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中等部4年編
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しおりを挟む「改めて、リヴ、僕と最後のダンスを踊ってくれるかい?」
「ちょっ、そんな直接誘っていいんですか?」
ルーカスがリヴァイをはっきりとした誘いでダンスに誘う。すると、直接的に誘う側は男性パートを踊る決まりがあるため、ギャビンは驚き、案じるようにそう尋ねた。
「構わないよ。既にリヴは僕の為に女性パートを覚えてくれたからね」
「……その割には、ノア様すげーびっくりしてますけど?」
ギャビンは本当に大丈夫なのかと突っ込みたいのを押えて、何とか丁寧な言葉で尋ねる。
「あの、まだ完璧では御座いませんので……」
そんなギャビンの努力は他所に、ルーカスとリヴァイの軽い押し問答が始まった。
「気にしないよ」
「間違えて足を踏む可能性も……」
「踏んでしまっても構わない」
「ですが……」
リヴァイがあたふたとしながら断ろうとする様子に、1年生達は少し驚いた様子だ。
「((ヒソッ…あのノア様がこんなに狼狽えるなんて……」
「((ヒソッ…ああ、睨まれたらすげー怖ぇんだぞ」
「((ヒソッ…それは貴方の自業自得です」
「ね、踊ろう?」
「っ、分かりました」
「ありがとう。行こうか」
ルーカスに根負けしたリヴァイが了承すると、ルーカスは心底嬉しそうに微笑みお礼を言った。そしてリヴァイに差し出した手が取られると、ルーカスは上機嫌で彼をエスコートしたのだった。
「ノア様の方が分かりやすく第3皇子様を好きだけど、第3皇子様も中々の愛よね」
「皇子殿下やノア様を好いている方々がお二人の関係は主従関係だと思い込もうとしているみたいですが……」
「絶対に無理があるだろうな」
ルーカスとリヴァイが中央近くで踊っていると、他の生徒達は2人のパートを見て酷く驚いた様子でいる。
「ふふ、皆君のしなやかな踊りに見蕩れているね」
「強硬な踊りの間違いでしょう」
「いいや、とても上手だよ。だから……」
ルーカスの足を踏まないようにと足元に注意が逸れるリヴァイに、ルーカスは彼の腰に回している手で引き寄せ言う。
「言ったでしょう? 僕の顔を見て」
「っ……」
リヴァイはルーカスの言葉に少し恥ずかしそうにしながら、ゆっくりと彼と視線を交わらせた。
「良い子。君と踊れて、とても幸せだよ」
「私も、、とても幸せです」
「ふふふ、顔が赤くなっている。君は本当に恥ずかしがり屋だね?」
少し頬を赤らめているリヴァイに、ルーカスは酷く幸せそうな満足した顔で揶揄った。するとリヴァイは少し拗ねた様子で言う。
「……貴方が恥ずかしがらな過ぎるだけです」
「ふふっ、可愛い」
「っ! また、その様な事を……」
会場から歓声が上がる程の、愛おしそうにリヴァイを見つめるルーカスの視線に、リヴァイの心臓は物凄い勢いで跳ね上がったのだった。
2人が最後のダンスを終えてアレイルとキャサリンの元へ戻ると、ヨハン達が彼らと一緒にいた。
「ルーカス様、ノア様、とても素敵なダンスでした!」
「ありがとう、ヨハン。君達も楽しめたかい?」
「はい。とても楽しい一日でした」
ヨハンは充実したとても良い笑顔で答えた。
「それにしても、お前すげぇ視線集めてんな」
「ん?」
マルセルが周りを見ながらそう言うと、ルーカスも不思議そうにしながら周りを見渡した。だがルーカスと目が会った瞬間、こちらを見ていた女子生徒達は慌てて視線を外したのだった。
怖がられる様なことしたかな?
「ま、あんなエロい笑み見たら、刺激に体制のない令嬢達は一溜りもないよな」
「フランク、せめて妖艶と言ってくれ」
フランクが笑いながら言うと、その直接的な表現にアーウィンが呆れて注意する。
しかしそんな彼らを他所にルーカスは何のことを言っているのか検討が着いていない様子。
そんな中、アレイルもその会話に参加した。
「ご令嬢方だけでなく、ここにも1人、ルーカス殿下の笑みを直接食らったものがおりますよ」
そう言ってアレイルはリヴァイの方へ視線をやった。
「っ、エイル……」
「リヴ、僕、君達に何をしたんだい?」
「っ!?」
「リヴ、答えて差し上げたら?」
ルーカスが少し不安そうに尋ねると、キャサリンも追撃する。するとリヴァイは耳を少し赤くして口篭りながら答えた。
「貴方の笑みに、見惚れていただけです」
「え?」
「口下手~」
「言葉足らず~」
リヴァイの説明にルーカスが理解出来ずにいると、アレイルとキャサリンが揶揄する様にそう言った。そんな2人にリヴァイはきつく睨みを利かせるが、彼らはにこりと笑って躱した。
その様子にヨハン達は苦笑いをしている。
(何の拷問だ……)
「ダンスの際に、殿下が笑いかけて下さった笑顔が、とても嬉しかったのです」
「僕の笑顔が……大丈夫? 顔が真っ赤だよ?」
リヴァイが酷く恥ずかしそうに顔を赤く染めていると、ルーカスが心配したように言う。しかしリヴァイは限界か、ルーカスに八つ当たりするように言う。
「貴方も、情事の際に私の視線を躱そうとするでしょう! それと同じです」
「リヴの視線……」
ルーカスは自身に触れている時のリヴァイの熱を持った視線を思い出し、頬を赤くする。
「……僕、そんなえっちな顔して君を見ていたの?」
「ルーカス殿下の顔が真っ赤になったわよ」
「ああ、一体どんな表情でリヴァイはルーカス殿下の事を見てるんだろうな?」
「黙れ!」
揶揄い倒してくるキャサリンとアレイルに、リヴァイはいつも以上にきつく殺気を帯びた鋭い視線で睨み付けた。
流石の2人も、そんなリヴァイの睨みに、揶揄い過ぎたと悪く思った。
「……ねえ、リヴは僕の笑顔好き?」
そんな彼らを案じたのか否か、ルーカスはリヴァイにそう質問した。
「っ、はい……。好き、です」
「そっか……。ふふっ」
リヴァイの返答を聞くと、ルーカスは幸せを噛み締めるように、少し俯いて酷く嬉しそうに笑みを浮かべた。
「テオ様って、ご自身の容姿の良さに興味なさそうだよね」
「同感だ」
ギャレットとマルセルは少し呆れたようにそう言ったのだった。
「はあ、ちょっと揶揄い過ぎたかしらね」
「別にリヴを怒らせたいわけじゃなかったんだが、こうしないとあいつ素直にならないからな」
キャサリンとアレイルは少し反省した様子でそう言った。
「お2人はテオ殿下とノア様を心から応援されてるのですね」
「友人だもの。でも、リヴァイの表情を読み取れるルーカス殿下なら、私達の助けもいらないのよ」
「まあ、あいつを揶揄うの、楽しくない訳じゃないし」
「……そうよね。凄く良い反応してくれるもの」
そんな2人のやり取りに皆は苦笑いをし、リヴァイを不憫に思ったのだった。
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