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第2章 ファック・パペットの憂鬱
11: 笛吹男と笛吹女
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私は6係からの連絡役として、香山微笑花巡査を指尻ゑ梨花女史に貼り付けておくことにした。
只でさえ忙しい6係から、人手を割くのは痛かったが、香山巡査を指尻女史につけたのは、半分以上、女史のボディガードのつもりだったから致し方がない。
指尻ゑ梨花女史が夜の街で、囮活動をやっている間、香山巡査が付かず離れずの形で女史を警護するのだ。
もちろん、それは指尻女史が民間人の立場で囮捜査を申し出た為だが、私はありがた迷惑の顔をしながら、実は指尻女史に期待をしていたのだ。
丑虎巡査部長が作成したファック・パペットの人物像を見るかぎり、この男を捜し当てるのは、指尻女史より他に該当する人間がいないと思えたからだ。
香山微笑花巡査は、自分に与えられたこの役回りを気に入っていたようだ。
一度、本人に感想を聞いてみたことがあるが、「私達は、(ゑ梨花と微笑花)の関係になっちゃいそうです。」と嬉しそうに言っていた。
香山巡査は、指尻女史がいたく気に入ったようだ。
彼女が指尻女史に対して、自分の姉のような、いや兄のような気持ちを抱いているのか、又、違う感情なのか、そこの所はよく判らないのだが。
「特殊犯捜査というのは4で数字は終わりなんですよ。第1と第2は人質立てこもり事件・誘拐事件・企業恐喝事件などを担当してます。第3は業務上過失事件を主に担当してて、第4は捜査第一課の遊軍的な位置づけですね。私達の前にある筈の5の数字は、これから正式に必要かも知れないということで空けてあるんです。で、6と言うのは、現時点で、どうしても1から4まででは拾いきれない、はみ出た事案を拾う特殊犯捜査担当なんです。そういう何時でも切れると言うか、ホントならあって欲しくないみたいな上層部の意思表示がこの数字にはあるんですよね。その第6の中でも、私達は更に6係。6の中の6、ややこしいでしょう?」
そこで香山巡査は言葉を切って少し笑った。
大きい目が一気に細くなって、太くて形の良い眉が少し下がる。
その内容はどうであっても、香山巡査の健康的な笑顔は指尻女史を和ませる。
「で、私達の前に1係から5係までがあるのかと言えばそれもない。任務内容の整理が付き次第、1係から作り直して今の6係は消してしまうのかも知れませんね。つまり需要がなくなるか、他の係が拡充するかすると、私達の6係はなかった事になる。ところが皮肉な事に、最近では6係の重要性が凄く高まって来た。今じゃ、私達の事は、刑事仲間の間で、悪魔の数字の666に引っかけトリプルシックスとか呼ばれて一目置かれています。まあ本音では、敬遠されているのか疎まれているのか分かりせんけどね。でも最初の頃のように、馬鹿にされたりはないですね。」
それが深夜のファミレスの窓際の席で、香山巡査が話した6係の6という数字の説明だった。
特に数字の下りは、本当かどうかは良くわからなかったか、それなりの説得力があるような気がした。
テーブルを挟んで顔を付き合わせた「ゑ梨花と微笑花」の、オシャベリは続く。
話は、最近6係で話題になっている「殺し屋ビジネス」に移っていた。
もちろん、それは香山巡査が迂闊に、警察内部の情報を一般人にリークしたという事ではなく、私が指尻女史に情報を提供すべくそうさせているのだ。
