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高等部編
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しおりを挟む長期休暇のひと月前になると、ルーカス達は北部行きの計画を立てる。
「では、北部へ行くのはペレス家が避暑に出発する日で良いんだね?」
「はい。両親が是非ともご一緒にと仰っておりまして」
「此方としては土地に慣れた人間が多いのならば嬉しい限りだよ」
避暑へはルーカス、ソフィア、リリアン、そしてその側近達と中等部2年の4人が向かうこととなった。
ケイリー達と話終えると、ルーカスはリヴァイの方へと振り向き言った。
「休暇に入ってから避暑に行くまでの間は、ムハンマド領の君の屋敷で過ごして良いかい?」
「それは勿論構いませんが、休暇が始まって少しすると、屋敷内が少々騒がしくなると思います」
「ああ、それは構わないよ。大人達から話は聞いているからね」
「ならば是非お越しください。お祖父様達には私から伝えておきます」
それからあっという間にひと月が経ち、ルーカスは休暇前最後の授業に参加した後、側近達を連れて皇城へと戻り皆で夕食をとる。
「ルーカスはムハンマドから北部へ向かうのだろう?」
「うん。レイアも連れていくからね」
「3人とも夏場とはいえ、北部の夜は肌寒いから風邪をひかないようにするのよ?」
「はい、お母様。侍女が羽織を入れてくれていますので、ご安心下さい」
そんな風に北部行きの話や学園での事などを話し、夕食を終えた。
皆が食事を終え席を立ち、ルーカスも部屋へ戻ろうとすると、ルーカスはアーサーに呼び止められる。
「念の為確認するが、公務用の書類はムハンマドとペレスで与えられた部屋以外で出すことは禁ずる」
ルーカスとソフィアも高等部に入り重要な公務を任されるようになった。
皇族が扱う書類はどれも、安易に見せられるものではない。その為本来ならば持ち出す事は許されていない。
しかし宰相家であるムハンマドと、国家の中枢を支える反対派の家門の、屋敷内で、かつ自分以外が触れることの出来ない場合のみ、持ち出しを許可される。
「決して誰の目にも触れさせないよ」
「ああ。……気をつけて行ってこい。休暇が終わる前には帰ってくるんだぞ?」
「うん。戻ったらまた食事を一緒に取ろうね。行ってきます」
ルーカスはアーサーに挨拶すると、自室へと戻った。
翌朝、ルーカスはリヴァイ、アレイル、キャサリン、モニカを連れてムハンマド領へ出発した。
「エイルはムハンマド領に行ったことがあるんだよね?」
「はい。学園に入った頃から、何度かお邪魔させて頂いております。観光名所となっている滝もよく見に行っておりました」
「殿下、休暇中にレイアも連れて見に行きませんか?」
リヴァイの誘いに、ルーカスは快く返答する。するとキャサリンが少し意外そうに口を開いた。
「ルーカス殿下はムハンマド領に行かれたことがないのですね。お茶会の際に他領に出向かれておりましたので、ムハンマドにも行ったものだと……」
「そう言えばこちらの方面には来なかったよ。トレヴァーはムハンマドを避けていたんだろうね。臆病な性格をしていたから」
不当な反対派のお茶会に参加していた際、ルーカスは色々な領地まで足を運んでいた。それでもムハンマド領を横断する必要のある領地には一度も行ったことがなかった。
頭領であるトレヴァーがルーカスがムハンマドと結託している可能性を排除していたのだろう。
「ムハンマドには滝以外にも様々な観光地があるのでしょう? 色々なところを見に行こうね」
「はい。お供致します」
そんな風にお喋りをしながら馬車に揺られ、夕方頃に漸くルーカス達はムハンマド領にある公爵家の本邸へと到着したのだった。
本邸へ到着すると、扉の前には屋敷内の全員が出迎えの為に立っている。馬車の扉が開き、リヴァイが降り、ルーカスをエスコートするように手を伸ばした。
それを受け取りルーカスが馬車をおりた瞬間、使用人達は一斉にルーカスに向けて頭を下げた。
「ようこそお越しくださいました、ルーカス殿下。夕食の準備が整っておりますのでそちらでごゆっくりとお話致しましょう」
「うん。2週間ほど世話になるよ」
アルフィーの挨拶に答えた後、ルーカスはグラシアに抱っこされたレイアに向けて手を伸ばし頭を撫でた。
「大きくなったね、レイア。僕のこと、覚えているかな?」
優しく頭を撫でるルーカスに、レイアは少し首を傾げながら、ゆっくりと口を開いた。
「……とー、さま?」
「っ、ああ、そうだよ。父様だ。覚えていてくれてありがとう」
「とーさま!」
以前まではルーカスの事をとと、と呼んでいたレイアの今の呼び方を聞くと、ルーカスは酷く驚いた表情となった。
そして次の瞬間、満面の笑みを浮かべてお礼を言った。その表情にレイアもはっきりと思い出したのか、嬉しそうにルーカスを呼ぶ。
「本邸に来てから、リヴがとても真剣な表情で父様と教えていたのです」
そう微笑ましそうに言うグラシアに、またもや驚いたルーカスは、リヴァイの方へと視線を向けた。
リヴァイはその視線から逃れようと目を逸らし少し耳朶を赤く染めている。
「ふふふ、僕を驚かせようとしたのかい? 君の作戦は世界一だ。本当にありがとう」
「い、いえ……」
ルーカスは酷く愛おしそうに笑みを浮かべてリヴァイにそう告げた。するとリヴァイの耳は一気に真っ赤に染まって熱を持つ。
その光景を、グラシア達は微笑ましい表情で見守っていたのだった。
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さっそく投稿出来ていなくて本当にごめんなさい🙏💦
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