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中等部4年編
18
しおりを挟むルーカスはリヴァイ達やノエル達と談笑をしたりダンスを踊ったりして申の刻正刻頃までの1刻を過ごすと、夕食を取りに行く。
「僕はまだ良いよ。先程食べたばかりだから」
「ですが今皆と食べなければ、夕食を取らずに戻るでしょう」
「今日は食堂も空いておりませんし……」
「見回りの前に昼食の時間を取るべきでしたね」
リヴァイの確信して心配する言葉に、アレイルとキャサリンも同意する。
……まあ、確かに後では食べないだろうね。
「分かった。少しだけでも食べるよ」
そう言うとルーカス達はまた食事の置かれたテーブルまで行き食事を取った。
「……うぅ、気持ち悪い」
「申し訳ございません、殿下。それ程限界だったとは気が付かず……」
「いや、久しぶりにこんなに多く食事をしたから、僕が加減を分かっていなかっただけだから」
「しかし我々が勧めなければ……」
「本当に申し訳ございません……!」
ルーカスは少し食べすぎたのか、少し気分が悪くなってしまった。それにリヴァイ達は負い目を感じる。
「吐き気はどうですか? 医務室にでも……」
「平気。少し休めば良くなると思う」
「座れる場所があれば良いのですが、生憎設営の時に全て退かしてしまいましたので」
思った以上にルーカスの体調が悪く見えるようで、過保護なリヴァイ達だけでなく、ノエルやフィオナ達まで酷く心配した様子だ。
「本当に大丈夫だからあまり心配しないで?」
「ですが……」
ルーカスがそう言うとフィオナが心配そうにルーカスを見つめた。
すると突然、リヴァイがルーカスの足元にしゃがみ込んだ。
「リヴ?」
「御無礼をお許しください」
「え、わあっ……!」
リヴァイはルーカスのもも裏と背中に手を回すと、軽々と彼を抱き上げた。
「私に寄りかかって少しの間お休みください」
「それでは君が疲れるよ」
「私は平気です」
リヴァイがそう返答すると、ルーカスはリヴァイの瞳をじっと見つめた後、彼の肩に体を預けた。
リヴの優しい匂いがする。
その後皆は会場の端の方へと移動すると、ルーカスが気を張らずに休憩できるようリヴァイを囲うようにして談笑をしていた。
酉の刻が近付いた頃、見回りを終え、教員への報告を終えたソフィア達の班と側近達、そしてクロエとケイリーもルーカス達の元へやってきた。
「ルー、具合が悪いの!?」
リヴァイに抱えられ浅く眠っているルーカスの姿に、ソフィアは酷く心配しながら慌てて尋ねた。
「姉さん……? 少し食べ過ぎただけだよ。それに休んだからもう平気」
ルーカスが目を覚まし、体を起こしてソフィアに向けそう言うも、ソフィア達は心配の眼差しをルーカスに向けている。
「医務室に行かれなくて良いのですか?」
「うん。リヴの匂いを嗅いでたらマシになった」
グレースの問い掛けに、ルーカスは少し寝ぼけながらも真面目な表情でそう言うと、リヴァイの首元に身体を預け顔を埋めた。
その様子にナタリーやクロエ、そして1年生達は、少し顔を赤くし居た堪れない表情になっている。
そしてリヴァイは心底驚愕した様で、目を見開いて困惑し、自身の匂いを確認しながら言う。
「臭いますか……?」
「ん? 全く。凄く優しくて、僕の1番好きな匂い」
そう言って微笑むルーカスにリヴァイはまだ困惑している。するとルーカスも自身の匂いを嗅ぎながら尋ねた。
「僕の方こそ臭くないかい? 先程変な汗をかいたから」
ルーカスのその問に、困惑したままのリヴァイははっとした。
(何も臭わないが……)
するとリヴァイはルーカスの首元に顔を近付け匂いを嗅ぎに行った。
「とても良い香りですよ」
そして平然とそう言うと、呆れた様子のティファニーが口を開いた。
「リヴ、貴方まで寝惚けてるの?」
「あっ、申し訳ございません、殿下……」
「ん? 平気だよ」
ティファニーの言葉にリヴァイが慌ててルーカスに謝罪をするが、ルーカスは至って平然としている。
「……ルー、今のリヴァイの行動は、貴方の首にある鬱血痕を友人に見られる事と同じ位恥ずかしいことよ」
「っ、姉さん……!?」
ソフィアのその突然の言葉に、ルーカスは驚き顔を真っ赤にし、項に手を当てた。
「リヴァイ、無意識とはいえ私の前で弟に手を出さないでくださいますか? 貴方にルーを取られたと思っているのは、お父様やウィルお兄様だけではございませんのよ。
だからルーも恥ずかしい思いをさせたリヴァイを叱ってあげるといいわ」
「……申し訳ございません、ソフィア様」
そう言ってソフィアはウィリアム顔負けの怖い笑顔でリヴァイを圧している。
「今僕が恥ずかしかったのは姉さんの言葉の方だよ……」
「あら、そうだったの。ごめんなさいね」
ソフィアがとぼけてルーカスに返すと、アレイルとキャサリンも酷く落ち込んだ様子でソフィアに向けて頭を下げ謝罪した。
「誠に申し訳ございません。ルーカス殿下の体調も管理出来ず……」
「体調を崩されたのは我々がお食事をされる様催促した事が原因です。本当に申し訳ございません、皇女様」
ああ、姉さんが怒っているのは僕が体調を崩した方にか。
「貴女方のことですから、無理矢理食べさせた訳で無いことは分かっております。恐らく食事を取らない心配からルーに食べさせたことも」
食事までの経緯をソフィアが言い当てると、ヒューゴとケイリーは驚き感心する。
「……リヴ、もう平気だから下ろして」
「……はい」
ルーカスの指示にリヴァイはすぐ様ルーカスを下に下ろした。するとルーカスはソフィアの元へ行く。
「姉さん、大丈夫だよ。ごめんね心配を掛けて」
「ルー……」
「僕が自分で食べられると思ったんだ。最近調子が良くて沢山食べられるようになっていたから。今日も吐くことは無かったでしょう? それに、体調を崩したと言っても、ただの胃もたれだ」
苦笑いしたルーカスのその言葉にソフィアは少し考える。
「……そうね。私が過剰に反応してしまったみたいだわ。リヴァイ、アレイル、キャサリン、すみません」
「皇女様が謝られることでは……!」
「ありがとうございます。ですが、一つだけお約束下さい。ルーの心配をして下さるのならば、最後まで責任を持ってください」
「はい。肝に銘じさせて頂きます」
ソフィアのその言葉に、リヴァイ、アレイル、キャサリンの3人は、胸に手を当て深く頭を下げたのだった。
大事にならなくて良かった。
「姉さん、食後の運動に付き合ってくれないかい?」
そう言ってルーカスはソフィアに手を差し出した。
「ええ、早く消化して貰わないと体調全快しないものね」
そう言ってルーカスの手を取ると、2人はダンスを踊りに行ったのだった。
「((コソッ…テオ殿下とノア様ってガチで付き合ってんだな」
「((コソッ…ええ、普段はただの主従関係にしか見えませんでしたから」
「((コソッ…テオ殿下はもっと固い感じの方かと思ったけど、寧ろルナ皇女様の方が厳しい方だな」
「((コソッ…第3皇子様は何か、拍子抜けなくらい優しかったわね」
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