転生皇子の新生活 高等部編

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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中等部4年編

51 sideリヴァイ

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 その後少しすると、執務室の扉が叩かれた。


「リヴァイ・ノア・ムハンマド。ただいま戻りました」


「入れ」


「失礼致します」


 アーサーの許可にリヴァイが執務室へ入ると、その剣幕にアーサー達は少し驚いた顔をする。


「学園長との抗議で何かあったのか?」


「っ、いえ、申し訳ございません。私情を持ち込みました」


 怪訝そうなアーサーの問いかけに、リヴァイははっとすると、すぐに気持ちを切り替えたようにいつもの表情の読めない顔に戻った。


「報告します……──」




「こちらの要求は全て呑む、か」


「学園長の生家は中立派でありながらも、皇室に対する忠誠心は、マカイラに次ぐほどのものですから」


「加えて陛下の要求はごもっとも。彼女が呑まない理由がありましょうか」


 やけに簡単に頷くため怪しく思ったが、父上とお祖父様の仰る通りあの者の家柄を見れば明らかだ。


「そうだな。疑り過ぎもいかん。ルーカス程の心眼があれば、疑り過ぎることも少ないのだろうな」


「ほほう。流石は親子でございます。以前エドワード殿下も同じ事を仰っておられました」


 微笑ましそうに笑いそう言ったセバスに、アーサーは意外そうな目を向けた。


「エドワードがか? あの子も充分過ぎる心眼を持っているだろう」


「ええ。エドワード殿下も優れた心眼をお持ちですが、だからこそ、群を抜いているルーカス殿下の心眼に惹かれてしまわれるのでしょう」


「なるほど。確かにルーカスのものは人間のそれとは全くの別物だろう。恐らくは、この世の全てを見透かす、神々のそれだ」


 ルーカスは音の魔法による嘘を見つける魔法が使える。その確実性のある魔法が使えるだけでも突出していることだ。
 しかしルーカスはその魔法を使わずとも、自身の心眼のみで違うこと無く真偽を見抜けてしまうのだ。

 そしてそれを確かめる為でなく皆に信じさせる為に魔法を使う。


「……殿下の心眼は、羨む程のものですが、苦労をなさっている事も忘れないで頂きたく思います」


「おい、リヴァイ。口が過ぎるぞ」


「いや、ノアは私よりもルーカスといる時間が長い。あの子がどれだけ苦労しているのか、よく分かっているのだろう」


「ノア様のおっしゃる通りでございます。大きな力は時に災いを呼ぶ事も、お忘れなきようお願い致します、アーサー陛下」


 セバスが諭すような、真剣な表情でそう言うと、アーサーは少しだけ嬉しそうに口角を上げて頷いた。


「にしても、ノア。お前は私に苦言を呈す肝を持つくせに、ルーカスに対しては臆病で困る」


 アーサーの困った表情に、リヴァイは少し慌てる。


「っ、決して陛下を侮っている訳では……、、」


「お前が皇室に敬意を払い尊重している事は充分分かっている。だが他人や物事に怖気付くタイプでは無いだろ。ルーカスを大切にしているのは分かるが、もう少し信用してやれ。離れた場所で大事にし過ぎると、伝わらず逃げられてしまうぞ」


 殿下が、私から逃げるだと……?


「っ……リヴァイ、なんて顔しているんだ」


「っ!! も、申し訳ございません、、」


「はっ、物凄い独占欲だな。だがなぜ謝る。それをルーカスが許したのだろう。それをお前が、許さぬ道理があるのか?」


 ゾクリ……


「いいえ、ございません」


 リヴァイはアーサーに跪き彼の目を真摯に見つめてそう答える。
 その様子を見ていたフレデリックは、大きなため息を吐いて頭を抱え、アルフィーは少し困った表情で眉を上げた。


「……リヴァイ、お前は次期宰相だろう」


「私は、殿下の側近でございます」


 その言葉を聞きフレデリックはまたもや頭を抱えた。


 跪く際は、頭を垂れるか、視線を下に外すのが主君に対する礼儀だ。しかしリヴァイは跪きはしたものの、頭を垂れる事はしなかった。そしてアーサーの、ルーカスの言葉を無視する気か、と言う言及に対し、アーサーの目を見てはっきりと断った。

 それは跪く行為はアーサーに対するものではなく、ルーカスの言葉に対してだと言うことを表している。


「ならば何故、お前は今、ルーカスを避けておるのだ。主を護る側近が、主を避けていてどうする」


「主君に対し、危害を加える不届き者が、私であるからにございます」


「ほぅ? その危害とは何のことだ?」


 アーサーは白々しくリヴァイに尋ねた。


「……殿下に無理強いをし、人前であの方を辱める行為です」


「そうか。ならばやはり、私にはお前が全面的にルーカスを避ける理由が全く分からぬ。前者は本人が許し、後者は人目につかねば良い事だろう」


「それは……」


「ルーカスの寝室には専属の者か、あの子が許可した者以外は入れん。そして今日は専属の者には部屋に一切近付かぬよう命令を下したのだが……」


 その言葉にリヴァイだけでなくフレデリックとアルフィー、セバスも意外なものを見るように目を見開いた。


「それでも尚、訪ねに行く事が出来ぬ理由があるとなれば、それはお前があの子を信用出来ていない証拠であろう」


 アーサーの言葉を聞くと、リヴァイは勢い良く立ち上がった。


「陛下、私はこれで失礼致します」


「……ああ、行ってこい」


 リヴァイは急いで執務室を後にする。


「結婚は反対じゃなかったのか、アース」


「……昔の話だ」





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