転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

文字の大きさ
上 下
61 / 410
本編 幼少期

55

しおりを挟む


 ルミナスが消えると、先程と同じように、紙に、ルーカス・アルシアン・ラ・テオ・オスカー・ナサニエルと記されている。


「何だか沢山あり過ぎて驚いたよ」


「そうだな。取り敢えず、ルーカスおめでとう」


「おめでとう御座います。テオ様」


「ありがとう。マシューよく静かに見ていられたね」


「いえ、驚き過ぎて、そもそも声が出ませんでした」


 イライジャが少し恥ずかしそうに言う。


「ふふふ、そうだよね」


「マシュー」


「はい。陛下」


「ルミナス様が出てこられた事は絶対に口外するな。先程の話も全てだ」


「イライジャ・マシュー・アイザック、皇帝陛下そしてルミナス様に誓って、今日見たものは一切口外致しません」


「頼んだ。それから、前世という言葉が出てきたが、察せ」


「承知致しました」


 イライジャは、ルーカスの前世について、何があったのかは大体察していた。そして、アーサーの言葉がそれを確信させた。


「まさか、ルミナス様が出てきて、2つも名前を頂けるとはね」


「本当だね」


「ルーカス、私達は君の事について、全て共有している。この件、彼らに伝えても構わないか?」


「構わないよ。その人達はとても信頼できるからね」


 ルーカスが笑顔で答えると、アーサーも微笑み「ああ」と返した。




 その後、神殿を出て馬車を走らせ、帝都の街に着いた。


「行くぞ」


「最初はどちらに行かれますか?」


「先に食事をしてからルーカスの買い物に行く。その後は街を色々見て回ろう」


「分かった」


 ルーカス達は、大きいレストランへ入り、最上階の個室へ案内され、椅子に座る。


「ふぅ、外は暑いわね」


「そうですね。でも、お父様とルーは平気そうですね」


「ああ。炎か氷の魔法が使える者は、温度に対して少し鈍いからな」


「そうなのですね。だからルーは、真夏でもローブを来ていられるのね」


「確かにそうだね気にした事は無かったよ」


(ルーカスは相手の事には鋭いのに、自分の事になると鈍いな……)


 4人が話していると、扉を叩く音が響き、店員が料理を運んでくる。
 何度も、部屋に入ってこられるのは面倒なので、コース料理ではなく、アラカルトにした。

 全ての料理が運び終わり、店員が部屋を出た。ルーカスがローブを脱ぐ。アーサーが料理に口を付けると、続いて3人も食べ始める。




「美味しかったわね」


「はい」


「ルーカスも、食べられる量が少し増えたんじゃないか?」


 アーサーが少し嬉しそうに言う。


「確かに、そうだね。これで筋肉も少し付いてくれるか、な……」


 ルーカスは話終える前に、なにかに気づき急いでローブを纏う。

 それを不思議に思った3人がルーカスに尋ねようとした時、バン! と大きい音を鳴らして扉が開いた。


「いや~、陛下、ようこそおいで頂きました~」


 3人が扉の方を見ると、派手に着飾り装飾品を至る所に着けている太った男がゴマをすりながら、個室に入ってくる。扉の向こうには、数人の店員達も立っている。

 おそらくこの男は、レストランのオーナーだろう。


「何故入ってきた」


「私はこのレストランのオーナーです! 陛下が起こし致されたと聞き、急ぎご挨拶に来た次第でございます!」


 男は意気揚揚とアーサーに言う。

 アーサー達は、客のいる個室に勝手に入って来たのに、一切悪びれる事無く話す男に軽蔑の目を向ける。

 しかし男は、それに気付くことなく、べらべらと話し出した。


「私の店では、材料は全て高価で品質の良い物しか扱っておりません! その為、他の店よりも値段が高いのです」


 男は聞いてもいない店の自慢を始める。


「それなのに、こんなに素晴らしいものを"これ"にも食べさせて上げるだなんて、陛下はなんと心のお優しいお方なのでしょう!!」


 男はルーカスをこれと呼び、指さしてさらに続ける。


「こんな化け物にまで、慈悲を与えられる陛下はなんて素晴らしいお方なのでしょうか!!」


 男は満悦して、アーサー達の方に目を向ける。

 アーサー達は、計画がある為下手に怒りを表に出せず、なんとか内に留めている。それに気付かず、男はさらにルーカスに罵倒する。


「この化け物にうちの料理は相応しくありません! 穢らわしい化け物が食べるには価値が高過ぎます! しかし、陛下は価値に見合わなくても、わざわざ化け物の為にお支払いになるなど、本当に懐が広いお方です」


 アーサー達は、この男の言葉に耐えきれず、表情に少しの怒りを表した。











しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

処理中です...