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高等部編
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しおりを挟む夕食を取り終えると、ルーカス達は少し話を進めた。
「調査は5日後から始まります」
「ならば、レイアとリヴを連れて滝にでも行ってこようか。翌日は街に散策に行き、その次の日にはピクニックに行こう。何せ、2週間しか滞在できないからね?」
そのルーカスの言葉に、アルフィー達は申し訳なさそうな表情をする。
「御手を煩わせてしまい申し訳ございません。愚かな分家の者が、テオ殿下にまでご迷惑を……」
「レイアを連れて帰ったのは僕なのだから。それに、僕の事も、家族にしてくれるのでしょう?」
「っ、ええ、勿論でございます」
ハドリーは柔らかな表情で微笑んだ。
「ならばムハンマドの分家の対応を僕がしても、なんら問題はないね」
「本当にありがとうございます」
「大切な我が子を護るのは親の役目でしょう」
ハドリーとグラシアは嬉しそうに頷いた。するとアルフィーが話題を変えるべく明るく口を開く。
「ルーカス殿下、明日はぜひ屋敷のご案内を致しましょう。勿論、リヴが、ですがね」
「ふふ、それは楽しみだね。先程少し見えた庭園もとても綺麗だった。明日はそこでお茶をしよう」
「ではシェフに我が家のとっておきを作らせておきましょうか」
「とっておき?」
ルーカスが不思議そうに尋ねると、ハドリーは楽しげな表情で笑い言う。
「明日へのお楽しみです」
「おや、それは楽しみだね」
それに返すように、ルーカスも少し口角を上げた。
「ではルーカス殿下、今夜は親子3人で積もる話もございましょう。レイアもご一緒にお休みになられては如何でしょう」
「ではそうさせてもらうよ。行こうか、レイア」
アルフィーの言葉にルーカスは了承し、就寝の挨拶をかわすとレイアとリヴァイと共に部屋へと向かった。
本邸でも、ルーカスはリヴァイの寝室と繋がる隣室を使い、一緒に寝る事になった。
「レイア、今日は父上と父様と一緒に湯浴みをしないかい?」
「! する!」
「良いかい、リヴ?」
「…はい」
レイアが嬉しそうに返事をすると、ルーカスはリヴァイにも尋ねた。リヴァイは少し躊躇いながらも嬉しそうに了承する。
「着替えを持ってくるね」
ルーカスはリヴァイの部屋のベルを鳴らし、使用人にレイアの着替えを頼むと、隣室へ行き自分の服も取りに行った。
「レイア、お風呂気持ちいいね」
「うん!」
ルーカスとレイアが洗髪等を済まし浴槽に浸かる。するとレイアがルーカスの指を引き呼んだ。
「とうさま、ちーうえ、ごしごし!」
「ん? ごしごししているね」
「ちあう! とうさま、ごしごし!」
リヴァイが体を洗っていると、レイアはルーカスにそう言った。それをルーカスはリヴァイが体を洗っていると伝えたかったのだと思ったが、レイアは否定した。
その光景を見たリヴァイは、微笑ましそうに眺めていたが、突然体を洗う手を止め固まった。
それに気付いたルーカスが不思議に思い声をかけようとすると、レイアがまた口を開く。
「とうさま、レイア、ごしごし! とうさま、ちーうえ、ごしごし!」
その言葉を聞きルーカスはやっとレイアの言いたいことを理解したようだ。
「ああ! 僕が父上をごしごししたらいいんだね?」
「うん!」
ルーカスに伝わったことが嬉しいのか、レイアはこれでもかと言うほど頷いた。
「頑張って伝えてくれてありがとう。では父上の体をごしごししに行こうか」
「する!」
その返事を聞きルーカスはレイアを抱いて浴槽をでると、リヴァイの方へと歩いていく。
「殿下っ、私は自分で洗えますので……、、」
「ふふ、レイアがしろというのだから断れないでしょう? ねえ?」
「うん!」
慌てた様子のリヴァイに、ルーカスは仕方がないと言いながら酷く楽しそうにリヴァイに近付く。
「ほら、レイアを抱えておいて」
「分かり、ました……。ありがとうございます」
ルーカスがレイアを差し出すと、リヴァイは諦めレイアを膝に抱えた。そしてルーカスはリヴァイの背中を優しく洗う。
「……ねえ、リヴ。君、また筋肉が付いたかい?」
「そう、でしょうか?」
「うん。ずるいよ、リヴだけ。僕もこんな風に凄い筋肉が欲しい!」
「っ、殿下……!」
そう言いルーカスは後ろから勢いよく抱き着きリヴァイの腕の下から顔を出した。
「ねえ、レイア。こんなに格好良い筋肉が欲しいよね~」
そう言いながらルーカスはリヴァイのお腹や足を洗っていく。
「う?」
「殿下、レイアが困っておりますのでお戯れはおやめ下さい」
「ふふふ、ごめんね。洗い終わったから流してお湯に浸かろうか」
そう言うとルーカスはリヴァイの体に着いた泡を流し、3人でまた浴槽に浸かりお喋りをしたのだった。
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