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【 旅と温泉グルメ しゃぶれどもしゃぶれども(番外編) 】
05: はるかなる外郎
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昨日は、いやもう今日か、、深夜まで続いた結構ハードなお仕事内容だった為に、いつもは無理をしてでも早い目に起床するんだけど、今回は無理という感じで寝過ごしていて、眠たい目を擦りながらマンションのドアをあけると、そこに弟のJがいた。
家政婦さん代わりに、アンがJの家を訪ねる事はあっても、その逆は滅多にないことで、これは凄く珍しいことなのだ。
聞けば、職場関係の小旅行で伊勢・鳥羽方面に行った帰りに買ったおみやげを届けにきたのだそうだ。
一時はセックスカルチャーの最先端を生きてきたこの弟が、社員旅行に行ったということも、そこでおみやげを買い、しかも届けにくるなんって、時代も変わったものだけど、「日本の核武装を」なんて事を政治家が言う時代なんだから、これはさして驚くようなことじゃないのかも知れない。
「防腐剤を全然使っていない生ういろうだってさ、日持ちがしないから一日で食べた方がいいぜ。」と言って、Jが旅行鞄の中から取りだしたのは、「虎屋ういろ」だった。
旅行鞄を持っていることから察するに、一泊の旅程で午前中解散の親睦中心の小旅行だったようで、そのままこちらに来たようだ。
お伊勢さんの内宮前支店で買ったのだという。
手に取ってみるとずっしりと重い。
「以前、伊勢内宮前のおかげ横丁って面白いけど、人が多すぎてとか言ってたよな。その時は、おはらい町で虎屋のういろ買うの諦めたって」
・・・そんな事、言ったっけ。
確かに、おかげ横町には相方と3回ぐらいは行ったことがあるけれど、、、。
第一、アンは甘党じゃないので、こういった類のものはあまり得意じゃない。
包みを開けると、よもぎでつくられたと思しきういろうで、小倉ういろをサンドしたものと、こしあんに大粒な栗が入った栗ういろうが出現。
「ようかんとういろうなら、ういろうの方が好きなんだろう?」
それは誰かに話した事があると言うか、アンの嗜好としては合っている。
とすれば、ういろうに関する話は、自分で記憶がない程の些細なものとしてJに漏らしたのであり、Jはそれをしっかり聞いていた事になる。
弟とは長い間、離れ離れになっていて、一時はある事情で確執もあった二人だから、嬉しいような哀しいような複雑な気分になった。
「あっ、お茶入れるね。」
「いや、コーヒーの方が合うんじゃないか、なんだかそんな気がする。」
弟の予見通り、黒砂糖を使って甘味を抑え気味にしたこのういろう、コーヒーにかなりフィットした。
あっさりとした上品な甘味と、モチッとした歯ざわりは、苦みの強い熱めのストレートコーヒーだとかなり数がいけて、二人であっと言う間に完食した。
二人とも、リミッターを外せばこれくらいは簡単だ(笑)。
まあそれぞれの糖質制限の意味は違うけれど。
聞けばこの虎屋、創業大正13年からずっと手造りにこだわりつづけてきたお店らしくて、季節で変わる「季節ういろ」を含めると約35種類ほどの品揃えがあるそうだ。
確かに、サンドイッチ状の2色の彩りが可愛いよもぎういろう等を見ていると、目で見る楽しみも相当にありそうで、それなら数に広がりをだす意味もある。
ユニクロのカラー戦略みたい(笑)。
ちなみにういろうは、漢字で書くと「外郎」。
本来の意味は知らないけれど、語感からするとJにぴったりのような気がして、なんだか嬉しくなった。
※ その後、「外郎」の語源について調べた所、これにはかなり長い物語があるようで、あの有名な小田原の「ういろう丸薬」と和菓子の「ういろう」の関係が、この物語の結節点のようです。
そこを遡ると「外郎」の起源は、海を渡って中国大陸に求められるのだとか。
確かに「外」を「うい」と読むのは、日本語の大勢からするとちょっと異質な感じがしますもんね。
この物語、大昔の中国の中級役人職である大医院礼部員外郎を勤めていた陳延祐さんが、日本に亡命してその後云云かんぬん、、って話らしいです。
ご興味のある方はご自分で(笑)。
家政婦さん代わりに、アンがJの家を訪ねる事はあっても、その逆は滅多にないことで、これは凄く珍しいことなのだ。
聞けば、職場関係の小旅行で伊勢・鳥羽方面に行った帰りに買ったおみやげを届けにきたのだそうだ。
一時はセックスカルチャーの最先端を生きてきたこの弟が、社員旅行に行ったということも、そこでおみやげを買い、しかも届けにくるなんって、時代も変わったものだけど、「日本の核武装を」なんて事を政治家が言う時代なんだから、これはさして驚くようなことじゃないのかも知れない。
「防腐剤を全然使っていない生ういろうだってさ、日持ちがしないから一日で食べた方がいいぜ。」と言って、Jが旅行鞄の中から取りだしたのは、「虎屋ういろ」だった。
旅行鞄を持っていることから察するに、一泊の旅程で午前中解散の親睦中心の小旅行だったようで、そのままこちらに来たようだ。
お伊勢さんの内宮前支店で買ったのだという。
手に取ってみるとずっしりと重い。
「以前、伊勢内宮前のおかげ横丁って面白いけど、人が多すぎてとか言ってたよな。その時は、おはらい町で虎屋のういろ買うの諦めたって」
・・・そんな事、言ったっけ。
確かに、おかげ横町には相方と3回ぐらいは行ったことがあるけれど、、、。
第一、アンは甘党じゃないので、こういった類のものはあまり得意じゃない。
包みを開けると、よもぎでつくられたと思しきういろうで、小倉ういろをサンドしたものと、こしあんに大粒な栗が入った栗ういろうが出現。
「ようかんとういろうなら、ういろうの方が好きなんだろう?」
それは誰かに話した事があると言うか、アンの嗜好としては合っている。
とすれば、ういろうに関する話は、自分で記憶がない程の些細なものとしてJに漏らしたのであり、Jはそれをしっかり聞いていた事になる。
弟とは長い間、離れ離れになっていて、一時はある事情で確執もあった二人だから、嬉しいような哀しいような複雑な気分になった。
「あっ、お茶入れるね。」
「いや、コーヒーの方が合うんじゃないか、なんだかそんな気がする。」
弟の予見通り、黒砂糖を使って甘味を抑え気味にしたこのういろう、コーヒーにかなりフィットした。
あっさりとした上品な甘味と、モチッとした歯ざわりは、苦みの強い熱めのストレートコーヒーだとかなり数がいけて、二人であっと言う間に完食した。
二人とも、リミッターを外せばこれくらいは簡単だ(笑)。
まあそれぞれの糖質制限の意味は違うけれど。
聞けばこの虎屋、創業大正13年からずっと手造りにこだわりつづけてきたお店らしくて、季節で変わる「季節ういろ」を含めると約35種類ほどの品揃えがあるそうだ。
確かに、サンドイッチ状の2色の彩りが可愛いよもぎういろう等を見ていると、目で見る楽しみも相当にありそうで、それなら数に広がりをだす意味もある。
ユニクロのカラー戦略みたい(笑)。
ちなみにういろうは、漢字で書くと「外郎」。
本来の意味は知らないけれど、語感からするとJにぴったりのような気がして、なんだか嬉しくなった。
※ その後、「外郎」の語源について調べた所、これにはかなり長い物語があるようで、あの有名な小田原の「ういろう丸薬」と和菓子の「ういろう」の関係が、この物語の結節点のようです。
そこを遡ると「外郎」の起源は、海を渡って中国大陸に求められるのだとか。
確かに「外」を「うい」と読むのは、日本語の大勢からするとちょっと異質な感じがしますもんね。
この物語、大昔の中国の中級役人職である大医院礼部員外郎を勤めていた陳延祐さんが、日本に亡命してその後云云かんぬん、、って話らしいです。
ご興味のある方はご自分で(笑)。
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