転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 幼少期

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 ルーカスが暫く隣室で待っていると、扉を叩く音が聞こえてきた。


「殿下、リヴァイです。食事の用意が出来ました」


 ルーカスが扉を開けると、リヴァイがいつもの無表情で立っていた。
 しかしルーカスには、リヴァイの表情が少し曇っているように感じる。


「ノア、中に入ってくれるかい? 少し話したいことがある」


「承知致しました」


 ルーカスがソファに座ったが、リヴァイは座ろうとせずに立ったままでいる。


「そこに座って?」


 ルーカスが向かい側のソファを指して言ったが、リヴァイは「問題ありません」と言い断る。


「話しづらいでしょ?」


「いえ、私は側近ですので座ることは出来ません」


「そう、ならもう少し近付いてくれるかな」


 リヴァイは少し躊躇ったあと、ルーカスが座っている2人がけのソファに近付く。リヴァイがもう一歩近付こうとした時、ルーカスがリヴァイの腕を掴んで自分の方へ引っ張った。

 リヴァイは体勢を崩し、ソファの空いている所に座り込む。一瞬何が起きたのか分からず、リヴァイは混乱するが直ぐに状況を整理し、立ち上がろうとする。

 それに気付いたルーカスは、顔を少しリヴァイの耳に近づけ、窘めるように言う。


「向かいが嫌ならこちらに座っていなさい。君は確かに僕の側近だけど、今はまだ友人だと思っている。それとも僕では、君の友人にはなり得ないかい?」


 リヴァイは、どうすればいいのか分からず、結局「いいえ」とだけ答えた。


「それなら良かった。では、話をしよう。隣で何かあったのかい?」


「……何故でしょう?」


 リヴァイは隣室であった事を答えるべきか迷った。


「君の顔が少し曇っているからだよ。もしかして、姉さんが暗い顔をしていたからかな?」


 リヴァイは、自分が無表情で相手が感情が読み取れない事は理解していた。その為、自分の感情がいとも容易く見抜かれた事に驚いた。

 リヴァイはルーカスが確証を持ってソフィアの話だと言ったため、隠せないと思い、向こうであったことを話す。


「そう、姉さんには悪い事をしてしまったね」


「ですが、ルカ殿下とリオ殿下がしっかりお話されていたので余り気にし過ぎないで下さい」


「うん。ありがとう。ならノアはどうして暗い顔をしているのかな?」


 リヴァイは前世の事を聞いた時、エドワードが最後の事は詳しく分からないと言っていた事が少し気になっていた。
 そして、ルーカスは17歳までしか生きられなかった事を聞いて、余計に17歳と最後の事が気になっている。

 しかし、そんな事を尋ねて良いわけが無いと思い、口を噤んだ。


「言いづらいこと? 僕の事だよね?」


「……はい」


「君も、余り気にし過ぎないで。僕は、今世が楽しい。それじゃ、だめかな?」


「……いいえ」


 リヴァイは駄目だと言えなかった。


 ルーカスは、空気を明るくしようと声の高さを少し上げて言う。


「今世の子供達は大人びているね。特に君は10歳になったばかりとは思えないよ」


「氷の魔法の家系ですので」


「なるほど。でも、皆は君の事を無表情だって言うけど、僕は君は表情が豊かだと思うよ。まぁやっぱり10歳には見えないけどね」


「そう、でしょうか。初めて言われました。殿下こそ4歳には見えません」


「そりゃ僕は17歳だからね」


 ルーカスがそう言うと、リヴァイの顔がまた少し暗くなった。


(あぁ、この事か)


「気にする必要無いよ。17年って案外長いんだから」


 リヴァイは気にせずにはいられなかったが、無表情を作り返事をする。


「そうなんですね」


「…… 。そうだよ。だからそんな暗い顔しないで。君が暗い顔していると、僕の顔は真っ黒になってしまうよ。困るでしょう?」


「はい。それは困りますね」


 リヴァイの顔はルーカスから見ても、無表情にかわる。寧ろ、少し笑っているように見える。


「よし、じゃあそろそろ行こうか。待たせ過ぎたら怒られてしまうからね」


「はい」


 そう言い、2人はエドワード達の部屋へ戻った。


「おせーよ! 待ちくたびれたぞ!」


「待っていてくれたの? 先に食べていると思ってたよ」


「ルー、一緒に食べる約束でしょう?」


「そうだよ。私達がルークをほおって先に食べることは無いよ」


「ルーカス、早く座れ」


「うん。ありがとう」


 ルーカスは嬉し泣きのような笑顔でお礼を言う。


「ノアも早くおいで。僕の隣空いてるでしょ?」


「そうですね」


 ルーカスが少し悪戯っぽくそう言うと、リヴァイは少し微笑み今度は躊躇わずにルーカスの隣に座った。


(リヴァイが笑って、殿下の隣に座った!? いったい何があったんだ!?)


 皆は今日何度目かの驚きに、頭がパンクしそうになった。









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