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本編 幼少期
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しおりを挟むルミナスが消えると、先程と同じように、紙に、ルーカス・アルシアン・ラ・テオ・オスカー・ナサニエルと記されている。
「何だか沢山あり過ぎて驚いたよ」
「そうだな。取り敢えず、ルーカスおめでとう」
「おめでとう御座います。テオ様」
「ありがとう。マシューよく静かに見ていられたね」
「いえ、驚き過ぎて、そもそも声が出ませんでした」
イライジャが少し恥ずかしそうに言う。
「ふふふ、そうだよね」
「マシュー」
「はい。陛下」
「ルミナス様が出てこられた事は絶対に口外するな。先程の話も全てだ」
「イライジャ・マシュー・アイザック、皇帝陛下そしてルミナス様に誓って、今日見たものは一切口外致しません」
「頼んだ。それから、前世という言葉が出てきたが、察せ」
「承知致しました」
イライジャは、ルーカスの前世について、何があったのかは大体察していた。そして、アーサーの言葉がそれを確信させた。
「まさか、ルミナス様が出てきて、2つも名前を頂けるとはね」
「本当だね」
「ルーカス、私達は君の事について、全て共有している。この件、彼らに伝えても構わないか?」
「構わないよ。その人達はとても信頼できるからね」
ルーカスが笑顔で答えると、アーサーも微笑み「ああ」と返した。
その後、神殿を出て馬車を走らせ、帝都の街に着いた。
「行くぞ」
「最初はどちらに行かれますか?」
「先に食事をしてからルーカスの買い物に行く。その後は街を色々見て回ろう」
「分かった」
ルーカス達は、大きいレストランへ入り、最上階の個室へ案内され、椅子に座る。
「ふぅ、外は暑いわね」
「そうですね。でも、お父様とルーは平気そうですね」
「ああ。炎か氷の魔法が使える者は、温度に対して少し鈍いからな」
「そうなのですね。だからルーは、真夏でもローブを来ていられるのね」
「確かにそうだね気にした事は無かったよ」
(ルーカスは相手の事には鋭いのに、自分の事になると鈍いな……)
4人が話していると、扉を叩く音が響き、店員が料理を運んでくる。
何度も、部屋に入ってこられるのは面倒なので、コース料理ではなく、アラカルトにした。
全ての料理が運び終わり、店員が部屋を出た。ルーカスがローブを脱ぐ。アーサーが料理に口を付けると、続いて3人も食べ始める。
「美味しかったわね」
「はい」
「ルーカスも、食べられる量が少し増えたんじゃないか?」
アーサーが少し嬉しそうに言う。
「確かに、そうだね。これで筋肉も少し付いてくれるか、な……」
ルーカスは話終える前に、なにかに気づき急いでローブを纏う。
それを不思議に思った3人がルーカスに尋ねようとした時、バン! と大きい音を鳴らして扉が開いた。
「いや~、陛下、ようこそおいで頂きました~」
3人が扉の方を見ると、派手に着飾り装飾品を至る所に着けている太った男がゴマをすりながら、個室に入ってくる。扉の向こうには、数人の店員達も立っている。
おそらくこの男は、レストランのオーナーだろう。
「何故入ってきた」
「私はこのレストランのオーナーです! 陛下が起こし致されたと聞き、急ぎご挨拶に来た次第でございます!」
男は意気揚揚とアーサーに言う。
アーサー達は、客のいる個室に勝手に入って来たのに、一切悪びれる事無く話す男に軽蔑の目を向ける。
しかし男は、それに気付くことなく、べらべらと話し出した。
「私の店では、材料は全て高価で品質の良い物しか扱っておりません! その為、他の店よりも値段が高いのです」
男は聞いてもいない店の自慢を始める。
「それなのに、こんなに素晴らしいものを"これ"にも食べさせて上げるだなんて、陛下はなんと心のお優しいお方なのでしょう!!」
男はルーカスをこれと呼び、指さしてさらに続ける。
「こんな化け物にまで、慈悲を与えられる陛下はなんて素晴らしいお方なのでしょうか!!」
男は満悦して、アーサー達の方に目を向ける。
アーサー達は、計画がある為下手に怒りを表に出せず、なんとか内に留めている。それに気付かず、男はさらにルーカスに罵倒する。
「この化け物にうちの料理は相応しくありません! 穢らわしい化け物が食べるには価値が高過ぎます! しかし、陛下は価値に見合わなくても、わざわざ化け物の為にお支払いになるなど、本当に懐が広いお方です」
アーサー達は、この男の言葉に耐えきれず、表情に少しの怒りを表した。
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