転生皇子の新生活 高等部編

𝐍 𝐢 𝐚🐾

文字の大きさ
上 下
104 / 105
高等部編

44

しおりを挟む


 ペレス家の別荘に来てから数日がたった。ルーカスとリヴァイはレイアと部屋で遊んでいる。


「レイア、次は何をしようか?」


「おそといく!」


 ルーカスがレイアに聞くと、レイアは元気にそう答えた。


「では、テラスに行ってお茶でもしようか。使用人に伝えてくるよ」


「殿下、私が……」


「いいよ。リヴはレイアを見ていて」


 自身が伝えに行くと言おうとするリヴァイに、ルーカスはレイアをお願いすると使用人を呼びテラスにティータイムの準備をするように告げた。


「第3皇子殿下、若旦那様よりお手隙の際に執務室へお越し頂きたいとの言伝がございます」


「分かった。今から行くからペレス子息に先触れを出しなさい」


「畏まりました」


 ルーカスの命令を受け、使用人は直ぐにペレス子息の元へと向かった。


「リヴ、レイアを連れて先にテラスでお茶をしてて」


「承知致しました。レイア、行くぞ」


 レイアを抱えリヴァイがテラスに向かうと、ルーカスもペレス子息の元へと向かった。




「お呼び出ししてしまい申し訳ございません」


「構わないよ。用件は何かな」


 ルーカスが子息の執務室へ付くと、子息は謝罪を述べたあと使用人を下げさせた。


「父から書簡が届きまして、第3皇子殿下にお伝えすることがございます」


 ペレス男爵からの手紙には、ムハンマドの調査に関する進捗が書かれていたらしい。


「ムハンマドの直系の方には怪しい部分は、現状見当たらないとの事です。ノア様は護衛の為にこちらに来ているため調査はお戻りになられてから行います」


「彼にはそう伝えておくよ」


「そしてここからが本題なのですが、調査員の中に、怪しい動きをする者が居るようです。目立った行為がなく、確証を持てない為少し泳がせてみます。その者の名は──……」




 子息の執務室を出ると、ルーカスはテラスに向かった。


「とうさま!」


「お待たせ。先に食べていてよかったのに」


 ルーカスに気付いたレイアが嬉しそうに名を呼ぶと、ルーカスは2人が自分を待っていたことに気がついた。


「用事はもうよろしいのですか?」


「うん。ペレス男爵からの報告だったよ。分家の者が君の調査を早くしろとうるさいらしい」


 リヴァイと話していると、使用人がすぐにルーカスの前にも紅茶と茶菓子を並べた。


「では食べようか。レイアも食べていいよ」


「わーい!」


 ルーカスの言葉にレイアは嬉しそうに焼き菓子を頬張った。


「ふふふ、頬にクリームがついているよ」


  その様子を微笑ましそうに眺めながらルーカスはレイアの頬をナプキンで拭う。


「……リヴ、当分、モデスト伯爵夫妻と関係の深い者にレイアを近付けさせないで」


「っ、畏まりました」


 ルーカスが真剣な表情となりそう告げると、リヴァイも酷く真剣に返答する。


「モデスト伯爵夫妻が怪しいのですか?」


「確証はないけれど、警戒する必要は十分にあるそうだよ。アルフィー達が探っているようだから安心して」


「……お祖父様方が」


 ルーカスはリヴァイに気負う必要はないと伝える為にアルフィーの名を出したが、リヴァイの表情は何故かさらにくもってしまった。


 その表情に気付くとルーカスは先程よりもいっそう真剣な表情を浮かべてリヴァイに告げる。


「……君が彼らに任せ切りにしているのではない。僕が、君達を使っているんだ。だから君は命令されただけで、祖父達に申し訳なさを感じる必要は無い」


「差し出がましいことを思い、申し訳ございませんでした」


 リヴァイのその返答に、ルーカスは少しだけ目を見張った。


 そういうことではないのに……。


「僕は励ましのつもりで言ったのだけど?」


「あ、それは、申し訳ございません……」


 ルーカスが拗ねたように言うとリヴァイはハッとし眉を下げた。


 また暗い顔してる。


 ルーカスは暗い顔のリヴァイをどう元気づけようかと思案する。すると何かを思いついたようで、リヴァイの名を呼ぶと、彼の頬に口付けをした。


「っ、殿下……!?」


「元気になったかい?」


 リヴァイは酷く驚いた様子で目を見開いた。


「ちーうえ、ねんね?」


 その光景を見ていたレイアは、いつものお休みの挨拶だと思いそう尋ねた。


「ふふ、これは大好きだよと言う意味だよ」


「! れいあする! とうさま、ちーうえ、だいすき!」


 ルーカスの言葉を聞くと、興奮した様子でレイアは子供用の椅子から降りようと身をよじる。
 そんなレイアをルーカスが抱き上げると、レイアは頬に小さな唇を押し付けた。


「ありがとう、レイア。僕も大好きだよ」


 そう言いルーカスもレイアの頬にキスをする。するとレイアは嬉しそうに笑い、今度はリヴァイの方へ振り向き期待の眼差しを向ける。


「リヴ、レイアからのキスを貰ってあげて?」


「……はい」


 リヴァイは少し照れながら、体を屈めてレイアに顔を近づける。そしてレイアがキスをするとリヴァイ返した。


「ちーうえ、レイア、だいすき?」


「ああ。愛している」


 レイアの問いかけにそう答えると、リヴァイはルーカスに顔を近づけた。


 え……?


「……殿下、愛しております」


「れいあ、くちない!」


 レイアが怒ったようにそう言うと、リヴァイはレイアに言う。


「口は父上と父様だけだ」


「ぶー!」


 ルーカスは自身の唇に触れながら悔しそうにリヴァイを睨んだのだった。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ
BL
外の世界に憧れを抱いていた少年は、少女漫画の世界に転生しました。 当て馬キャラに転生したけど、モブとして普通に暮らしていたが突然悪役である魔騎士の刺青が腕に浮かび上がった。 それでも特に刺青があるだけでモブなのは変わらなかった。 漫画では優男であった聖騎士が魔騎士に豹変するまでは… 出会う筈がなかった二人が出会い、聖騎士はヤンデレと化す。 メインヒーローの筈の聖騎士に執着されています。 最上級魔導士ヤンデレ溺愛聖騎士×当て馬悪役だけどモブだと信じて疑わない最下層魔導士

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

処理中です...