そして指尻女史も、その形式で彼女なりの非公式見解を我々に述べてくれるという寸法だった。
「殺し屋ね、言葉通りまさに商売、殺人をビジネスにしてるわけね。この国じゃ、誰かを自分の代わりに殺して欲しいという需要は間違いなくあると思うわ。殺し屋を利用するリスクが、依頼者にとって限りなく0に近づけば、絶対にビジネスとして成立するわよ。方法?例えば、死体を完全になくす事が出来れば?警察は事件が起こってからでないと動けないでしょう?それと、殺害の為の完全分業化ね。殺人が発覚するのは、一人で情動的にやるからじゃないかしら。殺意を抱く、場所を決める、殺す、捕まりたくないから証拠や死体を隠す、そして逃げる。動けば動くほど足跡が残る。これで捕まらない方がおかしいのかも。でもそれがバラバラの分業でプロの仕事として実行され、お互いの関係が切れてたら?もちろん、そうする為には、全てを統括する凄く頭のいい人間が必要だけど。」
指尻が囮となって探しているのは、その分業の一部分、適切な殺人場所にターゲットを誘導する「拉致」者だった。
エリカはラブホのベッドに陸を座らせて、彼の目の前で衣服をすべて脱ぎ去った。
この夜のエリカのスタイルは、外資系OLと偽っても不自然ではないような、ベージュのウエストシェイプのジャケットとタイトスカートのスーツ姿だった。
ショーツも脱ぎ捨て、 「ほら、男なのよ。ペニスもタマもついてるわ」 と、細身の白肌の裸体を若い男の前に晒した。
「でも、美人だよ、ね」
陸は動じる気配もない。
自分が美人なのはわかっている。
美人に見えるようにメイクしているし、ふだんのお肌の手入れにも時間をかけているのだ。
エリカは苛立っていた。
いつもなら、こんな子どもはお呼びじゃないのに。
でもこの子は、「お仕事」の方で何か引っかかる。
それでこの青年と、ラブホに入ってしまった。
エリカはバッグからシガレットケースとライターを取り出し、 「ちょっとどいてよ」 と、陸を脇に寄せて、ベッドにあがった。
そういう人物像を、いざという場面での「対抗策」として、自分自身に投影していた。
エリカは煙草を、艶やかな赤に塗ったルージュの口唇に咥えた。
「リクくん、あなた、いつまで服、着たままなの?」
紫煙を、フー、と吹き出して言ってやると、彼は、「うん、脱ぐよ」と素直に従う。
ベッドから下りてジャケット、シャツ、と脱いでゆく。
決して逞しい男ではない。
、、、プロファイリングと一致している。
ほっそりとした手も脚も長くて、今どきのモテるタイプの青年だ。
「そこの灰皿、取ってよ」
「はい」 と、トランクスだけになった陸が手渡してくれる。
「あたしとやりたいのなら、ぜんぶ脱いで、こっちに来なさい」
「うん」
ほんとにカワイイんだから、と思った。
そこは本音だった。
『普段の人間関係においては、張り合いがない程、素直。』
ここもプロファィリングに一致している。
ベッドの枕板にもたれているエリカの横に、全裸になった陸が並んだ。
エリカのペニスも陸のペニスも萎えたままだ。
このまま盛り上がってセックスにまで至れるのだろうか?
今日のエリカは、普段とは違って、指尻ゑ梨花だ。
この陸という若者も女に飢えているわけではないはずだ。
さらに、この坊やは、エリカの色香に迷ったわけでもないのだ。
世界を構成するパーツの寸法が、全て違っている夜だった。
「リクくん、私の胸、触ってみて」
「うん」
エリカに言われたとおりに、陸は手を伸ばしてくる。
「ほら、女性とは感じが違うでしょう?」
「でも揉めるね、ははは」
何がおかしいの?
