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第4章 異世界で相まみえる二人の王子
47: 宇宙人が教える光の壁の秘密
しおりを挟む「ありがとうございます。お陰で命拾いしました。」
「いや、礼を言われる筋合いじゃないですよ。こういう危険回避を含めてのガイド役ですから。」
画面に写った双子の宇宙人を相手にしながらアレンは余裕の笑顔を見せて言ったが、彼のズボンの股間はしめっていた。
混沌王によって偽バンパイアからディウォーカーになったからと言って、心まで剛胆になった訳ではないのだ。
「あんたらに提案なんだが、ここで引き返してもいいんだぜ。ここからUターンするなら後金はいらない。この後、何が起こるか判らない。それが外界だ。なんでも命あっての物種だと俺は思うがな。」
珍しく弾駆が横から口をはさんだ。
いい加減な気持ちでガイドを続けるなら別だが、この道行きを本気でやるとなったら、勝手を得ない自称宇宙人を引き連れて、外界深部部に進むのは生半可な事ではない。
なにしろ相手はキリンの玩具のようなビーグルに乗っているのだ。
「、、そういう訳には行きません。母船には仲間達が待っている。失礼だが、こんな星で朽ち果てることは耐え難い。我々は長い航海を終えて母星に帰る途中だったのです。」
「、、気持ちは判るよ。誰にとっても生まれ故郷は大切なものだ、、それに確かに、いまん所、この星はクソみたいだからな。」
葛星が投げやりに言った。
「でも本当に光の壁にあなた方が求める故障したパーツの代替え品はあるんですか?その確率が低いなら、今、相棒が言ったように引き返すのも一つですよ。俺達は何度か光の壁の間際までいってる。でもそんな物があるような感じがしない。」
「いやあります。あの光の壁のエネルギー形態は、我々の駆動エンジンのそれと酷似している。」
「って、アレは自然現象じゃないのか!?あんたらにしたら、掘り当てた石油をそのままガソリン車に入れるようなもんじゃないのか?」
葛星は驚いたように言った。
「光の壁は自然現象ではありませんよ。確かに人工的なものと呼ぶにはあまりにも超絶的ですが、、。しかし完全な正円を描き、真っ直ぐに成層圏と宇宙の境目まで届くシリンダーのような自然現象が存在しますか?」
「完全な正円?こいつは驚いた、確かにサルベージマンの仲間内じゃ、光の壁は湾曲してるんじゃないかとか、とてつもない高さがあるんじゃないかとか、言われていたけど、、な。」
アレンが感心したように言った。
「光の壁の全体像を調べるのは、あなた方の測量技術では無理でしょうね。ロストワールドの全技術を再現できれば、話は別かも知れませんが、、。」
「へこむ言い方だな。まあいい。それでもさっきアレンが言ったように、あの周りには何もないぜ。」
「周辺にはね。我々が行こうとしているのは、光の壁の向こう側、つまり中です。その中に我々の求めるものが在るはずだ。そこあるのは、あの光の壁を完全に制御している技術ですよ。」
アレンと弾駆がお互いの顔を見合った。
「あんたら、あの光の壁の中に入れる方法があるのか?」
「入れます。先ほど申し上げたでしょう。あの光の壁のエネルギー形態は我々の駆動エンジンのそれとほぼ同じだと。我々はあれの制御の仕方も判っています。もっと早く気付くべきだった。ここに来るまで、随分、遠回りをしましたよ。なまじっか、この星の文明程度が高いので、それが目眩ましになっていたのです。」
確かに、ゲヘナはあの光の壁を少しだけコントロールしていた。
光の壁は、まったく知性の手が及ばないというような神の領域にあるものではないのだろう。
「、、、、、。」
弾駆は黙り込んだ。
「入れます」、その一言に相当なショックを受けたようだった。
「じゃ、、なぜあなたがたは、あの地雷については、制御というか、予見ができなかったんです?」
アレンの方は声が弾んでいる。
こういった知的好奇心を刺激する疑問こそ、アレンの大好物だったからだ。
「あなた方が地雷と呼んでいるあの現象は、光の壁とは直接的な繋がりはありません。あれは別物です。だから私達には、あれを感知する技術はないのです。出来なくはないのだろうが、時間がない、あなた方を雇う方が圧倒的に早い。光の壁が、地球外のものなら地雷は地球産です。ただし地雷が発生したのは、あの光の壁の影響です。地雷は光の壁が、この世界の時空に与えた歪みです、歪みがなければ、地雷は本来、知覚さえ出来ないこの世界の前提、普通のもので、あんな風に顕在化しません。」
「あって当たり前の普通のもの、、、だから地雷は、第六感でしか感知できないのか、、。あれは当たり前のものが、当たり前でなくなっている事への違和感なんだな。」
アレンがひどく納得したように言った。
「もう一つ付け加えるなら、この星の時空の成り立ちは、他の星、あるいは他の星空のもの比べると、かなり特殊です。貴方たちには、特異に見えるあの地雷の方がスタンダードだとも言えます。ただ誤解して貰っては困りますが、この星の特殊性は、物理現象の話ではありませんよ。時空の話です。この星の時空はすでに歪んでいる。我々はその時空の歪みを、無理矢理造り出して、宇宙航行を可能にしているのです。」
「、、、時空の成り立ちね、、。結構な話だ。話は尽きそうにないが、今夜の所は、もうお開きにしようじゃないか、、明日の朝も早い。この世界じゃ、注意力の低下が命取りになる、、な?アレン。」
弾駆は自分の言葉の最後を、アレンに向かって言った。
アレンは興奮しきっていて、もっと喋り続けたいように見えたし、それを受ける宇宙人達の表情は全く変わらなかった。
ほって置けば何時までも会話は続くだろう。
宇宙人は眠らないのかも知れない。
だが弾駆は弾駆で、宇宙人の話を聞く中で自分に生まれた新たなプランを一人静かに吟味する必要があったのだ。
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