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本編 幼少期
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しおりを挟むルーカスが皇城に戻ってから2週間程経った。授業を受けたり、庭園の世話をしたりしていた。相変わらず、前世の夢を見たが、それも数回で顔色もそこまで悪くはなく、普段通り過ごしていた。
そして今年は11の月1の日にルーカスの誕生日を祝うためにアーサー達と一緒に食事をした。
「当日に祝えなくてすまない、ルーカス」
「学園を休めればいいんだけど」
「ふふふ、だめだよ。当日でなくても、祝ってくれる事が嬉しいんだから。ありがとう、皆」
「来年はルーカスも乗馬の訓練と伝書用の鳥の調教が始まるな」
「馬と鳥はアドルフの父上のクラーク公爵が送ってくれるんだよ。ルークの馬はどんな子かな」
アドルフの生家、クラークは動物の調教を担う帝国で1番の家門だ。その為、皇族の乗馬用の愛馬を贈る役割を持っている。
エドワードの愛馬は男前な焦茶色のオレンジの瞳の馬で、ウィリアムの愛馬は金髪碧眼の白馬らしい。
そして伝書用の鳥は皇族の象徴である鷹を贈られた様だ。
その後は贈り物を貰ったり、沢山話をしたりして過ごした。
11の月3の日。今日は、魔法と武術の授業は休みで、ルーカスは書斎でアルフィーの授業を受けている。
「殿下は本当に記憶力がよろしいですね。まさか他国の言語を本を読んだだけで身に付けられるとは」
「日常的な会話はまだ難しいと思うけどね」
「いえいえ、隣国の5カ国の言語は日常会話も出来る程の言語力ですよ」
「ありがとう」
ルーカスはオスカー領に行っている間、音の魔法以外の授業を受けられ無かった。その為、他国語で書かれた小説や歴史書を読み、学習していた。
今ではナサニエル語以外に5ヶ国語を話せて、他にも数ヶ国語を解読することができるようになった。
「では、本日の授業はここまでです。次回は算術の試験を致しますのでそのつもりでお願い致します」
「分かった。今日もありがとう」
そう言ってルーカスは書斎を出て自室に戻ろうとするとモニカが書簡を持ってやって来た。
「殿下、扉の前にお手紙が置かれておりました」
ルーカスはそれを受け取って読んでいく。
母上からの様だけど直筆ではないね。それに、モニカに渡さなかったのは不自然だな。
「モニカ、母上から後宮に来て欲しいと書かれている。付いてきてくれるかな」
「畏まりました」
「アルフィー、悪いけど少しここで待っていてくれるかい? 何も無ければモニカに伝えに来させるよ。緊急の時は来てくれるかい?」
「承知致しました」
「僕の書斎にある本は勝手に見て構わないから、それで暇を潰しておいてくれるかな。
モニカ、アルフィーにお茶を持ってきてくれるかい?」
「畏まりました」
モニカはすぐに紅茶を入れて、茶菓子と一緒に持ってきた。
ルーカスはモニカを連れて後宮に向かった。
ナサニエル帝国の後宮は基本男子禁制だが、皇族の人間と皇族の人間の許可がある人間は立ち入ることが出来る。
「殿下はアリス様のお手紙が怪しいと思われておられるのですか?」
「そうだね。母上からの手紙であれば気を張る必要は無いんだけど、その確証が持てないから。モニカ、何かあったらすぐにアルフィーの所まで走ってね」
「承知致しました」
ルーカス達は後宮の指定された一室へ着いた。
母上の気配はないね。でも、誰の気配だろう? 今まで会った人の気配ではない3つの気配だ。……入ってみるしかないか。
コンコンコン
ルーカスが扉を叩いたが、中からの返事がない。
「入るぞ」
ルーカスはモニカと顔を見合わせたあと、扉を開いた。
っ!?
ルーカスが扉を開くと、扉の向こうにいた1人の男に腕を掴まれ、押さえ込まれた。
「モニカ! 急いでアルフィーを連れて来なさい」
「っ、分かりました!」
モニカはルーカスの書斎まで急いだ。
「おい! 絶対に人を呼ばせるなよ!」
一人の男がそう言い、モニカを追いかけに行かせた。
ルーカスはすぐに魔法を使おうとした。しかし、男に体をまさぐられ、恐怖で一気に力が抜けてしまった。
「はは、すげー綺麗な顔してるな」
「ああ。あの人の言った通りだ。男だからと残念に思っていたが、これならむしろ女よりも良いな」
男達はルーカスを嬲る様な目で視姦した。
またこの目だ。やだっ、気持ち悪い。声、出ない。魔力も言う事をきかない。ど、うして、来ないで、触らないで……!
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