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高等部編

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「殿下、起きて下さい。少し早いですが、昼食にしましょう」


 ルーカスが寝ていると、リヴァイが体を揺さぶりそう言い起こした。


「今、何時?」


「午の刻の少し前です。朝食を食べられておりませんので、先程キャシーが食堂から持ってきたのです」


「後でお礼を言わないとだね。悪いけれど、体を起こしてくれるかい?」


 ルーカスがそう言うと、リヴァイはルーカスの背中を支え座らせると、クッションを背中側に置きもたれさせた。
 するとリヴァイは、食事をベッドの近くまで運ぶと食器を手に取りルーカスの口元まで持ってきた。


「ふふ、ありがとう」


 そんなリヴァイにルーカスは嬉しそうに微笑んで食事を口に入れた。


「あれ程恥ずかしそうにしていたのに、まさかリヴがあーんをしてくれるとはね」


「っ……腕をあげるのも辛いのでしょうから、当たり前です」


 そう言いながらも、リヴァイは耳を少し赤くしている。


「リヴは眠らなくても大丈夫かい?」


「はい。体力的にも、問題なく夜までもつと思います」


「では、食事が終わったら、話し相手になってくれるかい? 昨夜寝れなかった分はもう寝たからね」


「もちろんです」


 その後2人は食事を済ませると長い時間会話を続けた。


 一刻と半刻程が経った頃、部屋の扉を叩く音が響いた。


「ルーカス殿下、リヴ、アレイルとキャサリンです」


「入って」


「ルーカス殿下、ご気分はどうでしょうか?」


「リヴの事は私達がきちんと叱っておきますのでご安心くださいね」


 キャサリンが微笑ましそうに笑みを浮かべながらそう言うと、ルーカスは少しむず痒いような困った表情をする。


「休んだから随分と楽になったよ。キャシー、食事を持ってきてくれてありがとう」


「いえ、側近として当たり前のことです。夕食はエイルが持ってきますのでご安心下さい」


 その言葉にルーカスはまだ動ける程回復していないことを悟られたのに気付き、申し訳なさそうにお礼を言った。




「では長居するのもあれですから、我々はそろそろ戻りますね」


「うん、来てくれてありがとう」


 そう言って2人はルーカス達の部屋を後にする。


「殿下、必要なものがあれば持ってまいりますので仰って下さい」


「うーん、そうだね。では本でも読もうかな」


 ルーカスは以前買ってまだ読めていなかった本を数冊、リヴァイにベッドまで運んでもらう。


「ありがとう。あまり気にせず君も好きな様に過ごしてね」


 リヴァイが返事をすると、2人はそれぞれの時間を過ごした。

 そして放課後近くになると、リヴァイが紅茶と茶菓子を持ってきた。


「早い時間に昼食を取りましたので、休憩も込めてティータイムに致しませんか?」


「わあ、美味しそうだね。そのカヌレはどうしたんだい?」


「キャシーが昼食を持ってきた際に、エイルと2人からの見舞いにと」


「そうだったんだ。わざわざ見舞い品まで持ってきてくれたんだ……」


 ルーカスがまたもや申し訳ない表情を浮かべて言うと、リヴァイもその表情に気付いたようだ。


「2人の行動に、殿下が引け目を感じられる必要はございません。2人が殿下を思い、勝手にした事です。皇族のあなたが、一介の貴族の好意に一喜一憂などしてやる必要は無いのですから」


(とは言っても、その対象は身内の人間にのみで、有象無象の衆に心を動かされる方ではないのだが……)


 リヴァイの言葉に、ルーカスは優しく微笑み言う。


「それもそうなのだけど、せっかく友人が心配してくれているから、喜ぶ事は許してくれないかな?」


「もちろんです。貴方のお心を縛り付けられる者はこの世に1人もおりません。皇帝陛下とて例外ではありません」


「ふふ、そっか。では沢山喜ぶことにするよ」


 ルーカスは嬉しそうに笑いそう返した。


「ほら、君も座って? 紅茶が冷める前に早く食べよう」


「はい、失礼致します」


 リヴァイが着席すると、2人は楽しげにティータイムを過ごした。


 その後暫くしてアレイルが夕食を持って来ると、2人は食事を済まし、ルーカスは体を清めるためにリヴァイに拭いてもらった。

 そうやって甲斐甲斐しくお世話するリヴァイだが、ルーカスが授業に参加できるまで回復するのは、結局2日休んだ後になるのだった。




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 水曜日は投稿出来ずすみません( ߹ᯅ߹)




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