笑うような場面ではないと思うけど。
「その為に、造ったの」
「じゃ、手をもっと下のほうに動かしてみて」
陸の手がエリカの下腹部に移ってゆく。
「リクくん、あんたね、男のペニスを握ってるのよ。ホモっ気がない男なら気持ち悪いはずよ」
「そうかなあ」
「男のペニスなのよ。気持ち悪くないの?」
「お姉さんのなら、いいよ」
この子は、男どうしの性交が変態だという認識がない。
失踪した男や女が最後に関わった人間、ファック・パペット、、。
彼らはハーメルンの笛吹き男に誘われた子どものように、ファック・パペットに会った後、その姿を消している。
エリカは、膝を立てて太腿を開いた。
「じゃ、女の代わりになるところを触ってみて」
「お尻?」
「そうよ。私にはペニスが付いてるんだもの。あとはお尻の穴しかないじゃないの。」
ここで健全な男なら、程度の差はあるにしても、必ず嫌悪感を示す。
しかし、特に厭悪を見せるわけでもなく、陸はエリカのアナルをまさぐり始めた。
「あんん」
これは演技ではなかった。
忌避感や恐怖より快感が先に来る。
例えば、この青年がファック・パペットだとしても、彼自身が何らかの直接的な暴力を振るえるとは、とても思えなかった。
それに、ここから先は、エリカとしても精神医指尻ゑ梨花としても、それぞれ違う意味で興味があった。
「お尻の穴、感じるの?」
「指、中に入れて」
「こう?」
「ゆっくり、少しずつね」
陸の指がエリカのアナルに侵入してくる。
エリカはこうして指でくじられると、気持ちよくて陶然となってしまう。
「お姉さんのペニス、立ってきたよ」
「ねえ、リクくん、男のお尻の穴をいたぶるのって、初めてなんでしょう?」
「うん。初めてだよ、女のあそこみたいだね」
これは本気で言ってるのだろうか?
「女の人のみたい?」
「僕の指を締めつけてくるよ。すごいね」
「いやらしい、って言ってよ」
「女のあそこよりいやらしいね」
「リクくん、上手ね。いつもこんな風に指、使って女のコを悦ばせてるの?」
「まあね」
「あんうぅぅ」
「こうやって、擦るといいみたいだね」
「あんっ」
エリカからは、陸がどの指を使っているのか見えないが、たぶん中指なのではないだろうか。
ずいぶん奥まで犯入してきて、肛壁の粘膜を絶妙にいたぶられて、もう泣きそうなぐらいの快感がエリカを襲っていた。
「お姉さんのペニス、ギンギンにボッキしてるよ」
「リクくんが上手だからよ」
「ほらほら、これでどう?」
「リクくん、キスして」
陸はエリカの首の後ろに腕をまわし、抱きしめるようにして口唇を合わせた。
エリカはうっとりと舌をからませながら、陸の指先に酔い痴れつつあった。
・・・危ない。
指尻ゑ梨花は、ニーチェの言葉、「怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。 」の一節を思い出した。
只でさえ忙しい6係から、人手を割くのは痛かったが、香山巡査を指尻女史につけたのは、半分以上、女史のボディガードのつもりだったから致し方がない。
指尻ゑ梨花女史が夜の街で、囮活動をやっている間、香山巡査が付かず離れずの形で女史を警護するのだ。
もちろん、それは指尻女史が民間人の立場で囮捜査を申し出た為だが、私はありがた迷惑の顔をしながら、実は指尻女史に期待をしていたのだ。
丑虎巡査部長が作成したファック・パペットの人物像を見るかぎり、この男を捜し当てるのは、指尻女史より他に該当する人間がいないと思えたからだ。
香山微笑花巡査は、自分に与えられたこの役回りを気に入っていたようだ。
一度、本人に感想を聞いてみたことがあるが、「私達は、(ゑ梨花と微笑花)の関係になっちゃいそうです。」と嬉しそうに言っていた。
香山巡査は、指尻女史がいたく気に入ったようだ。
彼女が指尻女史に対して、自分の姉のような、いや兄のような気持ちを抱いているのか、又、違う感情なのか、そこの所はよく判らないのだが。
「特殊犯捜査というのは4で数字は終わりなんですよ。第1と第2は人質立てこもり事件・誘拐事件・企業恐喝事件などを担当してます。第3は業務上過失事件を主に担当してて、第4は捜査第一課の遊軍的な位置づけですね。私達の前にある筈の5の数字は、これから正式に必要かも知れないということで空けてあるんです。で、6と言うのは、現時点で、どうしても1から4まででは拾いきれない、はみ出た事案を拾う特殊犯捜査担当なんです。そういう何時でも切れると言うか、ホントならあって欲しくないみたいな上層部の意思表示がこの数字にはあるんですよね。その第6の中でも、私達は更に6係。6の中の6、ややこしいでしょう?」
