33 / 105
中等部4年編
28
しおりを挟む「テオ殿下、申し訳ございません。想像以上に材料集めに時間が掛かってしまいお渡しするのが遅くなってしまいました」
あれからひと月と少し経ち、3の月28の日、ルーカスが授業を終えてムハンマドの別邸に帰ると、メディソンがルーカスの部屋へ精力剤を持ってやってきた。
「いや、突然頼んだのはこちらだからね。ありがとう」
「この薬は効果がとても強いので、ご使用する際はお気をつけ下さい」
精力剤はいくつかの小瓶の中に分けて入れられている。1度の使用で小瓶1つが目安だそうだ。
「目安はあくまで目安です。人によって効果の出る分量が変わってきます。1瓶も飲めない方もいれば、足りない方もおられます。なので少しずつお飲み下さい」
「足りなかった者は2瓶目も開けるのかい?」
「はい。ですが、これまでの記録上、どんな方でも3瓶までで効果が現れました。3瓶飲んでも効果が現れなかった場合は……」
「僕には精力剤が効かないという事だね。分かった。3瓶以上飲むことはしないから、安心して」
ルーカスの言葉を信用し、メディソンは真剣な表情で頷くと部屋を後にした。
3瓶か……。
ルーカスは精力剤の小瓶の入った箱を見て少し不安そうな表情をする。
もうすぐテストと剣術大会がある。一先ずこれは亜空間に閉まっておこう。
ルーカスはリヴァイに知られないよう、精力剤を亜空間に入れ厳重に保管した。
それからルーカスは3週間後のテストに向けて友人達と勉学に励み、リヴァイに剣術の鍛錬にも付き合ってもらい過ごす。
「おい、テオ。これどうやって解くんだよ」
「問題、難しくなり過ぎだよな~」
「ふふふ、ルーが簡単に満点を取ってしまうので、教員の方々は躍起になっておられるのでしょうね」
「ルナも歴代の最高得点を楽々と超えてんだろ」
ルーカスの演技が終わり、外でのソフィアとの距離感も気にする必要が無くなった。その為ルーカスとソフィアはもちろんの事、フランク達やソフィアやナタリー達の距離感もぐんと近くなっていた。
「あら、そんなことはございませんわ。お兄様達の点数を超えるのにはいつも苦労しておりますもの。ルーが教えてくれるおかげでなんとか越えられているのですよ」
「ほんとかよ」
ソフィアの言葉に、フランクは疑わしげにそう言った。
「そういや、エラ皇女も毎回首席なんだろ? 5人もいて全員優秀で仲も良いし、今世代の皇子皇女は規格外だって父上達が驚いてたぞ」
「ふふふ、リリーは自慢の妹だからね」
「ええ、凄く可愛くて賢くて私達の天使ですから」
フランクが驚きながら言うと、ルーカスとソフィアのシスコンぶりに皆は少し苦笑いをしたのだった。
そしてテスト当日の4の月17の日の朝、ルーカスは学園に行く準備をする。
「本日は座学のテストですので、私達は別室で待機しております。ですが、何かあれば直ぐに駆け付けますのでご安心下さい」
座学のテストの日は、不正防止の為側近達は別室で待機となる。ルーカスはキャサリンの共鳴の魔法で常に連絡を取れるようにしているが、この日だけはそれも解除することになっている。
その為リヴァイは毎度酷く心配そうな表情でルーカスを案じている。
「安心して、リヴ。何かあればこちらで対処するから。それに君達も直ぐに来てくれると信じているから。大丈夫、今回も何も起こらないよ」
「……はい。応援しております」
「うん、ありがとう。リヴ、愛しているよ」
「私も、愛しております」
リヴァイの返答に、ルーカスは嬉しそうに微笑んだ。
その後2日間のテストは無事何事もなく終了した。19の日にはテストの結果が掲示されていた。
「流石です、ルーカス様!」
「ルーカスはまた満点かよ」
「ヨハン達もまた点数が伸びたね」
掲示板を見ると、ヨハンが嬉しそうにし、フランクが驚き疲れたようにそう言った。
「殿下、おめでとうございます」
「ありがとう、リヴ。そうだ、君から何かご褒美が欲しいな」
「ご褒美、ですか……?」
「うん」
ルーカスが少し悪戯な笑みでそう言うと、リヴァイは戸惑いながら考えた。
ふふふ、何をくれるかな。剣術の相手かな、それともハグやキスかな。
ルーカスはわくわくしながら期待の眼差しでリヴァイを見つめた。
するとリヴァイはルーカスに向けて手を伸ばした。
「……流石です、殿下」
そう言ってリヴァイはルーカスの頭をぽんぽんと撫でた。その行動にルーカスは目を見開き驚いて、呆然とする。
「、すみません。やはりこんなものではご褒美には……」
「あぁ、どうして君は、こんなにも可愛いんだい?」
ルーカスは引こうとするリヴァイの腕を掴む。そしてこれでもかと言うほどに口角を上げ、ギラついた瞳でリヴァイを見つめそう言った。するとリヴァイはその瞳に囚われたように、動けなくなってしまう。
頭を撫でる行為は、よくルーカスがリリアンやレイア、そして後輩達を褒める時にやっている。そしてリヴァイの頭も良く撫でていた。
公爵子息のリヴァイの頭を撫でる者など、ルーカスくらいのはず。両親や祖父母達も彼を褒める時は言葉でのみであった。
それでもルーカスへのご褒美に思い付いたのが、頭を撫でる事だということは、余程ルーカスに撫でてもらう事を嬉しく思っていたのだろう。
それに気付いたルーカスはどうしようも無いほどにリヴァイへの想いが溢れでた。
「ああ、リヴ。愛しているよ。今この瞬間、君をこの世で一番愛しているのは、絶対に僕だ」
そう言いルーカスはリヴァイに優しい口付けをした。
「……私も、貴方を、この世で一番愛している自信があります」
耳を真っ赤にして言うその返答に、ルーカスは心底満足そうな表情をリヴァイに向けた。
「はぁぁぁ、本当に見せつけてくれますね」
「ほんとよね。独り身の私達のことも考えてみて下さい」
アレイルとキャサリンが大変むず痒そうな表情で悪態を着いた。
「ふふふ、ごめんね。気持ちが溢れてしまったようだ。けれど今のは、あんなに可愛いことをしたリヴが悪いよ」
「ルーカス殿下、見てくださいよ。ネオやヒュー達が顔を真っ赤にして見ています」
「あのアールとロニーですら耳を赤くしているんですから」
ルーカスがそちらに目を向けると、ヨハン達4人は顔を真っ赤にし、フランクとマルセルも恥ずかしそうに顔を背けていた。
「ふふふ、君達は意外と恥ずかしがりなんだね」
「お前に羞恥心が無さすぎるだけだよ!」
ルーカスの言葉にマルセルが反撃すると、ヨハン達はこれでもかと言うほどに頷き同意した。
78
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる