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第3話
しおりを挟む「働かざる者食うべからず」
俺のお袋がよく言っていた。
「働かずに金を稼げるほど世の中は甘くないぞ」というお小言付きで。
俺の入手したスキル「隔絶」の能力は事象改変。かなり、戦闘向きの能力である。
とりあえず、討伐依頼とかを受ける冒険者になってその報酬金で生きていくしか無いだろう。
しばらくはスライムとかゴブリンとかの低級モンスターを狩って日銭を稼ぐしかないな。
「お前、この辺のギルドみたいなものって知ってる?」
「知るわけ無いでしょ。私だって、この世に降りたの初めてだもん」
神のくせにナビゲートもできないのかよ。使えないな。駄女神か?こいつ。
そっと心の中で愚痴りながら、俺は頭を抱える。
ナビがないんだとしたら・・・・・・。
「人に聞くしか無いか。でも、顔見知りがいないから聞こうにも聞けないんだよなあ」
うーむ。
コミュニケーション力が0にも等しい俺からすれば、知らない人に話しかけるなど至難の業だ。
こういうときは、人頼み、いや神頼みをするしかない。
さあ、ハデスよ!道を聞いてこい!
「嫌よ。なんで私が聞いてこなきゃいけないのよ。あなたが聞けばいいじゃない」
俺の願いは叶うことなくはたき落とされた。
「俺はコミュ障なんですー。初対面の人に話しかけるなんて、100年早いんですー」
「私だって無理ですー。私のことを邪神扱いしてる奴らに聞けるわけ無いでしょ」
「正体バレなきゃ平気だろ。行って来い」
「あなたはバレるものがないからリスクないじゃない。そっちが行きなさいよ」
「「・・・・・・」」
初対面の人に話しかけるなど、ムリムリムリムリ絶対無理。
それをするくらいだったら適当に歩いてさがした方がマシだ。
運良くそこら辺に地図でも落ちてないかなぁ・・・。
ガサッ
「わぷっ……!」
さっきから吹いている謎の強風と共に、大きな紙がハデスの顔面へと飛んできた。
「なんだこれ?」
飛んできた大きな紙をハデスの顔面から剥がし、よく見てみる。
「えーっと、・・・・・・地図じゃん」
飛んできたのは地図だった。
まるで、神がギルドに行きなさいとでも言っているようだ。
「でも、この辺の地図だとはかぎらn」
「お、この剣のマーク。あそこの看板と一緒じゃないか」
少しあたりを見渡してみれば、地図に載っているマークと同じ看板をぶら下げた建物があった。
つまり、今俺がいる場所の地図で間違いない。
地図の右上に城下町と書いてあったので、どうやらここは城下町らしい。
なにはともあれ、この地図の通りに行けばギルドに……。
「なぜ読めるんだ俺」
なぜかこっちの世界の文字が読めることに疑問を覚えた俺は、そんな事を口にした。
「見た感じ、全くもって知らない文字が使われてるのに、読めるし理解もできる。・・・・・・異世界補正か?」
ラノベとかではよくあることだ。ご都合補正とも呼ばれる。
自分が体験することになるとは思いもしなかったが・・・。
「なぜか知りたい?」
「いや、今は別にいいや」
「えぇ!?」
「早くギルドに行こう」
「え、ええ・・・・・・。まあ、私としてはどっちでもいいんだけどさ」
なんか、長くなりそうだったし、早くギルドに行って異世界補正を楽しみたい気持ちが強かったので、ハデスの話は聞かないことにした。
ハデスがすごい残念そうにしてたけど、気にすることはないだろう。
「ここの道を真っすぐ行って、武器屋のある十字路を右に曲がって、しばらく真っすぐ行けばギルドがあるらしい」
「へえー」
俺の見立てによると、徒歩8分くらいで目的地までは着くはずだ。
走れば3分。
そんなに離れた場所ではない。
「ほら、さっさと行くぞ」
「あ、待ってー」
地図の通りにしばらく歩いていくと、たくさんの冒険者らしき人たちが出入りしている建物が見えてきた。
「あれがギルドじゃない?」
「地図では、・・・・・・あれであってるな」
再度、地図を取り出して現在地を確認した。
一応、確認した限りだと現在地は合っている。
ギルドに着けば、俺の異世界ライフは順調に進むことだろう。
いきなり高難易度クエストに挑戦。
クエストの最中、強力な乱入ボスが出てきてピンチに。
だが、俺の中の秘めたる力が覚醒して大逆転勝利。
そんな功績が認められ、期待の新人としてちやほやされる。さらに、モテモテになってハーレム。
・・・・・悪くない。
むしろ、最高だ!
「急がば回らず、直進あるのみ!」
「あっ。ちょっと待ってー!」
俺はギルドに向かって猪突猛進していった。
「おい姉ちゃん、酒!」「肉はねえのか!肉!」「仲間募集中!できれば、魔法使いの方!」「オークの牙か?銀貨2枚だ」「てめえ、金返せ!」「僧侶の人はいないですか!怪我人がいます!」
「・・・・・・クルッ」
「ちょっと、どこ行くの」
ギルドに入った瞬間回れ右をして退室しようとした俺の肩を、ハデスがガシッと捕まえる。
「ちょっと・・・・・・外の空気を吸いたい。いや、本当に」
ものすごく楽しみにしていたはずなのに、俺の心はこの場から去ることを選択していた。
その理由はなぜか?
理由は単純明快。
音と匂いである。
色んな人が発する大きな声。
土と血と獣と腐肉の匂い。
このダブルパンチに俺が音を上げてしまったからだ。
「お、おええええ・・・」
せっかく念願のギルドに着いたばかりなのに、俺はそれどころの話ではなかった。
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