77 / 105
高等部編
17
しおりを挟む宝石店を出ると、ルーカス達は食事を取る為に予約していたレストランへ向かった。
店員に案内され席に着くと、リヴァイが神妙な面持ちで口を開く。
「オークションへ、行かれるのですか?」
「今日来るのかは分からないけれどね。付き合ってくれるかい?」
「「「無論でございます」」」
3人は真剣な表情で返答する。
「ではキャシー、父様には事の顛末の、プレストン伯爵にはひと月以内に他国の商団と、それの入国審査を行った門兵らの調査を行うよう伝言を頼めるかい」
「かしこまりました」
キャサリンが魔力を動かすとルーカスは集中し彼らの気配をだどった。そして彼らを見つけるとキャサリンが伝言を行った。
そして食事が届くと楽しくディナーを取った。
食事が終わり店を出ると、ルーカス達はオークション会場へと歩き出す。
「ルーカス殿下、念の為髪と瞳のお色を変えた方が良いのではないでしょうか?」
「他国の者なのでお顔は知らないでしょうが、ルーカス殿下のお色は国内の者に知れ渡っておりますから、警戒されるといけません」
「それもそうだね」
ルーカスは髪色と瞳の色を黒く染める。そして髪紐を解くと、服の下に隠れた首に巻いている黒のリボンを外して肩あたりで髪を結い直した。
「待たせたね、行こうか」
オークション会場に着くと、疎らだが客足がある様で商人や貴族達が会場内に入っていく。
ルーカス達が会場前に着くと、受付けらしき者が話しかけてくる。
「本日は御参加か観賞、どちらになさいますか?」
「今日は観賞にしようかな」
そう言いルーカスがにこりと微笑むと、受付人は声を潜めて言う。
「((ヒソッ…本日は良い商品が3つも入っております。貴殿と其方のお方には是非とも……」
受付人はルーカスとリヴァイに視線を向けてにやりと微笑む。
「おや、それは惜しいことをする所だった。しかし彼は少々頭が固くてね。今日の参加は私だけにしよう」
「いえいえ、貴殿にご参加いただけるだけでも十分でございます。参加の方々は前の方へお座り下さい」
受付人は番号の書かれた札をひとつ手に取るとにこりと笑ってルーカスに差し出した。
それをルーカスもまた微笑み受け取るとリヴァイ達を連れ会場内へと足を進めた。
「どうやら黒髪が合図のようだね」
「ええ。しかし、他のムハンマドの方がいらした場合、どうするつもりなのでしょうか」
「オークションに足を運ばなくても、ムハンマドは直系やそれに近い親族には、良い物が入れば贔屓にしている商会側から声をかけてくる。それは皇家も侯爵家だって同じでしょう?」
「そういえば、親族からオークションの話など殆ど聞きませんね」
「加えて信頼関係のない他国の商団ならば尚のことだよ。あそこにしようか」
ルーカス達は真ん中辺りの端の席に着いた。
しばらくすると参加者が集まってきて、時間になるとオークションが始まった。ルーカスが当たりを見渡すと薄暗くてよく見えないが、黒髪の者も何名かいるようだ。
「まず初めは、こちらの商品です! ──……」
オークションが始まり随分と時間が経ったが、アクセサリー等ばかりで特に変わった様子はなかった。
「続いてはこちら! 東の国から持ち帰った、珍しい本です。何が書いているかは手に取ってからのお楽しみ!! 小金貨2枚からです!」
司会がそう言うと参加者が値段を上げていく。
「へぇ、読んでみたいね」
「では、買い落とされては?」
ルーカスが興味津々にそう言うと、アレイルが提案する。しかしルーカスは作ったような困り顔をして言った。
「ふふ、これから支払う相手が居なくなってしまうのにかい?」
「おや、それもそうですね」
それにアレイルも驚きの表情をして返した。
その後オークションが終盤に差し迫った頃、司会者が休憩を挟むと言い出した。
「第1幕はこれにて終了でございます! 第2幕は、ちょっぴり危険な品物の取引。法を犯す事を躊躇わない勇士達は是非ともご参加を!」
そう言い終えると司会者は天幕の裏へ姿を消した。
それを見ると、座席に座っていた殆どの者達が立ち上がり会場を後にする。
残ったのは、数名居た黒髪の者とその付き添い人や知り合い、そして度胸試しや興味本位の者達だけだった。
26
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる