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【 東南アジアの旅 】

11: 初めてのバリ旅行 ジャランジャランは明日から ⑤買い物エクスタシーとインド洋

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 ガイドのヤナン君に、この旅程中に時間の余裕があるからと誘われて出向いたのが、工芸村”チュルク”だった。
 チュルクは現地ガイドさんが、観光客を連れていく定番のような場所で、そこにバックマージンの臭いがプンプンしてて好きにはなれない。
 でも相方は、バリに来たら銀細工と決めていたようで、相方に強力に押し切られて、チュルクのシルバー工房へ寄ることにした。

 結局、アンも湧いて出るような物欲に負けて、ブレスレットや指輪など、あれやこれやと買い込んでしまった。
 最後に、二人で寄って集って全部で725万Rpの銀細工の買い物を250万Rpに値引きさせた。
 店員さんが店長にお伺いをたてにいかなければならない程の値引率のようだった。
 公表、約6割引きである。
 でも値引き交渉って、なんであんなに興奮するんだろう。
 欲望・期待・詐欺・嘘・知略・落胆そういったありとあらゆる感情が濃縮され、その荒波の中に埋没していく感覚がいいのかしら。
 ギャンブル・エクスタシーの親戚かも?

 でも、買い物が終わって、バリの村を眺めていると不思議な感覚を覚えた。
 ここバリでは、それぞれの家に門と寺が必ずあると言う。
 実際、町の何処を通っても、お供え物と、お供えものをあげる人々の姿に出くわさない日がない。
 そのお供えをあげる指先に込められた仕草には、どんな若者にでも、伝統と習慣に培われた優雅さがあるのだ。
 そして方やアンは、そんな国に居ながら、お金の駆け引きに興奮しているのだ。
 だから自分が恥ずかしいと感じるほど、純粋ではないけれど、このままの自分が好きというわけでもない。
 旅の異国の空の下の不思議な感覚だった。

 バリの超目玉観光地、クタ・レギャンを取り越してジンバランのジェンガラ・ケラミックに直行する。
 ここではセンスのいい、バリ陶器やガラス製品が展示販売されているのだ。
 ジェンガラ・ケラミックに着いて、吃驚したのは、既に田舎のウブドに慣れてしまった目から見るとここの施設は近代美術館かホテルみたいに見えるという事だ。
 もうこのあたりでは、目隠しを外されて「ここはハワイだよ」と言われても、誰も疑わない近代化ぶりを見せている。

 バリ陶器の色が好きだ。
 日本の陶器だって渋くて捨てがたいが、素直で開けっぴろげな陽光の下で見るこのポップな「緑色」は、日本では出せないと思う。

 昼食は、インド洋を眺めながらジンバランのシーフード・カフェで取った。
 ロブスターとイカを頼んだら、注文を取りに来たお兄さんがしきりに「チョイスしろ」と言う、、暫く、両者がヘッポコイングリッシュで信号を送信しあった結果、ここではオーダーにかけた食べ物はキロ売りで価格が決まる事が判った。

 日本で海鮮料理を食べる場合、生け簀から食べたい物を選ぶのと同じ仕組みな訳だ。
 もう一度、店先に戻ってみると、大きな水槽があってそこにロブスターが放り込んであった。
 如何にもバリニーズって感じのタンクトップを来た陽気で魅力的なお兄さんが「これなんかどうだ。でけぇだろ」と取り出したロブ君のでかい事といったら、、思わず「きしょー」という声が出そうになったぐらいだ。
 (その大きさもだが、あまりの生きの良さにエイリアンに登場したフェィスハガーをなぜか連想してしまった。)

「大きさもビッグなら、値段もビッグね」
 これはこの店を取り仕切っているおねえさんの言葉。
 もちろん値段の事もあるけれど、いくら好物のロブスターでも、こんな化け物は食べたくなかったので、手頃な大きさのにしておいた。
 それだって、日本の大きい伊勢エビの二倍以上はあるんだけど、、。
 お次はイカ、これは日本の漁港でよく見かける白い発砲スチロールの箱に入っていた。
 ちらっとしか見なかったけれど、結構大きな箱から一杯に盛り上がるくらい蛸や烏賊なんかが無造作に詰め込まれていた。

 そして選ばれたロブ君とイカ君は秤にかけられたあと、椰子の実の皮でバーベキューにされるのであった。
 再び注文を取りに来たお兄さんに、ビールはと聞かれたので「バリハイ」というと悲しい顔をされた。
 やっぱし、、仕方がないのでビンタンを又、注文する。

 相方はこれ又、ナシチャンプルを注文したのだが「お姉さん、これご飯とサラダ付いてくるよ。そんなに食べれるのかい?」ってウエイターに言われ、ここに来てしばらく忘れかけていたダイエットという単語を急に思い出したらしい。
 アンはもう一品、断固としてミーゴレンを注文する事にした。
 昨日の夜、ミーゴレンを食べ損ねた事を未だに引きずっているのだ。

 この店のミーゴレンは大正解だった。
 庶民的な味がしてとても美味しい。
 アンがインド洋の荒い波とミーゴレンでビンタンをちびちびやっている間に、相方はロブスターをばくばくと平らげている。
 いいんだ、この海風と煌めく光と海を見てるだけでアンは満足なんだよー。
 でもちょとだけ、ロブスター、残しとけよーー。

 ・・お代は40万Rp、半分以上はロブスターの値段だ。
 そんな事をぶつぶつと考えながら、小さい頃につれていってもらった事のある伊勢志摩の人気のない漁村みたいなジンバランのシーフードカフェを離れた。

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