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高等部編
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しおりを挟む翌朝、ルーカスは卯の刻に目を覚ますと、夜の間の記憶が頭に流れ酷い頭痛に襲われる。
頭痛い。……あれ?
しかしいつもならば既に起きているリヴァイが、自身の横でぐっすりと眠っているのを見て頭痛による鈍い思考と機嫌の悪さが一気に吹き飛んだ。
ふふふ、リヴの寝顔を見るの、久しぶりだ。
ルーカスはそう嬉しく思いながらも、リヴァイの体を揺さぶり起こした。
「リヴ、剣の鍛錬、今日はもう良いのかい?」
「……剣、、起き、る……」
するとリヴァイは少し目を開け、寝惚けたようにそう言った。そして少しすると、眠気に勝ったのかゆっくりと体を起こしてルーカスの方を見た。
「……おはようございます。体の調子はどうですか?」
「ふふ、それは僕の台詞。体は辛くないかい? 今日は鍛錬は休んではどうかな?」
「いえ、殿下がよろしいのでしたら、鍛錬に行きます」
「そうかい? では、支度をしてくるよ。君もゆっくりで構わないからね」
そう言いルーカスはベッドから降りると洗面台に向かっていった。
リヴァイは毎朝欠かさず、寮や屋敷の庭などで剣術の鍛錬を行っている。そして学園にいる間、最近はルーカスも一緒に朝早くに鍛錬を行っていたのだった。
それから1週間が経った頃、ルーカスの元に一通の手紙が届いた。コールマン伯爵からの返事の様で、ルーカスは引き出しからペーパーナイフを取り出すと手紙を開けて読む。
「……。リヴ、来週の土の曜日は予定を空けておいてくれるかい。コールマン伯爵がこちらに来る」
「畏まりました。エイルとキャシーにも伝えておきます」
「うん。申の刻に会うからそれまでに城の僕の部屋に来て」
手紙は丹精に書かれた謝罪文と、1度直接会って謝罪をしたいという内容だった。
それからまた2週間が経った。ルーカスが皇城の自室で本を読んでいると、扉を叩く音が響いた。
「ルーカス殿下、ノア様方がいらっしゃいました」
側近達を案内したモニカが、部屋の扉を叩きそう言う。
それを聞いたルーカスは本を閉じローブを手に取ると扉を開けた。
「コールマン伯爵家の方々は既に到着しております」
「そう、行こうか」
コールマン伯爵達がいる部屋へモニカに案内され、ルーカスが扉を開けた。
部屋の中には、コールマン伯爵夫妻とその嫡男であるエイダン、そしてセバスがいる。
ルーカスの姿を見ると、4人がルーカスへ頭を下げる。
「セバスが給仕をしたのかい?」
テーブルの上には、伯爵夫妻とエイダンの分の紅茶が置かれている。しかし彼らはそれには一切手を付けないどころか、椅子にすら座らずにルーカスを待っていたようだ。
「陛下より謝罪を見守るように命じられましたので、私が給仕をさせて頂きました」
「この後はモニカに任せて他の者は下がらせようと思ったのだけど、父様から言われたのならば仕方がないね。モニカ、セバスを手伝ってくれるかい」
「かしこまりました」
ルーカスがそう言うと、モニカはルーカスの後ろからセバスの隣へと移動した。
そしてルーカスは、コールマン家の者達へ冷ややかな瞳を向ける。
「エリーは?」
「っ、今日は来ておりません……」
「なぜ?」
ルーカスは尚も頭を下げたままの彼らに向かい、端的に冷たく問いかける。
「……言葉だけの謝罪で、一向に反省の色を見せない娘を、第3皇子殿下の前に出しては、何を仕出かすのか検討も付かないためでございます」
「つまり、エリーは皇族に対し無礼を働いたにもかかわらず、一切反省していないと?」
「っ、、! おっしゃる通りでございます……」
3人は、酷く申し訳の立たない表情で頭を下げ続けた。
「ならばこれは、何の為の謝罪なんだい? 当人の反省がない謝罪に、なんの意味がある?」
「「「申し訳ございません……!!」」」
さらに深く頭を下げ、彼らは謝罪を口にした。それを見てルーカスは、頭を抱えて大きなため息を吐く。
「君達の謝罪はもう良い。席に座りなさい。セバス、お茶を入れて。彼らの分も新しい物にして」
「い、いえ……! 我々はこちらで……!」
「セバス」
「畏まりました」
ルーカスの言葉を聞くと、セバスとモニカは彼らの席に置かれたカップを下げて、新しい紅茶を入れる。
ルーカスは席に座ると彼らに目線をやり、早く座るようにと促した。そして3人は、渋々席に着いたのだった。
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