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高等部編
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しおりを挟むペレス家の別荘に来てから数日がたった。ルーカスとリヴァイはレイアと部屋で遊んでいる。
「レイア、次は何をしようか?」
「おそといく!」
ルーカスがレイアに聞くと、レイアは元気にそう答えた。
「では、テラスに行ってお茶でもしようか。使用人に伝えてくるよ」
「殿下、私が……」
「いいよ。リヴはレイアを見ていて」
自身が伝えに行くと言おうとするリヴァイに、ルーカスはレイアをお願いすると使用人を呼びテラスにティータイムの準備をするように告げた。
「第3皇子殿下、若旦那様よりお手隙の際に執務室へお越し頂きたいとの言伝がございます」
「分かった。今から行くからペレス子息に先触れを出しなさい」
「畏まりました」
ルーカスの命令を受け、使用人は直ぐにペレス子息の元へと向かった。
「リヴ、レイアを連れて先にテラスでお茶をしてて」
「承知致しました。レイア、行くぞ」
レイアを抱えリヴァイがテラスに向かうと、ルーカスもペレス子息の元へと向かった。
「お呼び出ししてしまい申し訳ございません」
「構わないよ。用件は何かな」
ルーカスが子息の執務室へ付くと、子息は謝罪を述べたあと使用人を下げさせた。
「父から書簡が届きまして、第3皇子殿下にお伝えすることがございます」
ペレス男爵からの手紙には、ムハンマドの調査に関する進捗が書かれていたらしい。
「ムハンマドの直系の方には怪しい部分は、現状見当たらないとの事です。ノア様は護衛の為にこちらに来ているため調査はお戻りになられてから行います」
「彼にはそう伝えておくよ」
「そしてここからが本題なのですが、調査員の中に、怪しい動きをする者が居るようです。目立った行為がなく、確証を持てない為少し泳がせてみます。その者の名は──……」
子息の執務室を出ると、ルーカスはテラスに向かった。
「とうさま!」
「お待たせ。先に食べていてよかったのに」
ルーカスに気付いたレイアが嬉しそうに名を呼ぶと、ルーカスは2人が自分を待っていたことに気がついた。
「用事はもうよろしいのですか?」
「うん。ペレス男爵からの報告だったよ。分家の者が君の調査を早くしろとうるさいらしい」
リヴァイと話していると、使用人がすぐにルーカスの前にも紅茶と茶菓子を並べた。
「では食べようか。レイアも食べていいよ」
「わーい!」
ルーカスの言葉にレイアは嬉しそうに焼き菓子を頬張った。
「ふふふ、頬にクリームがついているよ」
その様子を微笑ましそうに眺めながらルーカスはレイアの頬をナプキンで拭う。
「……リヴ、当分、モデスト伯爵夫妻と関係の深い者にレイアを近付けさせないで」
「っ、畏まりました」
ルーカスが真剣な表情となりそう告げると、リヴァイも酷く真剣に返答する。
「モデスト伯爵夫妻が怪しいのですか?」
「確証はないけれど、警戒する必要は十分にあるそうだよ。アルフィー達が探っているようだから安心して」
「……お祖父様方が」
ルーカスはリヴァイに気負う必要はないと伝える為にアルフィーの名を出したが、リヴァイの表情は何故かさらにくもってしまった。
その表情に気付くとルーカスは先程よりもいっそう真剣な表情を浮かべてリヴァイに告げる。
「……君が彼らに任せ切りにしているのではない。僕が、君達を使っているんだ。だから君は命令されただけで、祖父達に申し訳なさを感じる必要は無い」
「差し出がましいことを思い、申し訳ございませんでした」
リヴァイのその返答に、ルーカスは少しだけ目を見張った。
そういうことではないのに……。
「僕は励ましのつもりで言ったのだけど?」
「あ、それは、申し訳ございません……」
ルーカスが拗ねたように言うとリヴァイはハッとし眉を下げた。
また暗い顔してる。
ルーカスは暗い顔のリヴァイをどう元気づけようかと思案する。すると何かを思いついたようで、リヴァイの名を呼ぶと、彼の頬に口付けをした。
「っ、殿下……!?」
「元気になったかい?」
リヴァイは酷く驚いた様子で目を見開いた。
「ちーうえ、ねんね?」
その光景を見ていたレイアは、いつものお休みの挨拶だと思いそう尋ねた。
「ふふ、これは大好きだよと言う意味だよ」
「! れいあする! とうさま、ちーうえ、だいすき!」
ルーカスの言葉を聞くと、興奮した様子でレイアは子供用の椅子から降りようと身をよじる。
そんなレイアをルーカスが抱き上げると、レイアは頬に小さな唇を押し付けた。
「ありがとう、レイア。僕も大好きだよ」
そう言いルーカスもレイアの頬にキスをする。するとレイアは嬉しそうに笑い、今度はリヴァイの方へ振り向き期待の眼差しを向ける。
「リヴ、レイアからのキスを貰ってあげて?」
「……はい」
リヴァイは少し照れながら、体を屈めてレイアに顔を近づける。そしてレイアがキスをするとリヴァイ返した。
「ちーうえ、レイア、だいすき?」
「ああ。愛している」
レイアの問いかけにそう答えると、リヴァイはルーカスに顔を近づけた。
え……?
「……殿下、愛しております」
「れいあ、くちない!」
レイアが怒ったようにそう言うと、リヴァイはレイアに言う。
「口は父上と父様だけだ」
「ぶー!」
ルーカスは自身の唇に触れながら悔しそうにリヴァイを睨んだのだった。
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