転生皇子の新生活 高等部編

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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高等部編

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 ルーカスがムハンマドの本家へやってきて2週間が経ち、明日の朝、北部にあるペレス男爵家の別荘へ避暑に向かう。

 その為ルーカスは就寝前に、アルフィーの元へと訪れていた。


「ルーカス殿下、先程書簡が届き、調査員の編成が終了したそうです」


「では明日からは分家の者を連れてくるのかい?」


「それが殆ど、当主がムハンマドの分家であった家門の者が調査員に抜擢されたようです」


 分家の者は爵位を賜るとその家門の分家を抜け新しい貴族家の直系として扱われるようになる。
 新しく授爵されたムハンマドの分家の者の卑属者が調査員に加わったようだ。


「現役の者は限られているから、年齢や役職を考えればある程度予想は付くね」


「はい、大方予想通りでした。しかし一組、意外な者がおりまして」


「意外?」


 アルフィーの言葉にルーカスは酷く怪訝な表情となる。


「27年前に授爵した、モデスト伯爵夫妻でございます」


「27年前……先帝夫妻が亡くなられた年だね」


 アルフィーはゆっくりと頷いた。


「先帝ご夫妻が亡くなられた事件で、貴族名簿からは多くの名前が消し去りました。その穴を埋めるべく、レオ陛下は当時から有能かつ信頼のおける次男三男や、分家から授爵を行い国家の安定を計りました」


「その中にモデスト伯爵もいたと」


「はい。彼は唯一陛下と同世代の授爵者であり、群を抜いて能力のある男です」


 アルフィーがたいそうモデスト伯爵を褒めるので、ルーカスは少し意外そうな表情をする。


「君がそこまで言うのならば相当なのだろう。夫妻と言ったが、夫人もムハンマドの出かい?」


「ええ、彼が伯爵となる前からの婚約者でして、夫婦仲も円満だそうでレイアと同い年の息子が産まれております」


「それを理由にレイアに近づく可能性もあるだろうね。……ならば明日、彼らに挨拶をしてもいいかな?」


 ルーカスの言葉にアルフィー少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。


「それは、我々がするべき役目でございます。これ以上殿下にご迷惑をおかけすることは出来ませぬ……」


「アルフィー、子を守ることは親の役目だよ。だから僕がレイアのことで動くのは、迷惑などではなく当然のことなんだ」


 ルーカスは真摯な瞳でアルフィーを見つめる。するとアルフィーは困った様な表情で笑った。


「それもそうですな。ルーカス殿下、どうかお力添えいただけないでしょうか」


 そう言いアルフィーはルーカスに向け頭を下げる。その願いに、ルーカスは快く了承したのだった。




 翌朝、支度を済ませたルーカス達はレイアを連れて調査団と顔を合わせに向かう。


 ルーカスの姿を見た調査団員はすぐ様頭を下げ、敬意を示した。


「顔を上げなさい」


 そう告げるとルーカスはペレス男爵、ラミネス男爵の元へ向かう。


「これで全員かい?」


「はい。新しく編成された調査員8名です。今後は4名ずつ二手に分かれて調査を行っていきます」


 ペレス男爵の言葉を聞くと、ルーカスは調査員の顔を一人一人見渡した。そして目当てであったモデスト伯爵と視線が交わると、ルーカスは彼らの元へ近づいた。


 ルーカスが近付くと伯爵夫妻は目線を落とし軽く姿勢を低くする。


「モデスト伯爵夫妻は、お披露目会以来だね」


「「第3皇子殿下にご挨拶申し上げます」」


 2人はそう挨拶すると、伯爵が柔らかい表情で口を開いた。


「お久しぶりでございます。ご成長されたお姿を拝見でき、至極嬉しく存じます。まさか我々の事まで覚えて頂けるとは、第3皇子殿下のご聡明さはお噂通りですね」


「記憶力が良くてね。君達は変わらず若いままのようだ」


「恐れ入ります。皇帝陛下より賜った爵位に見合う様、未熟ながらも尽力させていただいております」


 夫妻はとても穏やかな雰囲気を纏い、優しい声色で奥ゆかしさが滲み出ている。


「そういえば、一昨年に第一子が生まれたそうだね。冬生まれだと聞いたけれど、夫人の体調はもう良いのかい? 母が弱れば子も心配をする」


 そのルーカスの言葉を聞くと、夫妻は少し気遣わしげな表情となった。


「お気遣い頂き感謝いたします。幸い、昨年の秋頃に体調は回復致しましたので、微力ながら夫の仕事をお手伝いしております。以前から子供が大好きだったのですが、我が子だと思うとより一層の可愛く見えてきてしまうのです」


 そう言い夫妻はとても幸せそうな笑みを浮かべる。

 その表情を見てルーカスの纏う雰囲気が和らいだ。そしてレイアを抱えるリヴァイを近くに呼ぶと夫妻にレイアを紹介するよう促した。


「事情があり今は本邸で過ごしている。レイア、挨拶してやれ」


「れいあ、むはんまどです!」


 レイアはニコニコとした笑顔で夫妻に自己紹介をした。


「君達の子と同じ歳だよ。僕が言うのはなんだけど、良くしてくれると助かる」


 ルーカスはほんの一瞬、2人に向けて圧をかけた。それに気づいた夫妻はレイアに向けて軽く頭を下げた。


「ムハンマド公子、素敵な自己紹介をありがとうございます。今後とも是非よろしくお願い致します」


「では、僕達はそろそろ出発するよ」


 そういいルーカスは夫妻のそばを離れると、アルフィー達の元へと行き出発の挨拶をし、ペレス男爵家の別荘へと出発したのだった。




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