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高等部編
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しおりを挟む「ルーカス殿下、この度は誠に申し訳ございません。殿下の広いお心に感謝申し上げます」
アルフィーは跪き頭を垂れて礼を言う。その謝罪にルーカスは冷たい雰囲気を纏い口を開いた。
「君に出来なければ、本当にマカイラに送るから覚悟しなさい」
「必ずや、やり遂げてみせましょう」
その覚悟を決めた瞳に、ルーカスは頷いた。
「皇子殿下、シリル殿、明日からの調査は我々ペレスの調査員と、ラミネスの調査員で調査に参ります。編成が完了致しましたら、ムハンマドも入れて参りましょう」
「分かった」
「ペレス男爵、分家の者が世話になった」
「いえいえ、あれ程の礼儀知らずであれば、直系の座を狙うのも頷けますな。信憑性が増したと思えばよろしいでしょう。では私これで失礼致します」
ペレス男爵はルーカスに頭を下げると、屋敷を後にした。
「ルーカス殿下、遅くなりましたが夕食に致しましょう」
「そうだね。乳母、レイアを寝室に連れて行ってくれるかな」
「畏まりました」
リヴァイに抱えられたレイアを乳母に引渡しルーカス達は夕食を取るため食堂へと向かった。
食堂に着くと、ハドリーとグラシアが席に座らず待っている。
「お話しを伺いました。この度は御無礼を働きまして、誠に申し訳ございません」
ハドリーとグラシアが謝罪すると、アルフィー達も再び頭を下げて謝罪した。
「顔を上げなさい。君達が今ここで、どれだけ謝罪をしようと、分家の礼儀は育たない」
「仰る通りでございます……」
「ならば、君達が謝罪するのは今ではなく、あの者達の教育を終えた時ではないのかい?」
そのルーカスの言葉に、ハドリーとグラシアははっとした表情をする。
「っ、必ず教育を終え、再度、テオ殿下へ謝罪する機会を頂戴したく存じます」
「うん。それまで気長に待っているよ」
ルーカスの雰囲気が柔らかくなり、その言葉で皆は驚き目を見開いた。
「ルーカス殿下の信用を、必ず守り抜いてみせますのでどうか、今暫くお待ちください」
アルフィーがそう告げると、ルーカスは深く頷いた。
「では、食事にしようか」
それぞれ席に着くと、食事が運ばれてくる。それを眺めながらルーカスはアルフィーに尋ねた。
「今日来ていた分家はどれ程血が離れているんだい? あれが調査を依頼したのでしょう?」
「はい。あの者達とは我々は6親等を超えておりますので親族ではございません。しかし分家ではありますのでムハンマドを名乗っております」
「これと言った功績もなく、爵位も役職も給われていないと」
「そして数名は、産まれた当時の当主と10親等の関係ですので、焦っておるのでしょう」
ナサニエルでは、産まれた当時の当主と10親等以内の関係でなければ、貴族の位を貰うことが出来ない。つまり11親等以降であれば、どれだけ高位貴族と血が繋がっていようと、貴族にはなれないのだ。
だが婚姻を結び相手側の戸籍に入った場合、相手とその家門の当主との親等が、自分と当主との親等となる。
「つまり産まれてくる子孫が平民になるのが嫌で、爵位を狙っているということでしょうか?」
「そうだろうね。ただ、爵位を狙っているのが遠い血族だけとは限らない。近い者ほど扱いの違いに不満を抱く者が多いからね」
「それもそうですね。今一度分家の調査を行い徹底的に洗い出します」
「ああ、そうだ。あの者もしっかり調べておいてよ。僕の前でレイアに名前を聞いてきた男」
「畏まりました。城内に勤務する者は特に調べあげておきます」
そうして真剣な話を終えると、ルーカス達は漸く食事を食べ進めたのだった。
翌日、ルーカス達が出掛ける前に、ラミネス男爵が訪れた。昨夜、夕食を終えてすぐの頃に、ラミネス男爵からの書簡が届き、少し早く到着し謝罪の時間を頂きたいと書かれていたのだ。
「第3皇子殿下、ムハンマド家の皆様、昨日は調査団が多大なる無礼を働き、誠に申し訳ございませんでした」
「謝罪を受理する。君達もそれでいいよね?」
「勿論でございます。ラミネス男爵、此度は我が分家の者が迷惑をかけた。すまぬ」
「いえ。ペレス男爵から伺っていると思いますが、本日は我々で調査をし、調査員の編成後ムハンマドの方を連れての調査を再開致します」
「ああ。よろしく頼む」
「では調査の準備をしてまいりますので、時間になったらまた訪問致します」
そうして数日間の平穏な調査が始まったのだった。
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