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本編 幼少期
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しおりを挟む「本当に女性にしか見えないね」
「それは良かった。ねえ、外にいる間は僕の事ルーって呼んでくれないかな?」
「「分かった」」
少し話していると、馬車が止まった。
「まだ街には着いておりませんわ。何かあったのかしら」
「ああ、言い忘れていた。アドルフとセドリック。それからノアとティファニーも来ることになっている」
「ここで合流するんだよ」
「そうだったのですね」
「ウィル兄さん、言わなかったのわざとでしょ」
「さあ? どうだろうね」
ウィリアムがニコニコ笑顔でそう言う。
ああ、これわざとだね。
「皆様がいらっしゃったので出発致します」
御者がそう言うと、再び走り出した。後ろにはムハンマドの家紋が付いた1台の馬車が走っている。
そしてまた少し走ると、街に着いた。
「じゃあ降りようか」
ウィリアムがソフィアをエスコートして降りる。
もう1つの馬車からアドルフとセドリックが出てきた。その後、リヴァイがティファニーをエスコートして降りてくる。
するとエドワードが少し笑ってルーカスに手を差し出した。
「どうぞ、ルー」
「ふふ、ありがとうございます、エドワード様。楽しそうですね」
「ああ。あいつらがどんな顔をするのか楽しみだ」
話しながら馬車を下りると、案の定アドルフ達は驚いていた。
「は? おい、まさかその人がルーカスか?」
「いいえ。私の名はルー。今日はよろしくね、皆」
ルーカスがそう言うと、皆は彼をルーと呼ぶようになる。
「驚いたよ。ルーは本当に綺麗だね」
「ありがとう」
「今日は何を買うのかしら?」
「お茶会で出す、茶葉を買うんだよ」
そう言うと、ルーカス達はお店に入っていった。
「どれにしようかな」
「アッサムを買うんじゃないのか?」
「色々な種類があった方が飽きないでしょう?」
「アッサム以外のお茶は飲んだ事がないわ」
「私達もないよ。でも、ルーはあるみたいで美味しいらしいよ」
やっぱり飲みやすいものがいいよね。それだとダージリンが王道かな。スイーツと飲むなら、さっぱりしたものがいいね。
「ソフィア様、飲みやすいダージリンとさっぱりしたペパーミントティー、それからアップルミントティーにしましょう」
「ミントってあのさっぱりした香りのもの?」
「はい。甘いお菓子もあるので」
「なるほどね」
この三種類を買って、お店を出た。お店の外には人が沢山いて、皇族がいると少し噂になっていた。
ザワザワ
「((ヒソッ…見て! 皇子がいるわ! それに公爵家の方も。すごくかっこいいわね!」
「((ヒソッ…それにしても、ルカ殿下の隣にいる女の子は誰かしら? とても綺麗な方ね」
「((ヒソッ…クラーク様がいらっしゃるから、クラーク様の親戚のお方かしら。ルカ殿下にエスコートして頂けるなんて羨ましいわ」
「((ヒソッ…お2人共親しそうね。将来はあのお方とご結婚なさるのかしらね」
えっ、結婚って…… 。僕のせいで変な噂が流れて、兄さんの婚期が遅れてしまったらどうしよう。
「お兄様。この後はどうされますか?」
「午の刻の正刻まで時間がある。リリーに土産でも買いに行くか」
「彼等は暇になってしまうのでは?」
ソフィアがアドルフ達を指して言うと、セドリックが言う。
「ソフィ、私達は側近として来ているから気にしないでね」
「そうだったのですね。そういう事は先に言っておいてください、お兄様」
「悪い」
「あれ? どうしたんだい、ルー」
ルーカスは何か考え事をしていたようで少しぼーっとしていた。
どうしようかな。兄さんが僕をエスコートしていても不思議に思わない理由は…… 。そうだ、ティファニーに変わってもらおう。
「ティファニー、そろそろエドワード様のお隣、交代の時間じゃないかしら」
ティファニー達が少し驚いた顔をするが、ルーカスが変わって欲しいという、有無を言わさぬ圧をかける。
「え、ええ。そろそろだったかしら」
「早く交代しないと、お店に着いちゃうわよ?」
「そ、そうね」
そうして、ティファニーがエドワードにエスコートしてもらうことになった。
そしてルーカスはアドルフの事をお兄様と呼ぶようにした。
「((コソッ…お兄様、何だかあの2人、いい感じだね。2人ともエスコート位で緊張する人達では無いよね」
「((コソッ…小声で話すのならお兄様じゃなくて良いだろ。それに何故私がお前の親戚なんだ」
「((コソッ…それは、同じ金髪だからでしょ。それよりどうなの?」
「((ボソッ…安直だな」
その会話にセドリックが混ざる。
「((コソッ…学園で何かあったみたい。確か、ティファが足を怪我していたのに気付いて、エドが医務室まで運んで行ったらしいよ」
「((コソッ…その日から2人共ソワソワしてんだと」
「((コソッ…へぇー。なら、今日の事で兄さんの婚期が遅れたら、女装の事を知っているティファニーにお嫁に来てもらおう」
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