転生皇子の新生活 高等部編

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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高等部編

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「モデスト伯爵夫妻にレイア様をご紹介してよろしかったのですか?」


 アレイルが心配そうにルーカスに尋ねた。


「うん、2人の言動は本心のようだったからね。それに、15年近く過ぎてもなお僕を気遣い母様を尊重し、かつそれを悟らせない返答は、目を見張る程だった」


 モデスト伯爵をべた褒めするルーカスに、アレイルは心配の意を拭った。


「では、御二方は信頼出来る方だと言うことですね」


 しかしアレイルのその安堵した発言にルーカスは首を横に振る。


「それはまだ分からない」


 そのルーカスの言葉に、アレイル達3人は酷く驚いた表情を浮かべる。


「夫妻を信用したから、私にレイアを紹介させたのではなかったのですか?」


「もしも夫妻が敵であったのならば、レイア様に危害を加える場合もあるのではございませんか?」


 リヴァイとキャサリンは酷く不安そうな表情でそう尋ねた。するとルーカスは少し呆気にとられた後すぐさま否定する。


「ごめんね、僕の言い方が悪かった。彼らが公爵位を望んでいないことは確かなんだ」


「え……?」


「彼らはムハンマドに対して、執着していない。モデストとして生きているから、現在、レイアに危害を加える理由はないんだ」


 そのルーカスの言葉を聞き、3人は少しハッとした様子となる。


「完全に信頼は出来ないと言うことですね? 今後政敵になる可能性も十分にあると」


「そう。だからといって、身内だけをレイアに合わせる訳には行かない。この子が貴族として生きていく以上、敵意には慣らしておかなければならないから」


 ルーカスはとても優しい瞳でレイアを見つめる。その瞳と目が合うと、レイアは嬉しそうに笑ったのだった。




 馬車が走り出し少し経った頃、馬車が止まり御者が2台の皇室の馬車とペレス家の馬車が落ち合ったことを告げる。

 そして再度馬車が出発し、数日をかけて北部にあるペレスの別荘へと到着した。


 馬車から降りると、ペレス子息夫妻がルーカスの元へとやってきた。


「改めまして皇子皇女殿下、そして皆様、我が別荘へようこそお越しくださいました。使用人をお付け致しますので何かございましたらすぐ様お申し付け下さい」


「これからひと月ほどよろしく頼むよ」


 そうして軽く挨拶をかわすと、皆は一度個々の自室へと案内された。


「第3皇子殿下とムハンマド様方はこちらのお部屋をお使い下さいませ」


 ルーカスとリヴァイ、レイアの3人は3人でゆったりと寝られる寝具のある部屋へと案内される。


「これは、ペレス男爵の計らいだろうね……?」


「そのよう、ですね。私達が居ると気が休まらないと思いますので、ペレス子息にもう一部屋用意してもらってまいります」


 リヴァイがそう言いレイアを連れて部屋を出ようとする。それにルーカスは不思議そうな顔をした。


「寧ろ君達がいた方が楽しくて良いと思うのだけど……。レイアも父様と一緒がいいよね?」


「うん! いっしょ!」


 レイアの嬉しそうな返答を聞くとルーカスはリヴァイの顔を見上げた。そのルーカスの表情にリヴァイは困った表情を浮かべ微笑んだ。


「殿下がよろしいのであれば、是非ご一緒させてください」


「こちらこそ、共にすごしてくれるかい?」


「いっしょ!!」


 ルーカスとリヴァイはお互いに目を合わせる可笑しそうに笑った。




 その日の夕食の時間、皆で食事をとる為にルーカス達は食堂で席に着く。


「明日からは皆様ご自由にお過ごし下さい。屋敷にある施設はお好きにお使いになられて構いません」


「第3皇子殿下は読書がご趣味だとお聞き致しました。図書室もございますので訪れてみてはいかがでしょうか」


「それはとても楽しみだね。気が向いたら足を運ぶよ」


 夫人の言葉にルーカスがたんたんと答えると、ソフィアとリリアン、そしてリヴァイ達側近の3人は心の中で微笑ましく思う。


「皇女殿下、この別荘には大きなテラスもございますの。明日のティータイムはそちらでご一緒にどうでしょうか?」


「お姉様、是非ご一緒させて頂きましょう?」


「そうね。楽しみですね」


 そうして各々明日の予定を約束し、食事を終えると部屋へと戻って行った。


「ちーうえ、とうさま、ぽかぽかする!」


「では今日は一緒に入ろうか」


「わぁい!」


「湯浴みの準備をして参ります」






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