転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 幼少期

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「……んん、とう様?」


 僕が目を覚ますとベビーベッドの近くの椅子で父様が眠っていた。


(昨日は確か、母様が亡くなったと聞いて急に心が沈んでしまった。そして僕の周りを氷が囲っていた。あれは魔法、かな?)


「んぁー、起きたかルーカス。体調はどうだ?」


「だいじょうぶだよ。昨日は、ごめんね……」


「謝らなくていい、急に言った私が悪かったんだ」


「ううん、かあ様が長くないのは知ってたのに、心のじゅんびが出来てなかったぼくが悪いよ。……もう、かあ様には会えないんだね」


「……ああ」


「でもね、かあ様はきっとぼく達のことをお空から見てくれていると思うんだ」


「……ああ、シャルはきっと見ていてくれる」


 父様にはああ言ったけど寂しい。それに、やっぱり僕を産まなければ、母様が死ぬことは無かったんじゃないかな。


「……ルーカス、シャルの生家があるオスカー領に療養に行ってこないか? オスカー家は音の魔法の家系で心を癒す魔法を使える。ルーカスの前世のことも、伝えてある……どうだろうか?」


 母様の生家という事は母様の父さんや母さんがいるはず。母様を殺した僕を受け入れてはくれないだろう。でも、父様は僕のためを思って言ってくれたんだ。それに、父様が前世のことを伝えているという事は信頼できる人なんだろう。

 (……大丈夫、嫌われるのは慣れている、前世の生活に戻ったと思えば良い)


「……ぼく、行こうと思う」


「っ! ……ああ、お父上達とは連絡が着いている1週間後に迎えに来てくれるようだ」


 アーサーはルーカスが笑顔の前に見せた、一瞬の虚ろな目を見逃すことは無かった。

(やはり、お父上達と会うのは不安なのだろう。しかし、会わなければ、私が言うだけでは、この子の不安は拭えないだろう。すまない、ルーカス)


 それからの一週間は、モニカが療養に行く準備をした。オスカー家にはモニカも一緒に来てくれるそうだ。モニカにも僕の前世の事を伝えたみたい。心強いな。




「ルーカス、お父上が到着したようだ。挨拶に行こう。ルーカスは私のそばにいてよろしくと言うだけで良いからな。敬語は使ってはいけないよ」


「うん」




 コンコンコン、ガチャリ


「久しぶりだ、リク。此度のシャーロットの件、治してやれずすまなく思う」


「いいえ、陛下。娘が体調を崩したのは、あの子が無理をしたからです。誰も悪くはありません」


「そう言ってくれて助かる。シャルの子を紹介しよう。ルーカス挨拶できるか?」


 僕は父様の服をぎゅっと掴み、頷いた。


「るーかすだよ。……よろしくね」


「っ! お初にお目にかかります。私の名はグレイ・リク・オスカーでございます。どうぞよろしくお願い致します。 驚きました、陛下、殿下はシャーロットに似て美しいお方ですね。やはり、噂など単なる出任せにございます」


「ああ、まったくだ。噂好きな貴族達には反吐が出る」


「殿下のお話は、陛下からお聞き致しました。貴族の中には貴方様を悪く言う愚かな輩も沢山いるのは事実です。しかし、陛下のように殿下を心から愛している方もおられます。私もその内の一人です。差し出がましい事とは存じ上げておりますが、少しずつでも信頼出来る者を、気の許せる者を増やしていかれては頂けませんか?」


 ルーカスにはグレイの言葉が嘘偽りのないものだと分かった。しかし、なぜ娘を殺した相手にそんなに優しくできるの?


「……きみの言うことは、たしかだと思うよ。でも、自分のむすめをころした相手にどうして優しくするの? どうして許すことが出来るの? ぼくには分からない」


「ルーカス、許すも何も、私達は君がシャルを殺したとは思っていない」


「陛下の言う通りです。許す必要などないのです」


 ああ、分かっている。彼等は優しいから、心から僕のせいでは無いと思ってくれる。僕は彼等に八つ当たりをしたんだ。


「ちがう、ごめんね。ぼくが、自分をゆるせないだけだよ。だって、かあ様がなくなって、かあ様をころした化け物のぼくが生きている」


「なっ! ルーカス、そん「陛下……」


 なにかを言おうとしたアーサーをグレイが止めた。






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