのところまで転移した。
これを見抜いたディムロットは本当に凄いね。
「殿下、なにか緊急の用がございましたか?」
「いや、緊急という訳では無いのだけど」
ルーカスは先程の事をリヴァイとアレイルに説明した。
「成程。でしたら早速、私達と練習してみましょう」
「では、まずリヴ、少しずつ近付いてきてくれるかな」
「承知致しました」
リヴァイはゆっくりとルーカスに近付いていく。
なんだろう。リヴが近付いたり触れたりしても震える気がしないな。むしろ安心感すら感じるのではないかという気がする。
ルーカスが思った通り、リヴァイが目の前に来てもルーカスの体が震えることは無かった。
「では、少し触れてみてくれるかな」
「はい」
(触れる……)
ポンッ
リヴァイは、ルーカスの頭を撫でる様に手を置いた。
ああ、なんだろう。すごく落ち着く。
「…姉さん」
「どうしたの、怖い?」
ソフィアの言葉を聞き、リヴァイは急いで手を離し、後ろに下がった。
「もしかしたら」
「もしかしたら?」
「リヴの手は僕の体の一部なのかもしれない」
「「「……え?」」」
ソフィア達はルーカスの言葉を噛み砕けず、呆気に取られた。
「それくらい、離れると寂しくて触れられると嬉しいと思うくらい、リヴの手は落ち着く」
ルーカスは、はにかむ様な優しい微笑みでそう言った。
「…それは大変、光栄にございます」
ルーカスの言葉に、リヴァイは嬉しそうに応えた。
(違うのよ、リヴ! 主人に頼ってもらえて嬉しいのは分かるわ。けど、無自覚とはいえルーの言葉の意味はそうでは無いのよ!)
「どうして落ち着くのかは分からないけど、側近として君が側にいてくれるのは心強いよ」
(ルー、貴方が欲しているのは側近としてのノアではないと思うわ)
「ありがとうございます」
((はぁ、分かっていないわ……))
ルーカスとリヴァイのやり取りに、アレイルやキャサリン達は呆気に取られた。
そして双方の姉達は2人の無自覚さとそういう感情への疎さを心配したのだった。
そしてその後、アレイルとも練習してみたが、アレイルが1m程の距離でルーカスの体が少し強ばってしまった。その為、次からはアレイルとアドルフ達と練習することにしたのだった。
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