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中等部4年編
22
しおりを挟むオリエンテーションから1週間が経ち、あっという間に弓術大会の前日がやってきた。
「殿下、明日は弓術大会で体も酷使致しますので、今日は早めにお休み下さい。昨夜もあまり寝ておられないでしょう……」
昨晩は水の曜日であったため、ルーカスとリヴァイは開発に勤しんでいた。その為夜遅くまで起きており、リヴァイは少し心配した様子でそう促した。
「……うん。そうだね」
ルーカスも眠気が来ている為、ベットを整え就寝の準備をする。そして整え終えるとリヴァイの唇に口付けをした。
「お休み、リヴ」
最近ルーカスは、眠りにつく前にリヴァイに口付けをするのに嵌っているらしい。そして屋敷に居る時はレイアの額にも同じようにキスをしてから部屋に戻っていた。
「……おやすみなさいませ」
リヴァイもそれに答えるようにルーカスの頬に口付けをし就寝の挨拶をする。
これはレイアにもキスをする事に嫉妬したリヴァイに、ルーカスが君もキスを返してくれれば良いと言った為、この流れが習慣となったのだった。
翌朝、目を覚ましたルーカス達は準備を整え会場へと向かった。
到着するとヨハン達が既に来ており、皆で会話をしていた。
「あれって確か、モル……だったか? 来てるぞ?」
「ん? ああ、コロン。どうしたんだい?」
ヘクターがルーカスにそう告げると、ルーカスも彼に気付いたようだ。とても緊張している様子のコロンに、ルーカスが問いかける。
「ああ、あの! 皇子様も大会に出られるんですよね?」
「そうだよ。今年からはエド兄さんが居ないからね」
皇族の男子は、誰か一人は必ず学園の大会を全種目出るという習わしがある。今まではエドワードがその役割を担っていたが、今年からはルーカスが担うことになった。と言ってもルーカスも一昨年から既に全種目出ていたのだが。
「そ、その……が、頑張ってください! 僕の応援なんて、完璧な皇子様には意味無いかもですが……。どうしても伝えたくて!」
「そんなことは無いよ。おかげで頑張れる。それに僕、弓は苦手なんだ」
「え……でも、いつも的のど真ん中に的中するって……」
「届けばね」
ルーカスの言葉にコロンは酷く混乱したように固まった。
「狙った所に当てるのは簡単なんだけど、力がなくて遠くの獲物まで届かせられないんだ。だから毎年ベスト32止まりだよ」
そう言って困った表情をするルーカスに、マルセルがため息をつく。
「お前なぁ、その狙う方に苦戦してる俺達に失礼だと思わねぇのかよ」
「……ごめん?」
そのルーカスの返答に、マルセルは一際大きなため息をついた。
「にしても、ルーカスって本当に筋肉つかねぇよな。背は165cm有るんだろ? 体重いくつだ?」
「47……?」
「「……は?」」
ルーカスが曖昧な様子で答えると、この場に居る全員が有り得ないという顔をして驚いている。
「お前、この前腹筋割れてるっつってたよな……?」
「え、うん……」
「嘘つけ!!」
突然大声を出してツッコミを入れたフランクに、ルーカスは少し驚き体をびくつかせた。
しかしフランクとマルセルは間髪入れずにルーカスにツッコミを入れ続ける。
「165cmで47kgしかねぇ奴が腹筋なんか割れねぇよ! 筋肉もねぇ!!」
「嘘だろ、俺らはこんなカリッカリっの奴に剣術も体術も負けてんのかよ……!!」
2人は嘆くように騒ぎだした。そしてそんな二人の物言いにルーカスは少しムスッとして言い返す。
「カリカリって……。君達こそ失礼だよ! 筋肉もついてきたし、腹筋だって割れてるよ」
「……私達はなぁ、70kgはある!! ノア様のあの超絶美ボディならば、85kgはある筈だ!!」
突然名前を出され褒められたリヴァイだが、二人の様子に少し呆れた状態だ。そして何故か予想が的中しているフランクにほんの少しの不気味さを感じる。
「なのに! 47kgのお前が割れてるなんてぜってぇ認めねぇ!!」
「2人とも増量頑張ってたもんねぇー」
フランクとマルセルは、ここ数年、本格的な体作りのために必死に体重を増やし、引き締めるを繰り返していた。その様子を近くで見ていたギャレットが呆れながらも褒めてやっている。
……言葉で言っても駄目なら。
「……ほら! 割れてい、る……」
ルーカスは拗ねたように唇をむっとさせ、証拠だと服をめくって皆に綺麗に線の入った腹筋を見せた。
しかしそれはリヴァイの必死の制止によって、1歩遅くもすぐ様に服を下げられた。
「っ、殿下! みだりに肌を露見させないでください!!」
わぁ、こんなに焦ったリヴを見るの久しぶりだな。
ルーカスが呑気にそんなふうに思っていると、マルセルとフランクが落胆したように地面に手を付いた。
「くそ、本当に割れてやがった……」
「しかも、なんかちょっとエロ、ぐはっ!! …………」
「ナイスだよ、アーウィン。私の拳も出るとこだった」
「アーウィン、今のは本当に良くやったぞ」
「不吉な予感がしたからな」
アーウィンの鋭い蹴りによって撃沈したフランクを、リヴァイは睨み殺さんとばかりに軽蔑の目で見ていた。
「むきになってつい。ごめんね、リヴ」
「……いえ」
「ごめんなさいね。変な所を見せて……モル?」
「えへへ、皇子様の腹筋とノア様からのバックハグを間近で……はっ!」
嬉しそうな目でルーカスとリヴァイ見ていたコロンは、我に返るとこちらをじっと見ているキャサリンにちらりと目を向けた。
「貴方、アリッサ達と同じ匂いがすると思っていたけどやっぱり……」
キャサリンが疑うような視線で彼を見つめると、コロンはキャサリンからすっと視線を逸らした。
「え、えっと、い、一体なんの事やら、ぼ、僕にはさっぱり……!」
酷くうろたえた様子で否定するコロンに、キャサリンは少し呆れながら苦笑いをする。
(この子、隠すの下手ね)
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