転生皇子の新生活 高等部編

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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中等部4年編

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 翌朝、ルーカスは重い瞼をゆっくりと開いて起床する。


 ……体全体が重い。精力剤のせいで体に熱が籠っていたとはいえ、精通して間もなく3回もイかされるなんて……。


「おはようございます、殿下」


 朝の支度を終わらせたリヴァイが起きたルーカスに気付き近付いてきた。


「ん~、おはよぉ~。もう支度を終えたのかい?」


「辰の刻を過ぎておりますので」


「え、もうそんな時間かい? 起こしてくれたら良かったのに」


「ぐっすりと眠っておられましたので。加えて、疲れで体も重いでしょうから」


「……君のせいだと思うのだけど」


 何だか満悦な顔をしている。まあ、リヴが嬉しいならそれで良いか。


 ルーカスがじとりとした目でリヴァイを見ると、リヴァイは少し満足気な表情になった。


「申し訳ございません」


「体がベトベトするから湯浴みをしてくるよ」


「あ、、は、い……」


 ん? なにか気になることでもあるのかな?


 そう言ってルーカスは着替えを持つと、肌着姿のまま浴室へと向かっていった。


 脱衣所に着くと、ルーカスは着替えをカゴに入れて肌着を脱いだ。すると自身の体の状態を目の当たりにし、ルーカスは酷く驚愕する。


「えっ……?」


 な、にこれ……。身体中噛み跡と鬱血痕だらけだ……。


 ルーカスの体には首筋からつま先まで、数え切れない程の鬱血痕と噛み跡がついている。


 なんだか、むずむずした気持ちになる。




 湯浴みを終え支度を済ませると、アレイル達と共に、教室へと向かった。


「よお、ルーカス。なんか元気なくねぇか?」


「確かに、何処か疲れている様子ですね」


 教室へ到着すると、いつもの様にすぐに友人達がルーカスの元へ集まった。
 するとフランクがルーカスをじっと観察するように見つめてそう言い、ギャレットも心配そうに言った。


「ん? そうかな?」


 しかしルーカスは疲れているという感覚がないのか、全く心当たりのない様子で返す。


「体調が悪いという訳では無いのですね」


「なら、夜更かしでもされましたか?」


 ああ、夜更かし……。それ程疲れて見えるのかな。


「……そうだね。昨夜は寝るのが遅くなったからそのせいだと思うよ。だから心配しないで?」


 ルーカスがそう言うと、皆はとても心配しながら顔を見合せた。するとマルセルが面倒そうに頭を搔いて言い出した。


「どうせ暗いとこで本でも読んでたんだろ? 今日から休みに入んだから夜くらいちゃんと寝ろよな」


「、どうしても読みたくてつい。今度からは気を付けるよ」


 マルセルの言葉にルーカスが乗っかると、皆は安心した様にほっとした。


「おら~、お前らそろそろ席つけ~」


 すると丁度イライアス先生が教室へ入って来て座るように皆を促した。そのためフランク達も急いで席に戻っていく。
 するとマルセルがルーカスに近づいてきて小声で言った。


「お前、首元ちゃんとボタン閉めとけよ。まあ、見せびらかしてぇっつうんなら別にいいけどな」


 見せびらかす……? っ、もしかして……!


 ルーカスは耳を少しだけ赤くし、慌てて首筋に触れた。


「ど、何処に付いてる……?」


「やっぱ気付いてなかったのか。オリエンテーションの時も慌てて逃げてたもんな。左の後ろの方。他の奴らは気付いてねぇみたいだぞ」


 いつの間にこんな所に……、つけられた覚えないのに……、、


 ルーカスはボタンを閉めるとリヴァイをじっと睨んだ。するとリヴァイは後ろめたそうにルーカスの視線から逃げる。


 昨夜、ルーカスが達した後、疲れで意識が朦朧としている時に、リヴァイはルーカスの首筋へ鬱血痕を付けていた。
 眠っていた訳では無いため、朝起きた際に記憶として流れてくる事はなかったようだ。


「ほら~、ロニー、テオ、席つけよ~」


 イライアス先生の催促に、ルーカスはリヴァイを問い詰めること無く、少しムスッとした様子で席に着いた。そしてマルセルも急いで席に戻る。


 今朝は殆ど鏡を見ていなかったから、全く気付かなかった。けど、リヴも、エイルとキャシーも、気付いた様子だったのに。


 ルーカスは何も言わなかったリヴァイ、アレイル、キャサリンの3人に、少し腹を立てている。


 今朝、アレイルとキャサリンはルーカス達の部屋へ行く際に昨日の2人の様子を心配していた。

 しかし部屋に着いてみれば、ルーカスとリヴァイの様子はいつも通りで、少し拍子抜けする。そして直ぐに、ルーカスの首筋に鬱血痕が付いていることに気がついた。


 (昨夜は話し合いができたようだな)


 その為すぐに2人は、ルーカスに鬱血痕が付いている事を伝えようとしたが、それに気付いたリヴァイが2人を鋭い視線で睨み付けた。


 (言うなって? 後でルーカス殿下に叱られても知らないわよ。ウィリアム殿下にも叱られそうね)


 アレイルとキャサリンはリヴァイのその様子に呆れたようにため息を吐いたのだった。




「じゃ~移動すんぞ~」


 イライアス先生が講堂へ移動する合図を送ると、皆は一斉に立ち上がり教室を出た。
 すぐにルーカスの元へリヴァイ達が近付いてくる。

 しかしルーカスは沈黙を貫いている。


「……殿下は、跡を見られるのが嫌、ですか?」


 リヴァイが小さな声でそう質問すると、アレイルとキャサリンは2人から少しの距離を取った。
 ルーカスも周りに聞こえないように音を遮る結界を張る。


「……やだ。けれどリヴは違うんでしょう?」


「私は、貴方が私のものであるという証を見せつけてやりたいです。貴方の恥ずかしがる姿を誰にも見せたくありません。ですが、私のせいで恥ずかしがる姿を、見せつけてやりたいとも思います」


「……前回も言ったけど、僕は友人には見られたくない。家族は良いんだ。エイルや、他の側近たちも、ずっと一緒に居て、家族のような存在だから。彼らには、何でも話せる。けれど、友人達にだけは、絶対に嫌だ」


 ルーカスは眉を顰めて気持ちを口に出した。


「だから、友人達の居る時に、見える所に付けるのは辞めて欲しい……。それ以外ならば、別に、構わないから」


 ルーカスはそう言って困り眉でリヴァイの顔を見上げた。するとリヴァイは少し驚いた後、真剣な表情をして言う。


「殿下のお気持ちを考えず、身勝手な行動を致しました。誠に申し訳ございません」


「良いよ。君が嫉妬深いことも、僕の事が大好きで仕方がないことも、全部、分かっているから……」


 ルーカスはそう言いながら、少し恥ずかしそうに頬を染めた。その様子に、リヴァイは先程よりも強く罪悪感が湧いてきた。


「前回の殿下のお言葉を無視した事も、本当に申し訳ございません。今後、殿下が嫌がることをしないと、お約束いたします。
それから、昨日は嫉妬に狂い我を忘れ、殿下のお言葉を遮り、怒鳴りつける様な真似をしてしまいました。続け様に、大変申し訳ございませんでした」


 リヴァイは立ち止まると、ルーカスに向けてこれ以上ないほど低く頭を下げて謝罪を述べた。


「ふふ、今頃罪悪感が芽生えたのかい? 昨夜は随分と楽しそうにしていたけれど」


 ルーカスが片眉を上げて冗談を言うと、リヴァイは申し訳なさそうな表情をして、低い姿勢のまま、また謝罪の言葉を述べようとした。しかしそれをルーカスが彼の名を呼び制止する。


 そしてルーカスはリヴァイの頬に手を当てた。


「申し訳ないと思うのならば、君に罰を与えようか」


 そう言いルーカスは、新たに視界を遮る結界を張ると、低い姿勢のリヴァイの首元に顔を近ずけ、そのままがぶりと噛み付いた。


「っ、、!」


 リヴァイの首筋には、くっきりとルーカスの噛んだ後が残っている。


「隠すことは許さないよ。皆に見られて、恥ずかしさを感じてみなさい。それが君に与える罰だ」


 しかしリヴァイは困ったようにルーカスに言う。


「それでは、意味が有りません……。殿下、私は貴方と接する際以外に、恥ずかしいという感情を抱いたことがございません。この罰も、私にとっては嬉しいものに変わってしまいます。どうか、他の罰をお与え下さい……」


 そのリヴァイの言葉に、ルーカスは呆気に取られた。そしてリヴァイのあまりにも真剣な表情で、誠困り果てた表情で告げる様子に、ルーカスは声を上げて笑い出す。


「あはは!! そんな困った顔をしないでよ。君に罰を与えるのはよそうか。怒りなど吹っ飛んで、とても気分が良い」


「しかしそれでは……!」


「リヴ、愛しているよ」


 ルーカスはリヴァイの言葉を遮り、これに愛の言葉を告げた。するとリヴァイは、驚き困った様子で考え込んだ後口を開く。


「…………私も、愛しております」


 その言葉に、ルーカスは酷く満足した様子で講堂への道を歩き出したのだった。





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