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高等部編
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しおりを挟む「……伸び代、と見るならば確かにこれから学ぶ平民の子供達の方があるだろう。だが、貴族には平民と違い有力者との伝手があるからこそ成長率も軍団に上がる」
自力で力を伸ばすのに限界のある平民を、罪を犯したにも関わらず無闇に生かす必要はないとアーサーは言いたいのだろう。
それはそうだ。平民は数が多い分付け上がらせれば脅威になる。だからこそ帰属に対するある程度の恐怖心を、平民達には植え付けておかねばならないのだ。
「確かに伝手のない罪人を生かす必要は無いよ。それならば自分達の権力で成長出来る貴族の方が使えるからね。ただ、伝手になる有力者がいるならば別でしょう?」
「……君がなるつもりか? 自分に襲いかかってきた者の手蔓に?」
アーサーは反対だと言わんばかりに顔をしかめる。
「彼らの素質は皇帝に付く影にも劣らないよ。勿論罰は受けてもらうよ。皇族に手を出しても許されると思われては困るからね。ただその後は彼らの自由だ」
「自由とは、平民に第3皇子の権力を持たせるつもりか?」
アーサーはルーカスを鋭く睨む。しかし睨まれた当の本人は酷く余裕な笑みを浮かべた。
「獣人の武力を僕が持つんだよ」
「手懐けられるのか? 相手は稚拙で野蛮な獣だ。いくら君が有能でも獰猛な虎を飼い慣らすのは大変だろう」
「ん? 虎……?」
アーサーの言葉に、ルーカスは困惑しながらカエルム達をじっと見つめた。その様子にアーサーは1つの疑問が思い浮かんだ。
「まさか、猫獣人だと思っていたのか……?」
「……うん。確かによく見れば、猫にしては耳も丸いし牙も大きくて鋭いね……」
その言葉にカエルム達は誰よりもあんぐりとした表情をしている。そしてスカイが頬を限界まで膨らまし顔を真っ赤にして拗ねている。
「えっと、ごめんね……?」
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カエルム達は毒を使われる事に対して、そしてアーサー達は、その後のカエルム達の立ち位置に対して驚いていた
「それは彼らが望んだ場合。望まないなら神殿での療養後に孤児院か市井に戻すつもりだよ」
「……戻せるのか?」
「戻すよ」
アーサーの問いかけにルーカスはまたもや有無を言わせぬ視線を向ける。
するとアーサーはもう諦めたように大きなため息を吐き出した。
「……分かった。毒を飲ませると言われても言いつけを守り言葉を発さなかったのだ。君の言うことなら聞くんだろう。彼らの事は君に一任しよう。今日はもう下がって良い」
アーサーはフレデリックに騎士が出した報告書を持ってこさせると、ルーカスに手渡した。それにルーカスが目を通している間、フレデリックはカエルム達の腕の拘束具を外す。そして目を通し終えた報告書をルーカスが再びフレデリックに返した。
「ありがとう、父様」
「礼は要らん。君に言い負かされてしまっただけだ」
「ふふ、ではカエルム、シエロ、スカイ、行こうか。部屋に案内するよ。父様達も、おやすみ」
「ああ、良い夢を」
ルーカス達が執務室を出ると、部屋にはアーサーとフレデリックのみが残った。
「はあ、久方ぶりにルーカスも出掛けられたと思えば、また騒動に巻き込んでしまったな」
「だがルーカス殿下がオークションについて気付いてくれて良かった。……ここにも、黒髪が関わっているとはな」
フレデリックは心底申し訳なさそうにそう言った。するとアーサーが和ませるように毒を吐く。
「いったい何を企んでいるのか。あんな無能共が宰相になっては我が国は1年も持たんだろうな」
「……そこは稀に見る賢帝の力で5年くらいは持たせてくれ」
「ふ、お前達直系が負けなければ数千年は安泰だろうがな」
「はっ、誰に言ってる」
フレデリックは跳ね除けるようにそう言った。しかし次の瞬間、フレデリックはアーサーに向けて跪き頭を垂れた。
「皇族の方々にお手数をお掛けし申し訳ございません。皆様に与えて頂いた機会を無駄にせぬよう、我々は必ず、権力に眩んだ無能共を洗い出し1人残らず一掃することをここに誓います」
「ああ。いくらでも手を貸そう。ナサニエルの隣には、有能なムハンマドが必要なのだから」
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