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高等部編
22
しおりを挟む馬車に揺られながら会話をしていると、直ぐに馬車が止まった。
「到着致しました」
皇城に到着すると、御者がルーカスの許可を取り扉を開ける。全員が馬車から下りると、出迎えに来ていたセバスがルーカスの元へ近づいた。
「お帰りなさいませ、ルーカス殿下。こちらの小さなお客様はいったい?」
セバスはにこりと笑みを浮かべながらカエルム達の腕に繋がれた拘束具に目をやり言う。
「僕の大切なお客様だよ。丁重に扱うようにね?」
そんなセバスに、ルーカスも負けじとわざとらしく口角を上げてそう言った。するとセバスは困った様にため息を吐き使用人達へリヴァイ達とカエルム達の客室を用意する様に言う。
「それからセバス、騎士達の報告の後、父様に取り次いで貰えるかな?」
「……報告は明日の朝にと伺っておりますが?」
「少し急用なんだ」
「畏まりました。陛下がお呼びになるまでは執務室のお隣でお待ち下さい」
中へ入ると、ルーカス達はセバスに案内されアーサーの執務室の方へと向かう。
「カエルム、シエロ、スカイ、今からは僕か陛下が許可を出すまで言葉を発してはならないよ」
そのルーカスの言葉に3人は言葉を発さず頷いた。そして執務室の隣の部屋へ付くと、セバスがアーサーへの取り次ぎに向かう。
「楽にしていいよ。この部屋を出たら静かにね。それから、城には貴族が多く出入りしている。もし廊下ですれ違ったら頭を下げて端に寄るように。相手が通り過ぎるか話しかけてくるまでは、知り合いであっても顔を上げてはならない」
「知り合いでも?」
「そう。君達は平民で役職付きでもない。元来、礼節を学んだ者しか登城出来ないから、身分制度がどこよりも強い。もし下の身分の者が無礼を働けば罰を受けることもある。それが役職もない平民ならば、その場で切り殺されることもね」
切り殺されるという言葉にカエルム達は顔を青くした。
「本来は牢に連れられてから処刑されます。建物内で剣を抜くこと自体がご法度ですからね」
「それに、皇族の客人ならばそこまで神経質になる必要もないわ」
顔を真っ青にした3人にアレイルとキャサリンがフォローを入れる。するとルーカスは不思議そうに2人を見つめた。
「先程は彼らを睨みつけていたのに、どうしたんだい?」
「ルーカス殿下があまりにも怯えさせるものですから」
「ルーカス殿下に手を出したことは許せませんが、彼らの状況を見れば仰られた通り許容、出来てしまう、かもしれなくもないかと……」
キャサリンが渋々そういうとアレイルも賛同するように頷いた。
「ふふ、それは良かった。ここにどうしても許したくなさそうな子がいるからね」
そういいルーカスはリヴァイに視線をやった。
「……陛下もお許しになるならば、私からは何も言いません。しかしまだ、許すことは出来ませんので」
リヴァイはルーカスがアーサーを説得することを見越しているようで今だけは許したくないと言った。
「別に君が許したくなければ僕や父様がなんと言おうと許す必要はないよ。他人が命令した所で、人の気持ちまで変えさせることは出来ないんだから」
そのルーカスの言葉に、リヴァイは納得しないながらも頷いた。
……頑固者め。
ルーカスがそんな風に思っていると、シエロがルーカスの腕を引いて呼んだ。
「どうしたんだい?」
「俺のせいで、カエルムとスカイまで殺されるの……? あんたは、これから先の話をするけど、俺達……」
シエロは酷く暗い表情でルーカスにそう言う。
「言ったでしょう? 君達のこれからの道は3つだと。孤児院に入るか市井で暮らすか、僕の諜報員になるか」
「けど……死ぬ道もあるんでしょ……?」
「……殿下が3つだと仰るならば、他の道は絶対に存在しない」
シエロの不安そうな問いかけに答えたのは、予想外にリヴァイだった。それにルーカスは少し驚きながらもシエロの頭を優しく撫でた。
「僕の側近は、僕の言うことを絶対に疑わないんだ。こちらが心配になるくらいにね。君達も、少しだけ僕を信じてくれないかい?」
シエロは口をぎゅっと閉じると、少し嬉しそうな表情で頷いた。
「ルーカス殿下、陛下がお呼びです」
騎士の報告が終わったようでセバスがルーカス達を呼びに来た。
「カエルム、シエロ、スカイ、これから僕や父様は君達が傷つく事を言うかもしれない。けれど絶対に興奮することも声を上げることも許さない。分かったかい?」
「「「分かった」」」
「ありがとう。では父様を説得しに行こうか」
そう言いルーカス達は部屋を出てアーサーの執務室へと向かったのだった。
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