転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 幼少期

sideリヴァイ お披露目会

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「でもリヴァイに限ってそれは無さそうだな」


「私達の可愛いルーカスを好きになる事はないと言いたいのか?」


「エドワード達のそれは弟だからだろ」


「そうだな。確かに綺麗だけど、可愛いとは違うだろ」


 確かに殿下は可愛いというよりも、綺麗という方がしっくりくる。


 リヴァイがそんな風に思っていると、エドワードとウィリアムはルーカスの可愛い所を話していく。


 それを聞いていると、ルーカスとソフィアがやって来て、エドワードとウィリアムに向かって挨拶をする。


「ソフィア・ラ・ルナ・アイザック・ナサニエルが第1皇子殿下並びに第2皇子殿下にご挨拶申し上げます」


「ルーカス・アルシアン・ラ・テオ・オスカー・ナサニエルが第1皇子殿下並びに第2皇子殿下にご挨拶申し上げます」


 先程の事が気になり、皆がルーカスに尋ねたそうにしている事に気づいたウィリアムが、ルーカスにみんなが聞きたいことがあるそうだと言う。


 しかし、初対面でそんなことを聞けるはずもなく、セドリックが名の呼び方を尋ねる。

 先にソフィアの呼び方がどんどんと決まっていく。ルーカスはどうか尋ねる。


「アルシアンの名に触れなければなんでも良い。その変わり、私の名前を呼んでくれ」

 確か、アルシアンは伴侶のみに呼ばせる名前だという話を聞いたな。
 だが、名前を呼んで欲しいとはどういう意味だ?


 リヴァイがそんな風に考えていると、メーリンが言う。


「では、私はルーちゃんとお呼びしても?」


 ……は?


 その発言を聞いた皆が呆気に取られる。


「ルーちゃんか。初めて呼ばれたな」


((そりゃあ、皇子に向かって誰も呼べねえわ))


「ではそろそろ、私は抜けさせてもらいます」


 ルーカスは、エドワード達に礼をして、違う所へと向かっていった。


「おい! 心臓が止まるかと思ったぞ!」


「本当ですわ! あんな呼び方をするなんて有り得ませんわ!」


「悪かったって!」


 メーリンは皆に責められた。


「それにしても、あんな呼び方を許すとはな」


「そうですね」


「まぁ、酉の刻まで時間はあるんだし、先に食事でもしようか」


「そうだね」


 セドリックがそう言うと、皆は食事を取りに行った。

 そして食事を食べ終わると、談笑を始めた。


「なんか殿下ってノアに似てないか?」


「どこがだ? シャーロット様にそっくりだろ」


「そうじゃなくて性格の事だよ」


「似ていない。殿下に失礼だ」


 リヴァイはそう言うが、皆はラルフの言葉に賛同する。それを聞いてエドワード、ウィリアム、ソフィアの3人は笑いを堪えた。


「ああ確かに。感情が表に出ない所とか、少し冷たい声とか」


「確かにそうね」




 そんな風に皆で話していると、向こう側がざわざわと騒がしくなった。皆がその方向に目を向けると、ルーカス達の声が聞こえてきた。


「そなた、今私にワインをかけようとしたのか?」


「けしてそのような事は! 足を躓いてしまって……」


「言い訳は要らん!!」


 パリンッ!!!

 ルーカスが声を荒らげて、夫人が持っていたグラスを右手で壁の方へ払うと、グラスが壁にあたり大きな音を上げて割れた。


「ひっ! 申し訳……」


「出ていけ!!」


「「申し訳ございません!」」


 そう言うと夫妻は広間から出ていく。騒ぎを聞いていたアーサーが声を上げて言う。


「何の騒ぎだルーカス! 君にワインはかかっていないのだろ? そんな事で騒ぎを起こすな!」


「なっ!? ......申し訳ございません。頭を冷やして参ります」


 ルーカスは不服そうに謝罪したあと広間を後にした。


「((コソッ…陛下のあのお怒り、やはりテオ殿下を嫌っているというのは本当だったのね」

「((コソッ…はっ! さっきまであんなに偉そうだったのにいい気味だ」



 今の殿下はいったい…… 。


「おい、エドワード。これはどういう事だ?」


「さあ、よく分からん」


「お前なぁ、分かってるんだろ。さっきのは何だ」


「なぜ陛下はあそこまでお怒りになられたんだ?」


 そんな風に疑問に思っていると、何人かの令嬢や子息達が、エドワード達のところに来て話しかけてきた為、話をできる状況ではなくなった。


「先程の騒ぎには驚きましたわ。まさかテオ殿下があんなお方だったなんて」


「そうよね。お姿が綺麗でもあんな性格だと化け物と言われても仕方がないわ」


 エドワードとウィリアムに媚びを売りに来た令嬢達が、ルーカスの話をしている。
 周りの皆は、エドワード達が怒ることを懸念していた。しかし、3人の口から出てきた言葉は、想像していたものとはかけ離れていた。


「ああ。確かにそうだな」


「あの子の話題を出さないでくれるかい?」


「あらウィルお兄様。確かあの子は私達の弟ですよ」


「そうだったね、ソフィ」


 他の皆は、3人の発言が気になったが、自分達にも話しかけてくる者達が多く、そちらの相手に手一杯となった。


 御三方がこのような振る舞いをする事には理由があるはずだ。しかし、その理由はなんだ?





