転生皇子の新生活 高等部編

𝐍 𝐢 𝐚🐾

文字の大きさ
上 下
25 / 105
中等部4年編

20

しおりを挟む


「改めて、リヴ、僕と最後のダンスを踊ってくれるかい?」


「ちょっ、そんな直接誘っていいんですか?」


 ルーカスがリヴァイをはっきりとした誘いでダンスに誘う。すると、直接的に誘う側は男性パートを踊る決まりがあるため、ギャビンは驚き、案じるようにそう尋ねた。


「構わないよ。既にリヴはに女性パートを覚えてくれたからね」


「……その割には、ノア様すげーびっくりしてますけど?」


 ギャビンは本当に大丈夫なのかと突っ込みたいのを押えて、何とか丁寧な言葉で尋ねる。


「あの、まだ完璧では御座いませんので……」


 そんなギャビンの努力は他所に、ルーカスとリヴァイの軽い押し問答が始まった。


「気にしないよ」


「間違えて足を踏む可能性も……」


「踏んでしまっても構わない」


「ですが……」


 リヴァイがあたふたとしながら断ろうとする様子に、1年生達は少し驚いた様子だ。


「((ヒソッ…あのノア様がこんなに狼狽えるなんて……」

「((ヒソッ…ああ、睨まれたらすげー怖ぇんだぞ」

「((ヒソッ…それは貴方の自業自得です」




「ね、踊ろう?」


「っ、分かりました」


「ありがとう。行こうか」


 ルーカスに根負けしたリヴァイが了承すると、ルーカスは心底嬉しそうに微笑みお礼を言った。そしてリヴァイに差し出した手が取られると、ルーカスは上機嫌で彼をエスコートしたのだった。


「ノア様の方が分かりやすく第3皇子様を好きだけど、第3皇子様も中々の愛よね」


「皇子殿下やノア様を好いている方々がお二人の関係は主従関係だと思い込もうとしているみたいですが……」


「絶対に無理があるだろうな」



 ルーカスとリヴァイが中央近くで踊っていると、他の生徒達は2人のパートを見て酷く驚いた様子でいる。


「ふふ、皆君のしなやかな踊りに見蕩れているね」


「強硬な踊りの間違いでしょう」


「いいや、とても上手だよ。だから……」


 ルーカスの足を踏まないようにと足元に注意が逸れるリヴァイに、ルーカスは彼の腰に回している手で引き寄せ言う。


「言ったでしょう? 僕の顔を見て」


「っ……」


 リヴァイはルーカスの言葉に少し恥ずかしそうにしながら、ゆっくりと彼と視線を交わらせた。


「良い子。君と踊れて、とても幸せだよ」


「私も、、とても幸せです」


「ふふふ、顔が赤くなっている。君は本当に恥ずかしがり屋だね?」


 少し頬を赤らめているリヴァイに、ルーカスは酷く幸せそうな満足した顔で揶揄った。するとリヴァイは少し拗ねた様子で言う。


「……貴方が恥ずかしがらな過ぎるだけです」


「ふふっ、可愛い」


「っ! また、その様な事を……」


 会場から歓声が上がる程の、愛おしそうにリヴァイを見つめるルーカスの視線に、リヴァイの心臓は物凄い勢いで跳ね上がったのだった。




 2人が最後のダンスを終えてアレイルとキャサリンの元へ戻ると、ヨハン達が彼らと一緒にいた。


「ルーカス様、ノア様、とても素敵なダンスでした!」


「ありがとう、ヨハン。君達も楽しめたかい?」


「はい。とても楽しい一日でした」


 ヨハンは充実したとても良い笑顔で答えた。


「それにしても、お前すげぇ視線集めてんな」


「ん?」


 マルセルが周りを見ながらそう言うと、ルーカスも不思議そうにしながら周りを見渡した。だがルーカスと目が会った瞬間、こちらを見ていた女子生徒達は慌てて視線を外したのだった。


 怖がられる様なことしたかな?


「ま、あんなエロい笑み見たら、刺激に体制のない令嬢達は一溜りもないよな」


「フランク、せめて妖艶と言ってくれ」


 フランクが笑いながら言うと、その直接的な表現にアーウィンが呆れて注意する。
 しかしそんな彼らを他所にルーカスは何のことを言っているのか検討が着いていない様子。

 そんな中、アレイルもその会話に参加した。


「ご令嬢方だけでなく、ここにも1人、ルーカス殿下の笑みを直接食らったものがおりますよ」


 そう言ってアレイルはリヴァイの方へ視線をやった。


「っ、エイル……」


「リヴ、僕、君達に何をしたんだい?」


「っ!?」


「リヴ、答えて差し上げたら?」


 ルーカスが少し不安そうに尋ねると、キャサリンも追撃する。するとリヴァイは耳を少し赤くして口篭りながら答えた。


「貴方の笑みに、見惚れていただけです」


「え?」


「口下手~」


「言葉足らず~」


 リヴァイの説明にルーカスが理解出来ずにいると、アレイルとキャサリンが揶揄する様にそう言った。そんな2人にリヴァイはきつく睨みを利かせるが、彼らはにこりと笑って躱した。
 その様子にヨハン達は苦笑いをしている。


(何の拷問だ……)


「ダンスの際に、殿下が笑いかけて下さった笑顔が、とても嬉しかったのです」


「僕の笑顔が……大丈夫? 顔が真っ赤だよ?」


 リヴァイが酷く恥ずかしそうに顔を赤く染めていると、ルーカスが心配したように言う。しかしリヴァイは限界か、ルーカスに八つ当たりするように言う。


「貴方も、情事の際に私の視線を躱そうとするでしょう! それと同じです」


「リヴの視線……」


 ルーカスは自身に触れている時のリヴァイの熱を持った視線を思い出し、頬を赤くする。


「……僕、そんなえっちな顔して君を見ていたの?」


「ルーカス殿下の顔が真っ赤になったわよ」


「ああ、一体どんな表情でリヴァイはルーカス殿下の事を見てるんだろうな?」


「黙れ!」


 揶揄い倒してくるキャサリンとアレイルに、リヴァイはいつも以上にきつく殺気を帯びた鋭い視線で睨み付けた。
 流石の2人も、そんなリヴァイの睨みに、揶揄い過ぎたと悪く思った。


「……ねえ、リヴは僕の笑顔好き?」


 そんな彼らを案じたのか否か、ルーカスはリヴァイにそう質問した。


「っ、はい……。好き、です」


「そっか……。ふふっ」


 リヴァイの返答を聞くと、ルーカスは幸せを噛み締めるように、少し俯いて酷く嬉しそうに笑みを浮かべた。


「テオ様って、ご自身の容姿の良さに興味なさそうだよね」


「同感だ」


 ギャレットとマルセルは少し呆れたようにそう言ったのだった。


「はあ、ちょっと揶揄い過ぎたかしらね」


「別にリヴを怒らせたいわけじゃなかったんだが、こうしないとあいつ素直にならないからな」


 キャサリンとアレイルは少し反省した様子でそう言った。


「お2人はテオ殿下とノア様を心から応援されてるのですね」


「友人だもの。でも、リヴァイの表情を読み取れるルーカス殿下なら、私達の助けもいらないのよ」


「まあ、あいつを揶揄うの、楽しくない訳じゃないし」


「……そうよね。凄く良い反応してくれるもの」


 そんな2人のやり取りに皆は苦笑いをし、リヴァイを不憫に思ったのだった。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...