事故から始まる物語

maruta

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仲間

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 詩音と口を聞かない宣言をして練習をしている途中、休憩中に照先輩と話をしていた。

「あの、照先輩」

「ん?なに?」

「帰り一緒に帰ってもいいですか?」

「いいよ~、詩音も?」

 詩音も一緒なのかと聞かれたが詩音なんて知らないと思い答えた。

「いえ、私1人です!」

「え、喧嘩?」

「はい、詩音とは口を聞かないと言った来ました!」

「そうなんや、じゃあ2人で帰るかぁ」

 照先輩に喧嘩してるのか聞かれたので答えると照先輩は2人で帰ろうと言ってきて聞き返した。

「え?飛鳥先輩は?」

「絶賛喧嘩中~」

「一緒ですね」

「やな~」

 照先輩も飛鳥先輩と喧嘩中らしく2人で帰ることが決まった。
 練習が終わり帰る準備をして体育館を出ようとすると詩音がやってきた。

「優希!ごめん!話聞いて欲しい!」

「詩音と話すことは無いから!私は照先輩と帰る約束してるから!」

 そう言って詩音を置いて外に出ると飛鳥先輩と照先輩がいて、飛鳥先輩も照先輩に謝っているみたいだったが照先輩に近付いて、照先輩は私が出てきた事に気付くと「優希と帰るから」と言って飛鳥先輩を置いて私と一緒に歩き始めた。飛鳥先輩も詩音も帰る方向は一緒なので少し後ろを付いて来ていた。

「あの、いいんですか?」

「いいんよ、私はすぐ許すほど器は大きくないから」

「あの、何があったか聞いても大丈夫ですか?」

「んー、まぁ制服やなくて体操服を着とるのに関係があるってだけ言っとく」

「そうなんですね」

「そっちはその鎖骨のやつやろ」

「・・・はい、照先輩に見られたって言ったら照先輩なら安心って笑っていてもしかしたら他の人だったかも知れないのに謝らずヘラヘラ笑ってたので・・・」

「そりゃそうやわなぁ」

 照先輩が怒っている理由は体操服を着ているのに関係があるらしいが分からなかった。私が怒っている理由を話すと照先輩は同調してくれた。

「怒ってる理由は詩音に言ったん?」

「・・・言ってないです。」

「そう、詩音が自力で分からんようなら言ってあげんと繰り返す事になるよ」

「はい」

「まぁ、今は気が済むまで怒ればいいと思うよ」

 照先輩はそう言いながら私の頭をぐしゃぐしゃと撫でて来た。

「照先輩は撫で方が雑ですね」

「なに?丁寧に撫でればいいん?」

「いや、そういう訳じゃないんですけど」

「あはは!まぁ適当に撫でた方が気が楽やろ!」

「どういう事ですか?」

「んー、どういう事やろ?」

「?」

 照先輩の撫で方が雑だと言うとその方が気が楽と言われてよく分からなくて聞き返したが照先輩も分かっておらず謎だけが残った。

「照先輩は喧嘩をして飛鳥先輩を嫌いにならないんですか?」

「え?ならんよ?」

「そうなんですか?」

「え?優希は詩音の事嫌いになったん?」

「いえ、なってないです。でも、照先輩は好きって気持ちないんですよね?」

「いや、ライクの好きはあるよ?家族も好きやし、友達も好きやし簡単には嫌いにならんやろ」

 照先輩は恋愛感情がないだけで家族や友達の好き嫌いはあるんだと改めて思った。

「なるほど、でも私は友達だと嫌いになるかもですね。」

「まぁ、そこはどれくらいの付き合いかにもよるやろなぁ。幼馴染みと昨日仲良くなった友達が同じイタズラをしてきて、両方許せる度合いが一緒なのかって言われたら違うやろ?」

「そうですね、言いたいことは分かりました!」

 照先輩の話を聞いて私も昔から知ってる人と最近知っている人が同じからかいをしてきた時に昔から知っている方が冗談だと区別できるなと思った。

「なんか、飛鳥先輩が照先輩を好きになった理由がなんとなく分かる気がします!」

「そうなん?」

「はい、照先輩って良い事も悪い事も考えてるし、他人の事も自分の事で置き換えて言ってくれるので、一緒にいて安心するって言うか居やすいみたいな?感じです」

「へぇ~、そうなんやぁ」

 照先輩は自分の事もそんなに興味がないのか軽い返事をしていた。私も他の人から見たら自分とは違う印象?を持たれたりしているのかなと思って歩いていた。
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