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本編 幼少期
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しおりを挟む時は遡り11の月6の日。ルーカスはモニカが部屋を出た後、置き手紙を残し神界へと行った。
ヒュッ!
ルーカスは自室の寝室から、一瞬で真っ白な部屋に着いた。その部屋には、長い金髪と金の瞳をした綺麗な男性が机に腰掛け仕事をしていた。
《テオ、よく来た》
「ルミ、ナス……」
何だか、父様の執務室みたい。
《そこに座って待て。直ぐに終わらせる》
「ありが、とう」
声、出しづらいな。
ルーカスは、ルミナスに言われた通りソファに腰かけて待った。
ルミナスってすごく綺麗だな。髪も瞳も綺麗だし、無表情で厳格そうだし。
ルーカスがそんなふうに眺めていると、ルミナスが仕事を終えて近付いてきた。
《待たせたか?》
ルーカスは顔を横に振った。ルミナスは、ルーカスが声を出さないのを見て先程の声を思い出しルーカスの首に触れた。
パァー!!
その瞬間眩い光に包まれルーカスの喉と体中の傷が跡形もなく治っていた。
「ありがとう」
《ああ。……我は大丈夫なのだな》
「ん? ああ、うん。父様もモニカも怖くないんだけど、体が過剰に反応してしまうみたい」
《そうか》
ルミナスはルーカスに何があったのか、今までずっと神界から見ていたのだろう。
《案内する。付いて来い》
ルミナスが神界を案内してくれるようでルーカスは後ろをついてまわった。
神界はもっと大きい皇城の中みたいだった。それぞれの神にそれぞれの部屋があり神が集まる広場があった。鍛錬場のようなものもある。殆ど白い空間だ。
あれ? さっきから誰にも会わないし、人? 神様? の気配も全然しない。
「ねぇ、ルミナス。どうして誰にも会わないのかな?」
《隠れている》
「隠れている? もしかして、他の神様は僕と会ってはいけないのかい?」
ルーカスが尋ねると、ルミナスは首を振る。
《汝はリオのようにいつも笑顔でいる訳では無いが、今の表情にはいつも以上に感情が見えない》
確かにルーカスは日頃から無表情とまではいかないまでも、感情が表に出ることが少ない。ふとした時に笑ったり、悪戯をする時に楽しそうに笑ったりすることはある。
しかし、何時も笑顔を絶やさず、優しい口調で話すウィリアムと、同じく穏やかな口調のルーカスだが、表情が動く時間はウィリアムの5分の1にも満たないだろう。
そんなルーカスの表情が今日は本当の無表情になっている。
《神達は汝の生活を見ていた。汝が人を怖がっているのも知っている》
……つまり、僕を怖がらせないために隠れているということ?
「ふふふ、そうなんだ。君達は、本当に優しいね。ありがとう、少し元気が出たよ」
《? 面白いか?》
「だって、神様がわざわざ僕の為に、自分達の領域で気配を隠して隠れてくれているんだよ? 驚いて笑ってしまったよ」
《そうか。今日はもう寝ろ。明日、氷の神と花の女神に会わせよう》
話しているとルミナスの部屋に戻ってきた。ルミナスはルーカスに寝床を用意した。
「うん。お休み」
ルーカスは直ぐに眠りについた。
翌日、ルーカスはルミナスに連れられて氷の神と花の神の所へ訪れた。
〈花の女神、フロースよ。呼び捨てで敬語も要らないわ。よろしくね〉
⟬氷の神、グラキエスだ。私も呼び捨てで構わない。敬語も不要だ⟭
「分かった。テオだよ。フロース、グラキエス、よろしくね」
グラキエスは肩程の青みがかった銀髪と銀色の瞳で、白い光で発光している綺麗な男性。
フロースは柔らかい桃色の長い髪と緑の瞳で、蝶のような羽のある可愛らしい女性。
〈可愛い!! 私の部屋にずっと閉じ込めておきたいくらいだわ!!〉
⟬やめろ、フロース。テオが困る⟭
〈あら、困っていないわよね、テオ。ルミナスは口下手だから嫌になったら何時でも私の所にいらっしゃい〉
「ふふ、ありがとう。確かにルミナスは口下手だけど、僕の事を思ってくれているのは伝わってくるから、僕が彼を嫌う事は無いと思うよ」
〈あら、残念だわ〉
フロースは口ではそう言ったがとても嬉しそうな表情をしている。
《汝らにはテオを指導して欲しい》
⟬ 何のだ⟭
《フロースは飛び方。グラキエスには氷の魔法だ》
⟬ なるほど。分かった⟭
どうしてルミナスは、僕がお願いする前に分かったんだろう。
〈勿論よ。じゃあ今日は私の方からにしましょう!〉
《ああ》
⟬ ならば私の方は明日にしよう。交互でいいか?⟭
「うん。ありがとう」
《グラキエスの時は我も付き添おう》
⟬ああ、それが良い⟭
〈なら、行きましょうか、テオ〉
「うん。二人ともありがとう」
ルーカスはそう言ってフロースについて行く。
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