そこで香山巡査は言葉を切って少し笑った。
大きい目が一気に細くなって、太くて形の良い眉が少し下がる。
その内容はどうであっても、香山巡査の健康的な笑顔は指尻女史を和ませる。
「で、私達の前に1係から5係までがあるのかと言えばそれもない。任務内容の整理が付き次第、1係から作り直して今の6係は消してしまうのかも知れませんね。つまり需要がなくなるか、他の係が拡充するかすると、私達の6係はなかった事になる。ところが皮肉な事に、最近では6係の重要性が凄く高まって来た。今じゃ、私達の事は、刑事仲間の間で、悪魔の数字の666に引っかけトリプルシックスとか呼ばれて一目置かれています。まあ本音では、敬遠されているのか疎まれているのか分かりせんけどね。でも最初の頃のように、馬鹿にされたりはないですね。」
それが深夜のファミレスの窓際の席で、香山巡査が話した6係の6という数字の説明だった。
特に数字の下りは、本当かどうかは良くわからなかったか、それなりの説得力があるような気がした。
テーブルを挟んで顔を付き合わせた「ゑ梨花と微笑花」の、オシャベリは続く。
話は、最近6係で話題になっている「殺し屋ビジネス」に移っていた。
もちろん、それは香山巡査が迂闊に、警察内部の情報を一般人にリークしたという事ではなく、私が指尻女史に情報を提供すべくそうさせているのだ。
そして指尻女史も、その形式で彼女なりの非公式見解を我々に述べてくれるという寸法だった。
「殺し屋ね、言葉通りまさに商売、殺人をビジネスにしてるわけね。この国じゃ、誰かを自分の代わりに殺して欲しいという需要は間違いなくあると思うわ。殺し屋を利用するリスクが、依頼者にとって限りなく0に近づけば、絶対にビジネスとして成立するわよ。方法?例えば、死体を完全になくす事が出来れば?警察は事件が起こってからでないと動けないでしょう?それと、殺害の為の完全分業化ね。殺人が発覚するのは、一人で情動的にやるからじゃないかしら。殺意を抱く、場所を決める、殺す、捕まりたくないから証拠や死体を隠す、そして逃げる。動けば動くほど足跡が残る。これで捕まらない方がおかしいのかも。でもそれがバラバラの分業でプロの仕事として実行され、お互いの関係が切れてたら?もちろん、そうする為には、全てを統括する凄く頭のいい人間が必要だけど。」
指尻が囮となって探しているのは、その分業の一部分、適切な殺人場所にターゲットを誘導する「拉致」者だった。
エリカはラブホのベッドに陸を座らせて、彼の目の前で衣服をすべて脱ぎ去った。
この夜のエリカのスタイルは、外資系OLと偽っても不自然ではないような、ベージュのウエストシェイプのジャケットとタイトスカートのスーツ姿だった。
ショーツも脱ぎ捨て、 「ほら、男なのよ。ペニスもタマもついてるわ」 と、細身の白肌の裸体を若い男の前に晒した。
「でも、美人だよ、ね」
陸は動じる気配もない。
自分が美人なのはわかっている。
美人に見えるようにメイクしているし、ふだんのお肌の手入れにも時間をかけているのだ。
エリカは苛立っていた。
いつもなら、こんな子どもはお呼びじゃないのに。
でもこの子は、「お仕事」の方で何か引っかかる。
それでこの青年と、ラブホに入ってしまった。
エリカはバッグからシガレットケースとライターを取り出し、 「ちょっとどいてよ」 と、陸を脇に寄せて、ベッドにあがった。
そういう人物像を、いざという場面での「対抗策」として、自分自身に投影していた。
エリカは煙草を、艶やかな赤に塗ったルージュの口唇に咥えた。
「リクくん、あなた、いつまで服、着たままなの?」
紫煙を、フー、と吹き出して言ってやると、彼は、「うん、脱ぐよ」と素直に従う。
ベッドから下りてジャケット、シャツ、と脱いでゆく。
決して逞しい男ではない。
、、、プロファイリングと一致している。
ほっそりとした手も脚も長くて、今どきのモテるタイプの青年だ。
「そこの灰皿、取ってよ」
「はい」 と、トランクスだけになった陸が手渡してくれる。
「あたしとやりたいのなら、ぜんぶ脱いで、こっちに来なさい」
「うん」
ほんとにカワイイんだから、と思った。
そこは本音だった。
『普段の人間関係においては、張り合いがない程、素直。』
ここもプロファィリングに一致している。
ベッドの枕板にもたれているエリカの横に、全裸になった陸が並んだ。
エリカのペニスも陸のペニスも萎えたままだ。
このまま盛り上がってセックスにまで至れるのだろうか?
