85 / 105
高等部編
25
しおりを挟むルーカス達が執務室を出ると、カエルム達は真っ青な顔で立ち止まった。それに気付いたルーカスが彼らの方を振り返り促した。
「どうしたんだい?」
「……俺達、毒を飲むのか?」
カエルムが酷く強ばった顔でルーカスに伝えた。
「皇族の方に手を出せば、平民はその場で切り殺されるのが常だ。殿下が取り計らって下さったお陰でお前達は生きていられることを忘れるな」
リヴァイは不服があるのかと不機嫌を隠さずに言う。するとルーカスは困った顔でリヴァイを見て優しく微笑んだ。
「一先ず、客室へ向かおうか。まだ仕事をしている官僚達もいるからね」
当たりを見渡すと、廊下には遅い時間まであくせく働いている文官達が歩いている。
ルーカス達が客室の方へと足を進めると、文官達は廊下の端により道の真ん中を開けた。
そしてしばらく歩いて行くと、向かい側からアレクサンダーとディムロットが歩いてくるのが見える。
彼らはルーカスに気付くと軽く頭を下げ話しかけてきた。
「お帰りなさいませ、ルーカス殿下。何やら久しぶりの外出で問題児に会われたとか……」
「ふふ、そうなんだ。少し厄介そうだから、父様に投げてきたよ。お陰で君達も呼ばれてしまったみたいだね」
「ええ、屋敷に帰った途端に皇城へ逆戻りです」
「おや、それは悪い事をしたね」
ディムロットが肩を落としてそう言うと、ルーカスは眉を下げて苦笑をする。
「いえいえ、ルーカス殿下に責はございません。ところで、こちらの子供達はいったい?」
「ああ、僕の大切な客人だよ。今日こちらへ連れてきたんだ。……丁重に扱うようにね?」
ルーカスは聞き耳を立てていた文官達に圧をかけるように辺りを見渡しながらそう言った。すると文官達はルーカスの方へ体を向けて軽く会釈をする様に頭を下げた。
そしてアレクサンダーとディムロットは笑みを浮かべる。
「ルーカス殿下のお客様ですので」
「勿論、丁重におもてなし致します」
「うん、よろしくね。僕達はそろそろ行くよ」
「足止めしてしまい申し訳ございません」
アレクサンダーがそう言うと、ルーカス達はそれぞれ足を進めて行った。
カエルム達が泊まる客室へ到着すると、セバスは他の業務へと戻って行った。
「今からは自由に話して構わない。それで、先程言った通り君達には毒の実験体となってもらう。これは確定事項だよ。その上で質問はあるかい?」
ルーカスが淡々とそう言うと、シエロが口を開いた。
「俺だけじゃだめなの……? あんたに手を出したのは俺だ。罰を受けるのは俺だけで、、」
「それは出来ない。皇族に危害を加えた者はもれなく親族も処刑対象となる。その親族がその場にいたのならば尚更ね」
その言葉を聞き3人はしばらく黙り込んでしまう。
そして少し時間経つと今度はカエルムが質問する。
「……毒を飲むのは、あんたの諜報員にする為なんだろ? 俺達にはやっぱり選択肢なんてないってことなのか?」
「それは違う。毒を飲むのはあくまでも罰だ。ただ影になるという選択肢があるから、訓練も兼ねているというだけだよ」
「毒を飲んでスカイ達、死なない……?」
スカイは酷く不安そうにルーカスに尋ねた。
「死なないよ。いきなり強い物ではなく弱い毒から徐々に体を慣らしていくんだ。勿論、死ねないように解毒剤も用意している」
「そっか! 良かった」
ルーカスの言葉を聞きスカイは安堵したようにそう言い、カエルムとシエロも息を吐いた。
僕の言いたいことは伝わっていないみたいだね。まあ、いずれ分かるか。
「これから3人には僕の客人として城に滞在しながら1年間、5日事に毒を服用させる。動く元気がある時は出歩いて構わない。ただ皇族の住む東棟と皇帝の妃が住まう後宮には一切近付かないこと」
「「「分かった」」」
「お兄さんに会いたい時はどうしたらいいの?」
「使用人に伝えれば取り次いでくれるよ。ただ平日は学園に行っていて城にはいないから、急ぎならば使用人に言って手紙を書いてもらいなさい。それから、僕の事はテオ殿下と呼ぶように」
カエルム達はこくりと頷いた。
一先ず今伝えることは伝えたかな。あとは……。
「先程教えた貴族に対しての接し方は覚えているかい?」
「すれ違ったら頭を下げて端による、だっけ?」
「そう。間違っても君達からは絶対に話しかけてはいけない。もし何か嫌味を言われたとしても言い返さないこと。黙って聞いて全て覚えておきなさい」
「うん、覚えとく!」
「けどさっき廊下ですれ違った人達は、テ、オ殿下に話しかけてたよね」
シエロが不思議そうに思い出しながらそう言う。
「あれは僕が許可しているからだよ」
「なら許可を貰えば俺達も話しかけていいのか?」
カエルムの言葉にルーカスは首を横に振り否定する。
「君達は今はまだしない方が良い。貴族の隠された悪意に慣れるまでは僕の言ったようにしなさい」
「テオ殿下の言う通りにしたら安全?」
「被害は最小限だよ」
その言葉を聞くとカエルム達はルーカスの言う通りにすると決心したように、力強く頷いた。
「ではそろそろ僕達も部屋に戻るね。罰が終わった後のことは、ゆっくり考えておきなさい」
そう言うとルーカスはリヴァイ達を連れて客室を後にした。
ーーーーーーーーーーー
遅くなりました(இᾥஇ`。)
いつも読んで下さりありがとうございます*.(๓´͈ ˘ `͈๓).*
40
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる