転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 幼少期

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 1の月の4の日。明日からエドワードが学園の寮に入る為、一緒にお昼ご飯を食べていた。


「夜も一緒に食べたらどうだ? リリーもルーカスに会いたそうにしているぞ」


「ううん、皆で食べて。リリーには悪いけど、僕はあの子に会えない」


「……分かった」


 ルーカスに対する、エブリンの暴行はずっと続いている。しかしルーカスは、武術の授業が始まり動き回る様になっても、怪我をしている様子を一切感じさせることなく、隠し通している。


「あの子がもう少し大きくなったら、必ず会いに行くようにするよ」


「分かったわ。リリーはよく、貴方が贈った贈り主の分からないお手紙を不思議そうに眺めているのよ」


「それに、犬のぬいぐるみもとても大事そうにしていたよ」


「気に入ってもらえて良かったよ。犬のぬいぐるみはあの子の色にしたからね」


 皆は、食事を終えて、少し談笑した。


「ルーカス、今日は授業が無いが、訓練場を借りて久しぶりに追いかけっこをしないか?」


「わぁ、それは楽しそうだね。兄さんと姉さんも一緒にしよう」


「良いわね」


「じゃあ、休憩したら訓練場に行こうか」




 ルーカス達4人は、少し休憩した後訓練場へ行った。
 訓練場には人がおらず、ルーカス達だけだった。


「誰からにする?」


「私からしよう」


「分かった」


 初めに追いかける役はエドワードになった。ルーカス達は逃げたが、エドワードの足にはかなわず、捕まってしまった。


「では、次は僕が追いかけるね」


「ええ」


 次はルーカスが追いかける役となり、3人を追いかけた。少しすると、ソフィアを捕まえ、少し粘られたがウィリアムも捕まえた。


「お兄様、頑張ってください」


「ルークも頑張れ」


 ルーカスは、長い事エドワードを追いかけていた。エドワードはなかなか捕まらなかったが、体力的に少ししんどくなってきていた。

 そこを狙って、ルーカスがスピードを上げ、エドワードを捕まえた。


「捕まえた」


「ルーカス、また体力が増えたな。武術の授業のおかげだな」


「本当? ありがとう」


「次はウィリアムが追いかけるのはどうだ?」


「分かりました」


 それから、何度か追いかける役を交代して、長い間追いかけっこをしていた。


「ふぅ、疲れたね」


「そうですね。そろそろ戻りましょうか」


「ああ」


 そうして4人は、それぞれの部屋へ戻り湯浴みをし、エドワード達は夕食をリリー達と食べた。


 次の日の巳の刻、ルーカスはエドワードの部屋へ向かった。


 コンコンコン

「エド兄さん」


「入れ」


 ガチャリ


「おはよう、兄さん。急にごめんね」


「ルーカス、どうした?」


 ルーカスは、モニカが部屋にやってくる辰の刻に、エドワードに先触れを出した。


「未の刻には出てしまうから、挨拶に来たんだよ」


「……そうか」


 今日の挨拶にはリリーも行く為、エドワードはルーカスは挨拶には来ないと思っていた。


「休日には戻るんだよね?」


「ああ」


「僕、頑張って筋力付けるから、兄さんが戻っている時に、手合わせして欲しいんだ。いつになるかは分からないけどね」


「分かった。私もルーカスに負けない様に鍛えておく。楽しみにしている」


「うん。今年中には初手合わせ出来るように頑張るね」


「無理はするな」


「うん」


「ルーカス。ウィリアムとソフィを頼む。君は私にとって、唯一頼れる兄の様な存在だ。だから、そばに居てやれない私の代わりに2人を頼みたい」


「心配しないで。兄さんも姉さんも守るよ。勿論リリーに何かあった時も必ず守る。
 それと、ひとつ訂正。そばに居なくとも、兄さんは頼りになる僕の兄さんだよ」


「ふっ。ああ、ありがとう」


 ルーカスが真剣な顔から笑顔に変わった。その顔を見たエドワードも嬉しそうに笑う。


「学校頑張って。戻ってくる日を楽しみに待っているよ」


「ああ。行ってくる」


 2人は笑顔で挨拶を交わし、ルーカスは部屋を出ていった。




 そして未の刻。アーサー達が見送りに来ていた。


「やはり、あの子は来なかったか」


「そうですわね」


「父様、母様。ルーカスは朝に挨拶に来てくれました。今年中に手合わせをしようと。その為に筋力を付けるから頑張ると言っておりました」


「そうだったのか。ルーカスは強いと思うぞ。エドワードも、負けぬ様に努力せねばならんな」


「はい。精進致します」


「ああ。頑張れ」


「エド、休日に沢山話を聞かせてね。毎週よ」


「長期休みにお話致します」


 エドワードが冗談を言い、皆が笑う。


「「行ってらっしゃませ」」


「ああ。君達が学園に通う様になれば、休み明けは一緒に登校しよう」


「分かりました」


「ふふふ、ウィルお兄様は分かりますが、私達は気が早いですよお兄様」


「それもそうだな。ではそろそろ行ってきます」


「ほら、リリーお兄様に行ってらっしゃいは?」


「いーしゃい!」


「ああ。行ってくる」


 エドワードは笑顔で答え、馬車に乗り学園へと向かった。







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