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第5章 やって来たアサシン・ドール
42: パズスの視姦
しおりを挟むガラス壁面を多く取り入れた近代的な門戸屋敷は、海岸の高台に建てられていた。
指尻ゑ梨花は、今、この門戸屋敷に囲い込まれている状態の戸橋巡査こと、奈央と共に、海の見える部屋にいる。
豪奢だが、過剰さはない。
生活臭のあるものは全て収納されていて、部屋の中央には大きなベッドと、窓の反対側にある大画面のモニタと巨大な姿見しかない。
いやもう一つ、部屋の中には、異物がある。
壁面が全て強化ガラス製になっている窓側に立った2メートル近い巨大な立像だ。
一言で言ってしまえば、ソレは二本脚で直立する、殿様飛蝗だった。
二本の脚とそれを繋ぐ腰、そして頭部は人間の形に近くなるように変形させられているが、その立像は、どう見ても巨大すぎる殿様飛蝗だった。
奈央の説明によると、立像は門戸のコレクションで、彼はこれをパズスと呼んでいるらしい。
パズスは、バビロニア神話に登場する悪霊の王で、蝗害を具神化した存在と考えられている。
ただしそこで伝えられている姿は、このようなものではない。
ともかく、この怪異な立像を除いては、窓の外に広がる海洋海岸の光景は、非の打ち所もなく素晴らしく、そして二人に貸し与えられた部屋は、超高級ホテルに匹敵するものだった。
けれど奈央とゑ梨花が二人揃って感傷に浸りながら海を眺める、といった状況にはない。
門戸には「私は遠くから君たちの事を見ているから二人で自由にやってくれ」と言われている。
『遠くで見ている?』
ひょっとして、この部屋の何処かに隠しカメラが備え付けられて、それで私達を観察しているのか?
まさか、その仕掛けを、あのパズス像の複眼の中に?
ベッドを見つめているパズスの立ち位置から、それは大いに考えられたし、何よりも門戸という人物は、そういう事を好んでしそうだと、ゑ梨花は思っていた。
奈央が「エロビデオ見る?」と聞いて来る。
奇妙なことだが、戸橋との会話は、何気ない日常的な普通のやりとりの方に、秘められた意味があった。
『このビデオ自体に、意味がある。』
二人の間でしか通じない暗号のようなものだ。
SEX中の会話には、そこにどんな複雑な要素があっても、何の意味もない。
その時、戸橋は奈央に成り切っているからだ。
「ゲイ?」
「そう。ボカシなし、でもゾンビもの。ヘンでしょ。門戸さんが作ったの。」
「見たい!」
そこから、不思議なビデオ映像の鑑賞が始まった。
奈央はゾンビのゲイ本番ビデオだと言ったが、そこに映し出されているのは、流行のゾンビメイクを施した男優ではなく、青白く死蝋化しつつある肌を持った男達だった。
もちろん、それも特殊メイクなのだろうが、蝋の冷たい艶肌や、どことなく形が歪んだ顔や体付きが恐ろしいぐらいに上手く表現できていた。
画面の中で、この2人が69を初めていた。
ゑ梨花が、ベッドの縁にもたれかかる体勢でそれを見ていると、奈央がその間に割り込んできて、ゑ梨花の背中とベッドの間に奈央が座り込む体勢になった。
奈央がゑ梨花の肩越しにビデオを見ている。
その手は、最初ゑ梨花のお腹の辺りに置かれていたが、愛撫の為に微妙に上に動いたり下に動いたりする。
「上、脱ぐ?」
「ええ…」
奈央に手伝われ、ゑ梨花はブラも取られ上半身裸にされる。
「ほんと形のいいおっぱい。腕の良い病院?」
「ええ。日本よりね。」
奈央のゑ梨花をまさぐる手が、上半身に集中し始める。
ゑ梨花のうっすら浮き上がった腹筋をなぞるように、そしてピンと起った乳首を避けるかのように、又、胸筋をなぞるように。
画面では、死者達がその青黒いアナルを掘られ、整った顔を更に歪めながら喘いでいる。
ただその喘ぎは、生者の悦楽ではなく、死に無理矢理割り込んで来た「生者の快楽」に苦しめられているといった感じのものだ。
「下も脱ごっか?」
