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本編 幼少期
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しおりを挟む今日から、礼儀作法の授業が始まる。
あれから、いつも1つのリボンで髪の上半分を結い、もうひとつを左腕に巻いている。
皇子・皇女はそれぞれ自室と繋がっている書斎が隣にあり、そこで授業を受ける。そのため、ルーカスは授業の時間になると、隣室に入った。
(書斎には初めて入ったな。ここもすごく広い)
書斎は縦横20mの部屋に、背の高い空の本棚が、自室に繋がる扉がある方と反対側の壁に、隙間無く立っている。
そして、部屋の奥の窓の近くに机と椅子があり、部屋の中心に少し大きめの低い机とソファがある。
部屋を一通り見ていると、扉を叩く音が響いた。
セバスだ。
「入っていいよ」
ガチャリ
「失礼致します」
「今日からよろしくね」
「はい。よろしくお願い致します」
軽く挨拶を済ませると、2人ともソフィアに向かい合って座った。
今日の授業の流れを説明してくれた。
まずは、挨拶の仕方。次に、話し方。そして、テーブルマナー。最後に文字の読み書き。
「ではまず、ルーカス殿下が主催の社交会での、殿下に対しての自己紹介を致します」
「分かった」
そう言うと、2人とも立ち上がってドアの近くに立った。
「お初にお目にかかります。セバス・ナル・シルヴェスターが第3王子殿下にご挨拶申し上げます」
左手を腹部に当て、右手を後ろで握り、右足を後ろに引いてお辞儀をした。
少しするとセバスが顔を上げた。
「殿下が主催のため、男爵家から順に初めて会う方々から挨拶されます。殿下からのご返事を頂くことで顔を上げることが可能になります」
「分かった」
「陛下とエドワード殿下は、『ああ』と、ウィリアム殿下は、『うん』や『よろしく』とご返事なさいますね」
「なるほど。決めておいた方が楽かもね」
「そうですね。 では次は殿下が陛下とお兄様方への挨拶の仕方を説明致します」
「うん」
セバスから挨拶の言葉とお辞儀の仕方を教わった。
「ルーカス・ラ・オスカー・ナサニエルが皇帝陛下へご挨拶申し上げます」
「完璧でございますね。こちらは習っておいででしたか?」
「うん、お辞儀は習っているよ」
「左様でしたか。 殿下は皇族なので、頭を下げていいのは、陛下、エドワード殿下、ウィリアム殿下、ソフィア殿下のみです。他の方には頭を下げてはなりません。アリス様にも下げてはいけません」
「母上もだめなの?」
「はい。アリス様は嫁入りなさっておりますが、公爵家のお方なので殿下が頭をお下げするのはよろしくありません。
敬語はお使いになられても構いません。しかし、ご自身のお母様以外には使わない方が多いです。
多くは、ご自身がとても尊敬しているお方、もしくは実の母のように思われている方に対してお使いになられます。
それ以外の方にはお使いになられない方がよろしいかと」
「そうなんだね。分かった」
それから、僕よりも位が低い人に対しての挨拶の仕方を教わり、少し休憩をした。
休憩を終えると、セバスが話を切り出した。
「殿下、少しよろしいですか?」
「うん、いいよ」
「レノから殿下の計画をお聞き致しました。本当に実行なされるのですか?」
レノはモニカの仮名。
「うん。するよ。父様から何も言われていないから、黙ってくれているんだよね。ごめんね、多分叱られると思う」
「はい。覚悟は出来ております」
「教わったはずの事をしていなかったら、君にも難癖を付けてくる人だっているかもしれないからね。何も知らないのに、避難されるのは可哀想でしょ?
だから君にも教えようと思った。
まぁ、1番の理由は君に協力してもらおうと思ったからなんだけどね。黙っていてくれてるって事は協力してくれるって事でしょ?」
「……私の手には負えず、傍観しようとしているだけかもしれませんよ?」
「それは無いかな。君は物事にしっかりと白か黒か付ける。その上でとことん追求する人だと思っている。だから父様に言うか言わないかで賭けてみたんだ。
そして、一緒に怒られる方を選んでくれた」
「買い被りすぎです」
「そうかな? 父様や兄さん達の礼儀作法を教えているから、僕が偉そうにしていても、君の方には被害が少なく済むんじゃないかと思っているよ」
「殿下は実際偉いお方なので、偉そうにしていても宜しいのですよ」
「自分が嫌っている相手は何をしていても不快に思うものだよ」
「そうですね」
「僕はそんな人間よりも、翼があっても、角があっても、僕自身を見てくれて、それでも好きだと言ってくれる。そんな人達の手助けがしたい。
これは僕の為だよ。僕がそうしたいと思っている。こんな風に思ったのは初めてなんだ。それが、凄く嬉しい。生きている事を実感出来る。
だから、僕に教えて欲しい。お願い」
「お任せ下さい。このセバス、殿下が生を実感できるのならば、陛下にお叱りを受ける事などなんともございません」
「ふふ、ありがとう」
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