 周りの人との話しを終えると、皆は休憩室に移動して少し会話をした。すると、外から声が聞こえてきた。


「ははは、おい、見ろよあれ。ルカ殿下達が使ってる部屋に入る気じゃないか?」


「ははは、本当だ。化け物の癖に殿下達と同じ部屋を使おうとしてるぞ」


 殿下がいらしたんだろう。これは入りづらいだろうな。


「遠のいていこうとしてない?」


 セドリックの言葉を聞いて、急いでアドルフが扉を開けて、ルーカスの腕を掴んで中に思い切り引っ張った。しかし、アドルフは勢い余って、ルーカスの腕を離してしまい、窓の方へ飛んでいってしまう。


 っ! 危ない!


 リヴァイはそれにいち早く気づき、ルーカスを受け止めた。

 ん? 軽すぎではないか? もし窓にぶつかっていたら、どんな怪我をされたか。


「何しているんだ、アドルフ! 殿下、お怪我は?」


「大丈夫だよ。ありがとう、ノア」


 良かった。……ん? 私の聞き間違えか?


 そう思いルーカスを見ると、やらかしたという様な表情をしていた。

 この話し方について、エドワードが説明することになり、ルーカスとソフィアは隣室で待機しに行った。

 ルーカスは、謀反を企てる貴族を調べる為、演技をしていること。それから前世の記憶があり、前世では虐げられていたことを聞いた。


 その後、ルーカスとソフィアが部屋に戻ってきて、今日接触した者達との会話を聞く。


「情報と嘘だという信憑性は?」


「音の魔法を使った」


 まさか、嘘を知らせる魔法をお使いになられたというのか?


「ルー、体は大丈夫なの!?」


「大丈夫だよ、姉さん。嘘をついた時に少し頭痛が生じる位だよ。そんなに痛くもなかった」


「それなら、良いのだけど」


 それから、キャンベル達の1年後の計画について話し終えると、ルーカスは半年後の賊の件は手を出さないで欲しいと言った。


「何故だ?」


「これは、僕が報告するか試す為のものだから死傷者を出す気は無いと思う」


 潜入する為とはいえ、自分の信頼を得る為に民を犠牲にされる方なのか?


 他の皆もそう思ったんだろう。ルーカスの言葉を聞き、表情が険しくなった。


「何故言い切れる?」


 エドワードが尋ねると、ルーカスはその理由を話す。


「1つは仲間の領内の1つの村だけで行う為。もう1つは、キャンベルの独断の為」


 確かに、独断で行動し、仲間の領内で死傷者を出せば、あの方とやらの信頼を失うだろう。しかし…… 。


「念の為に信頼出来、実力がある神殿関係者と冒険者パーティの上の者にだけ伝えておいて欲しい」


「何故冒険者まで必要なんだ?」


「動かし易いからだよ。冒険者は達成後からでも報酬が貰える。何より、皇帝の息がかかっているとは思われにくいから。
 大丈夫だよ兄さん。兄さん達の大切な人は、僕の守るべき人だから」


 成程、盗賊の討伐に冒険者が積極的に加わっても、後から報酬を貰えるため気に停められることもない。そこまでお考えになられていたのか。
 しかし、私は殿下にとって、兄の大切な者という位置付けなんだな。

 リヴァイは、ルーカスにとって自分が側近という位置付けにすら、いなかったに落ち込んだ。そして、そんな事に落ち込んでいる自分自身に心底驚いたのだった。


 ルーカスの話を聞き終えると、お茶会のざっくりとした予定を決めた。


「では、学園の長期休暇中である12の月の中旬に皇城の庭園にてお茶会を開く」


「ああ」


「じゃあ、そろそろご飯を食べようか」


「そうだな。腹減ったぜ」


「なら、僕はそろそろ行くね」


 ルーカスが食事の誘いを断って、立ち上がると、ウィリアムが言う。


「じゃあ、隣の部屋で待っていて。運び終わったら呼びに行くから」


「えっ、大丈夫だよ」


「ふーん、広間を出て行った後、戻っていないルークがいつご飯を食べたんだろうね」


 ウィリアムが笑顔で尋ねると、ルーカスは白状し、隣の部屋で待つ事になった。


 朝はいちご2つで、昼はゼリー1つだけとは。それはあんなに軽いわけだ。


 アドルフもそう思ったようで、もう少し食べさせた方がいいと言う。すると、ソフィアがルーカスは前世の事がトラウマで十分に食事を取れないと言った。


 ソフィアの顔が部屋に戻ってきた時から暗かった事に気付いていたグレースがソフィアに尋ねる。


「ソフィ様、隣室で殿下と何かございましたか?」


 黙り込んだソフィアにエドワードが話せと言うと、ソフィアは話し出した。

 ルーカスがリリアンへの誕生日の贈り物をソフィアに渡しておいて欲しいと言った。

 ソフィアは自分たちの為に無理をするルーカスが、いつか壊れてしまうのではないかと心配し、頼ることしか出来ない自分の無力さを嘆いていたようだ。


 それを知ったウィリアムとエドワードが言う。ルーカスは絶対に嫌な事は伝えてくれる。それに気づいてあげればいい。
 ルーカスは17歳だったらしい。だから今はまだ妹でいてもいいのではないかと。自分もルーカスの事を兄のように思っていると。


 それを聞いたソフィアは覚悟を決めたようで、必ずルーカスの姉になると強く誓った。


 しかし、その話を聞いていたリヴァイ達は、ルーカスが17で死んだことを知った。


 17年というのは一生を終えるには早すぎる。





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