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高等部編
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しおりを挟む「滝、綺麗だったね。観光地になる理由が分かったよ」
ルーカス達はムハンマド領の観光名所である滝を見終え、馬車で帰路に着く。
「レイアは寝てしまったかい?」
「はい。随分とはしゃいでおりましたので疲れたのでしょう」
リヴァイの膝の上で眠るレイアを見ながら、4人は微笑ましそうに笑みを浮かべた。
「……ルーカス殿下、分家の方々と1悶着あったとお聞き致しました」
「皇族の方のお食事を邪魔するなんて有り得ないわ」
アレイルとキャサリンは怒りを表しながらそう言った。
「まあ、そうなる様に少し遅い時間に食事に行ったからね」
「それでもです! 親族だからと勝手に時間を早めて、ルーカス殿下にまでご迷惑をかけるなんて!」
「釘を指しておいたから、流石に今後は時間を守ると思うよ? 今日も夕食までには帰るように言ったから」
「では、もしお屋敷に着いてもまだ難癖を付けていた際は、速やかに帰って頂きましょう」
アレイルはとても良い笑顔でそう言った。
エイルって少しウィル兄さんと似ているよね。
そんな話をしながら、馬車に揺られて半刻程経つと、屋敷に帰ってきた。
「……まだ居そうだね?」
出迎えに来たゲイブにルーカスが言うと、ゲイブは少し苦笑いを浮べる。
「お帰りなさいませ。テオ殿下、調査団が、いえ、分家の者が、殿下へお話があるようで……」
「……案内しなさい」
「申し訳ございませぬ」
ゲイブが申し訳なさそうに頭を下げ、ルーカスを調査団の元へと案内する。
調査団の元へ行くと、分家の者はリヴァイと抱えられたレイアに向けて鋭い視線を向けた。
それを遮るように、視線と被さる位置にルーカスは立つ。
「話とはなんだい?」
「調査をしに来ているのに、ムハンマドの人間を連れ出されては困ります!」
分家の者が苛立ったようにルーカスに告げる。
「それは、君の意見かい?」
「なっ、! 調査団全員の意見です!」
「と、言っているけど、ペレス男爵、どう言う事か説明をしてくれるかな?」
ルーカスはペレス男爵に向けて殺伐とした圧力をかける。するとペレス男爵は背筋に少しの冷や汗をかいた。
「混乱させてしまい申し訳ございません。この者の言うことは誠ではございません」
「皇族だからと贔屓するつもりか!?」
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分家の言葉に、アルフィーは酷く慌てた様子でルーカスに向け頭を下げて謝罪をした。
「……分家になると、これ程まで知能が低下するのかい?」
ルーカスは酷く冷めた瞳でそう発する。その冷え切った視線と言葉に、この場にいる皆が得難い恐怖を味わっているだろう。
アルフィー、リヴァイ、ゲイブの3人は即座に膝を折りルーカスに頭を垂れた。
「君達は、ペレスとマカイラの分家を見た事があるかい? 彼らに礼儀作法を教えた当主のもとへ行き、教育して貰うといい」
「っ、皇子殿下、それは公爵家であり宰相家であるムハンマドの教育者が、無能であると言っているようなもので御座います。それは宰相家を地に落とす行為でございます」
皆はルーカスが本気で、下位にあたるペレスとマカイラに教育をさせるつもりである事を感じ取る。ペレス男爵が慌てた様子でルーカスにそう告げるが、ルーカスは意見を変えようとしない。
「貴方様の教育者もムハンマドなのです! そのようなことをすれば皇子殿下までも……!」
「僕の名誉と、国の中枢を担う家門の礼儀作法の、どちらが優先すべきかなんて、明白でしょう?」
そのルーカスの言葉に、ペレス男爵は口を噤んでしまう。しかし、今度はアルフィーが強い眼差しでルーカスを見つめた。
「ルーカス殿下、どうかもう一度、我々に機会を頂けませぬか。必ず、ルーカス殿下の名誉をお守り致します」
「君に出来るのかい? これ程まで皇族に対する礼儀を知らない貴族は、凝り固まった思想に支配されていて柔軟ではないんだよ」
「勿論、最悪の場合も想定し教育致します。数が減る程度であれば、全滅するより被害は少ないですから」
ルーカスはアルフィーの瞳を真剣に見据える。
「……君がそこまで考えているのならば任せてみようか」
「ありがとうございます」
「ペレス男爵、調査団を組み直しなさい。礼儀知らずが調査をすれば、何に触れるか分からない」
「畏まりました。陛下とご相談し、調査団の組み換えを行います」
ペレス男爵の言葉に、分家の者は苛立ちを露わにする。
「私は皇子殿下にお話がある。皆は先に帰っておれ」
ペレス男爵が指示を出すと、調査団は漸く屋敷を出ていった。
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