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高等部編
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しおりを挟むセバス達が紅茶を入れ終えると、静まった部屋にルーカスの声が響く。
「君達がエリーを連れて来なかったのは、何の為だい?」
「何の、為……」
「彼女を守る為、失態を重ねない為、僕への申し訳なさ、他にも色々あるでしょう」
そのルーカスの言葉を聞き、3人は、目を見合せた。そして伯爵が決心したように口に出す。
「……全て、でございます。第3皇子殿下に対しこれ以上失礼が無いようにと、連れてくる事を断念しましたが、アンジェリーナや保身の為の思いがないかと言えば、嘘になります」
「……正直に答えるんだね?」
「嘘をついたところで、第3皇子殿下にはお見通しでございましょう」
ルーカスが嘘を見抜けることは周知の事実だ。伯爵は真摯な瞳でルーカスを見つめた。
「……そう、全て、ね。ならば尚のこと、エリーを切り捨てるべきだよ」
「「「っ、、!」」」
「それは……っ!」
「エリーは、貴族社会では生きられない」
ルーカスのその直球な言葉に、彼らは眉を寄せて目を逸らした。
アンジェリーナの噂は学園だけでなく、社交界にまで及んでいる。未熟な男子生徒は騙せても、円熟な大人達には一切通用しない。
彼らもわかっているのだろう。彼女と伯爵家の事を考えるのならば、どうするべきなのかを。
「こんな事があっても、君達がエリーを愛しているのは分かっている。だけど、それは家族だからであって、他人は違う。僕もそうだ」
「……重々、承知致しております」
「けどね、君達のことはそこそこ気に入っている」
「「「え……?」」」
突然のルーカスの言葉に、3人は、目を見開いて声を漏らした。
「代々忠実な臣下を排出し、当主も後継者も堅実で優秀となれば、好感を持つのは当たり前でしょう? 加えて君達は慈悲深い。罪を犯した身内を簡単に切り捨てることはせず、共に償う道を選んだ」
「その様に評価して頂き、光栄にございます。しかし、我々は第3皇子殿下からそのようなお言葉を頂ける身ではございません……」
「おまけに謙虚とくる。……僕は、君達がこのままエリーと共に廃退していくことが酷く惜しいと感じる」
ルーカスが伯爵の目を真っ直ぐ見て言うと、伯爵は口を噤んだ。しかしルーカスはそれを気にせずそのまま続ける。
「エリーを、修道院に送りなさい。領地の修道院ならば面会も出来る」
「っ、そ、れは……ご命令、でしょうか……?」
「君達が、自分達で決めないのならば、そうなるだろうね」
その言葉を聞き、3人は、目を見合せた。そして、少し考え込む姿を見せると、決心したようにルーカスを見る。
「アンジェリーナを、領地にある修道院へ送ることに致します。娘が御無礼を働き、誠に申し訳ございませんでした」
「君達からの謝罪は受け取った。これ以上頭を下げる必要は無い。それから、領地を持つ貴族が、そう何度も頭を下げてはいけない。付け込まれれば領民にまで被害が及ぶ」
「っ、承知致しました」
アンジェリーナの処遇が決まり、ようやく謝罪が終わる。するとコールマン伯爵は椅子から下りるとルーカスに向けて跪き、真剣な表情をして告げた。
「第3皇子殿下、今件は、学園内で起きたものの為、ご慈悲を頂いたことは重々承知しております」
本来ならば、皇族への暴力未遂は謹慎などでは済まされない。しかし学園で起きた事のため、罰が緩和された。にもかかわらず、謹慎後直ぐに、ストーキングの様な行為を行ったアンジェリーナは、とっくに処刑されていてもおかしくはなかった。
「私はアンジェリーナの対処を終えた後、後継者であるエイダンに爵位を譲るつもりです。その為、殿下の決定に異を唱える行為となってしまいますが、どうぞこの身を思うままにお使い下さいませ」
「……それは、僕に忠誠を誓うという意味かい?」
「はい」
その返答を聞き、ルーカスは頭を抱えた。
「はあ、、どうせ断っても意思は変わらないのでしょう?」
コールマン伯爵は真摯にルーカスを見つめる。
「……君の忠誠はありがたく貰っておく。けれど、あくまで君個人からのもので、コールマン家からのものではないと認識しておく。もしも、国を分裂させるような事をすれば、容赦はしない」
「第3皇子殿下のお考えを裏切るような真似はしないと、国神ルミナス様へ誓います」
「うん。ではもう終わり。エリーの件が終わるまで連絡は取らない。全て終わってから、始めよう」
「「「はい」」」
そう言うとルーカスは側近達を連れ部屋を後にした。
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