事故から始まる物語

maruta

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空気になろう2

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 私は今窮地に立っているのだと思う。飛鳥先輩の笑顔がすごく怖いと感じて、その状態で「照は私のだよ?」と言われて何故こんな事になっているのか分からなかった。飛鳥先輩は詩音と話していたはずなのにと思い、詩音の方を見ると詩音は壁を見つめていた。なんでだ!と思っていると飛鳥先輩が話しかけてきた。

「優希ちゃん、分かってる?」

「は、はい!分かってます!!」

「じゃあ、なんでこうなってるか分かってる?」

「えっと、その、それは・・・」

「分からない?」

「・・・分からないです・・・」

 飛鳥先輩の圧が凄すぎて正座をしてしまった。冷や汗も出てきて早くこの場から立ち去りたいと思ってしまった。詩音は相変わらず壁を見つめていて照先輩は聞いているが意味が分かってない顔をしていた。

「照と近すぎじゃない?」

「え、」

「照は友達感覚でやってると思うけど、優希ちゃんには詩音ちゃんもいるし分かるよね?」

「は、はい!分かります!分かりました!ごめんなさい!」

 飛鳥先輩に照先輩と近いと言われてさっきの出来事を思い返した。もし私が飛鳥先輩の立場で詩音が飛鳥先輩とあんなに引っ付いていたら嫌だと思って、それを自分がしてしまったのだと分かったらもう謝ることしか出来なかった。そんな状況で照先輩が声を出した。

「飛鳥、そんな事で怒ってんの?」

 照先輩がとんでもない事を言って私は『照先輩・・・今はそれを言う時じゃないんです!』と思った。恐らく詩音も思ったのだろうか壁を見つめていた目を閉じていた。すると、飛鳥先輩が言い始めた。

「そんな事?そもそも照が距離感っていうのを考えていれば私はこんなに怒っていないんだけど?」

「何言ってんの?普通の距離感やん?」

「照の中ではでしょ!少しは考えてよ!」

「急になんなん?今までなんも言ってなかったやん」

 先輩たちが言い争いを始めたので止めようか悩んだが私にはこの言い争いに入って行く勇気がなく、私も空気になろうと床を見つめた。

「言わなかっただけでずっと思っていたよ!」

「じゃあ言えば良かったやん。言ってくれんと飛鳥の気持ち分からんし察してって思われても無理なんやけん、言ってよ」

「・・・ごめん」

「なんで謝んの?」

 照先輩は飛鳥先輩が言わずに思っているだけだと察せないと言い、飛鳥先輩はそうだと思ったのか謝っていたが何故か照先輩は謝ることに少し怒っていた。

「私が言っていないのに八つ当たりしたから。」

「それはそう思ってたから怒ったんやろ?なら、謝らんでいいやろ。なんなら、そう思うくらい距離感を間違えてた私が謝るべきやないん?」

「言われないと分からないって言ったのは照じゃん」

「だったら、今言えばいいやん。近いって嫌だったってそれでいいやん。謝る必要ないやろ。」

「・・・優希ちゃんと距離が近くて嫌だった。ベタベタしてて嫌だった。私にもあんまり見せてくれない笑顔見せてて嫌だった。」

「うん、ごめん。気をつけるけどよく分からんから飛鳥がまた近いと思ったらその時また言って」

「うん」

 飛鳥先輩が言っていた距離感は好きな人同士だと分かることなのかもしれないが、その気持ちがない照先輩には察することも思う事もないらしく言ってくれないと分からないと言っていた。言わないと分からないと言う点においてはそれは私たちにも当てはまる事だと思った。照先輩は恋愛においては色々と分からないみたいだが、他の考え方は凄くいいなと思った。
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