転生皇子の新生活 高等部編

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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高等部編

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「テオ殿下!!」

「テオ殿下?」

「テオ殿下ー」


 それからひと月が経った。ルーカスは生徒会の仕事を終え、寮の部屋に戻って来ると、酷く疲れた様子でため息を吐く。


「……はあ、、、。彼女、トレヴァーよりもしつこいのだけど……。いっそ聞き入れた方が楽だと思うくらいだよ」


「……私から話しかけぬ様申しましょうか?」


「それはだめだよ。彼女の思考回路は狂っているからね。どんな方向へ湾曲して捉えられるか分からない」


「……では、そろそろ書簡を出しても良いのでは?」


 ルーカスの言葉にリヴァイはやきもきしながら提案した。


「……そうだね。ひと月我慢したんだから出しても構わないか。コールマン伯爵夫妻とその後継は厳格な人柄だから、余計に惜しいよ」


「コールマンは皆で償っていくつもりでしょう」


「そうだね。いっそ彼女を突き放してくれれば、国として1番利益があるんだけど」


 けれど彼らはそうしない。ひどく厳格で、真面目で頑固な人格者だから。


「……先に書簡を書いてくる。食堂へ向かう前に出しに行くよ」


「はい。お供致します」


 ルーカスは机に向かうと、便箋を取り出しコールマン伯爵に向けての書簡を記した。そしてアレイルとキャサリンを部屋に呼び、4人で部屋を出ると、寮の管理人に直ぐに届けるよう書簡を預け食堂へ向かった。


 食堂へ着くと、1部に人集りが出来ている。

 それを目にすると、ルーカスは軽く目を細め訝しげに思う。
 人集りの中心にはルーカスを悩ませる元凶であるアンジェリーナがおり、彼女を男子生徒達が取り囲んでいた。


 ……どうして今日に限って同じ時間なんだい。


「隅の席が空いた。あそこへ座ろう」


「畏まりました」


 ルーカス達は食事を受け取ると空いたばかりである端の方の席に着いた。

 そして4人が食事を取っていると、アンジェリーナを取り囲む男子生徒達がこちらをちらちらと見ている。
 その視線に含まれる感情は、怒りや嫌悪などの負のものである。


 ルーカスの正面に座っているアレイルとキャサリンが、その不躾な視線に気付くと鋭い視線で彼らを睨み付けた。


「とても居心地が悪いわね」


「ああ、食事が不味くなりそうだな」


 2人の鋭い視線に、男子生徒達は慌てて顔を背けた。


 ……2人の言うように、本当に食欲がなくなってきた。


 ルーカスの手の進みが遅くなりながらも、4人は食事を進めていった。そしてリヴァイ達が殆ど食べ終えた頃に、ルーカス達の元へ、食事を終えたらしいアンジェリーナが近付いてきた。


「テオ殿下……」


「殿下は今お食事中だ」


 リヴァイが低い声でそう言うと、アンジェリーナは彼の方へ体を向けた。


「ではノア様に。その、以前は気分を害させてしまって申し訳ございませんでした……!」


 そう言いアンジェリーナはリヴァイに向けて低く頭を下げた。
 そしてそれを見守っていた男子生徒達が胸をなで下ろした様子でこちらに近づいてくる。


 しかしその謝罪に対し、ルーカス達は彼女に酷く冷たい視線を向けた。


「いつだ」


「えっ?」


「いつの話の事かと聞いている」


 リヴァイは嫌悪した様子でそう尋ねたが、何を勘違いしたのか、アンジェリーナや男子生徒達は嬉しそうに口角を緩めた。


「アンジェリーナ様、私の言った通りでしょう? ノア様もテオ殿下ももう怒っていないみたいです」


「もう3年前に終わった事だったんですよ!」


 その発言と嬉しそうな表情に、リヴァイはさらに怒りを含んだ視線を彼女達に送る。


 ……呆れた。


 そしてリヴァイが何かを口に出そうとした時、ルーカスが食事の残った食器をリヴァイの前へ持ってきた。


「リヴ、僕もうお腹いっぱい」


「っ、、ふぅ……。頂戴致します」


 ルーカスの行動と言葉に、リヴァイは息を吐き落ち着いた。
 しかし今度は、アンジェリーナ達が信じられないものを見るかのように目を見開いている。


「……ノア様は使用人ではありませんよ?」


「そうですよ。貴族に残り物を食べさせるのは、はしたない事だと……」


 貴族は食事の際、テーブルの上に様々な料理が並べられる。食べ切れなかった残りのものは使用人達に下げ渡される。

 その為ルーカスがした行いに、リヴァイを侮辱していると捉え、行儀が悪いと言う。


「皇城の使用人は貴族の子息令嬢だ。分家、直系問わず志願する程の誉」


「そのようなことも知らない世間知らずな貴女方ごときが、ルーカス殿下に対し苦言を呈されたのですか?」


「さっき貴方達は許されたように喜んでいたみたいだけど、勘違いも甚だしいわ。リヴの言ういつは、どの無礼に対する謝罪かという意味よ」


「ルーカス殿下のお食事の邪魔ですので、そろそろ失せてくださいますか?」


 最後の丁寧ながらも怒りを多く含んだアレイルの言葉に、アンジェリーナ達は顔を真っ赤にしてそそくさと帰って行った。


 管理人の元へ戻る必要は無いみたいだね。




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