今日のエリカは、普段とは違って、指尻ゑ梨花だ。
この陸という若者も女に飢えているわけではないはずだ。
さらに、この坊やは、エリカの色香に迷ったわけでもないのだ。
世界を構成するパーツの寸法が、全て違っている夜だった。
「リクくん、私の胸、触ってみて」
「うん」
エリカに言われたとおりに、陸は手を伸ばしてくる。
「ほら、女性とは感じが違うでしょう?」
「でも揉めるね、ははは」
何がおかしいの?
笑うような場面ではないと思うけど。
「その為に、造ったの」
「じゃ、手をもっと下のほうに動かしてみて」
陸の手がエリカの下腹部に移ってゆく。
「リクくん、あんたね、男のペニスを握ってるのよ。ホモっ気がない男なら気持ち悪いはずよ」
「そうかなあ」
「男のペニスなのよ。気持ち悪くないの?」
「お姉さんのなら、いいよ」
この子は、男どうしの性交が変態だという認識がない。
失踪した男や女が最後に関わった人間、ファック・パペット、、。
彼らはハーメルンの笛吹き男に誘われた子どものように、ファック・パペットに会った後、その姿を消している。
エリカは、膝を立てて太腿を開いた。
「じゃ、女の代わりになるところを触ってみて」
「お尻?」
「そうよ。私にはペニスが付いてるんだもの。あとはお尻の穴しかないじゃないの。」
ここで健全な男なら、程度の差はあるにしても、必ず嫌悪感を示す。
しかし、特に厭悪を見せるわけでもなく、陸はエリカのアナルをまさぐり始めた。
「あんん」
これは演技ではなかった。
忌避感や恐怖より快感が先に来る。
例えば、この青年がファック・パペットだとしても、彼自身が何らかの直接的な暴力を振るえるとは、とても思えなかった。
それに、ここから先は、エリカとしても精神医指尻ゑ梨花としても、それぞれ違う意味で興味があった。
「お尻の穴、感じるの?」
「指、中に入れて」
「こう?」
「ゆっくり、少しずつね」
陸の指がエリカのアナルに侵入してくる。
エリカはこうして指でくじられると、気持ちよくて陶然となってしまう。
「お姉さんのペニス、立ってきたよ」
「ねえ、リクくん、男のお尻の穴をいたぶるのって、初めてなんでしょう?」
「うん。初めてだよ、女のあそこみたいだね」
これは本気で言ってるのだろうか?
「女の人のみたい?」
「僕の指を締めつけてくるよ。すごいね」
「いやらしい、って言ってよ」
「女のあそこよりいやらしいね」
「リクくん、上手ね。いつもこんな風に指、使って女のコを悦ばせてるの?」
「まあね」
「あんうぅぅ」
「こうやって、擦るといいみたいだね」
「あんっ」
エリカからは、陸がどの指を使っているのか見えないが、たぶん中指なのではないだろうか。
ずいぶん奥まで犯入してきて、肛壁の粘膜を絶妙にいたぶられて、もう泣きそうなぐらいの快感がエリカを襲っていた。
「お姉さんのペニス、ギンギンにボッキしてるよ」
「リクくんが上手だからよ」
「ほらほら、これでどう?」
「リクくん、キスして」
陸はエリカの首の後ろに腕をまわし、抱きしめるようにして口唇を合わせた。
エリカはうっとりと舌をからませながら、陸の指先に酔い痴れつつあった。
・・・危ない。
指尻ゑ梨花は、ニーチェの言葉、「怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。 」の一節を思い出した。
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