「ええ…」
ゑ梨花がスーツパンツを脱いでる間、奈央もシャツとパンツを脱ぎ、そして再び同じ体勢へと戻った。
お互い着てる物は、後はビキニのみ、の状態になっている。
ゑ梨花は画面を見ながら、自分のペニスに目をやる。
黒のビキニに、大きなシミが広がっている。
そして、いきり起ったゑ梨花のペニスが、ビキニの腰のゴムを持ち上げ、先端が窮屈そうに覗いている。
奈央の手がゑ梨花の乳首に忍び寄る。
ゑ梨花の腰には、奈央の硬いペニスが当たってるのがわかる。
すると、奈央は突然横のサイドテーブルの引き出しから小瓶を取り出した。
「吸ってみて? もっと気持ちよくなれるよ?」
「ええ」
ゑ梨花は言われるがままの行動を取った。
門戸は、自分の遊び相手に麻薬の類を与えないのは判っているし、なにより、戸橋がこれを摂取することを進めているのだ。
単純な興奮剤と考えるのが妥当だった。
むしろ門戸の疑念をかき立てる行為は、こんな場面で二人が躊躇する事だった。
どこかで二人の様子を録画し観察しているであろう性のマエストロを自認する門戸は、それを一瞬で見抜くだろう。
吸った瞬間に頭に込み上げる何とも言えない、「いやらしさの塊」がゑ梨花を襲った。
奈央も吸う。
小瓶を横に置き、ゑ梨花の首にむしゃぶりついてきた。
手はゑ梨花の乳首だけを刺激する。
ゑ梨花は自然と声が出た。
興奮剤の効果なのだろうか。
興奮するゑ梨花の様子が、いつも以上にいやらしくて、それが余計に奈央を挑発したらしい。
ゑ梨花の肩越しに、奈央が言った。
「ねぇ、ゑ梨花のペニス、そのいやらしいビキニからはみ出てるよ。」
「、、、やっぱり凄い体してるし、凄くタイプ。」
奈央の言葉の1つ1つが、ゑ梨花を挑発する。
それに応えるかのように、ゑ梨花のペニスはビクンビクンと脈打つ。
そして、更にビキニにシミが広がる。
画面は、死体男のオナニーシーンに変わっていた。
「ねぇ、オナニー見せて、」
ゑ梨花は、再び興奮剤を嗅がされ、ビキニの上からいやらしく奈央に見せつけるようにペニスを扱き始めた。
横を見ると、大きな姿見にゑ梨花の姿と奈央の姿が映し出されている。
倒錯の美の極みだった。
「私のペニス、どうしたい?」
奈央が形の良い薄い唇をゑ梨花の耳元に寄せて言った。
「しゃぶりたい」
「どんな風に?」
「ジュポジュポって音立ててしゃぶりたい」
奈央はゑ梨花の答えに満足したかのように、ベッドに横たわった。
ゑ梨花の目の前には、奈央の真っ白なビキニから先っぽだけが顔を覗かせているペニスが見える。
「まずは、このままビキニがベチョベチョになるくらいまでしゃぶって」
心なしか、奈央の口調が「オス」の勢いに変わっている。
奈央は自分で興奮剤を吸い、そしてゑ梨花にもう一度吸わせる。
また来た。この興奮する感覚、何度吸っても、それが劣化しないのが不思議だった。
門戸が提供する興奮剤は、世の中に出回っているモノと質が違うのだろか?
そんな事を、頭の片隅で考えながら、ゑ梨花は奈央のビキニの上からペニスにむしゃぶりついた。
奈央に言われたように、たっぷり唾をつけ、ビキニに浮き出たペニスをなぞるかのように、音を立ててしゃぶり上げる。
「おぉ、いい、、」
「もっと音立ててやって、、」
感じながら、奈央はオスの要求をして来る。
そして、ゑ梨花は、その要求に喜んで応える。
奈央が上半身を起こし、ゑ梨花の顔を持ち上げる。
「めっちゃ、いやらしい顔してるよ、ゑ梨花。」
そう言われて、ゑ梨花は姿見を見る。
確かにゑ梨花は、いやらしい顔をしてた。
だがそれ以上に目に強く飛び込んで来たのは、その隣のテレビ画面だった。
ゑ梨花と同じように、死体男がもう一人の死体男に顔を持ち上げられ、鏡を見ている。
『あ、わかった、、、』
ゑ梨花達の今までの行為は、このビデオとシンクロしていたのだ。
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