事故から始まる物語

maruta

文字の大きさ
上 下
56 / 88

空気になろう1<詩音目線>

しおりを挟む

『』 :心の声
「」 :会話など
 ---------------------------------
 優希と喧嘩?をした時に優希の事を考えずに自分の気持ちを押し付けていたと思った。飛鳥先輩は照先輩の気持ちを理解した上でお互いが納得の行く形でやっていた事を知り、優希と照先輩は違うが気持ちを理解する点に置いて飛鳥先輩はすごいと思い、飛鳥先輩みたいに相手の気持ちを思うように優希の気持ちを分かっていきたいと思っていた。
 昼などに飛鳥先輩と話す機会が増えて改めて思うのは、飛鳥先輩は照先輩の事が本当に好きで好き過ぎてちょっと怖いと思ってしまった。今日もご飯を食べた後、飛鳥先輩と話していたら優希が「負けた!」と叫び始めた。
 照先輩と携帯ゲームをしていて勝てずに叫んでいるみたいだった。優希は「もう1回!」と照先輩に言い照先輩は「しょうがない」と言いながらもう1回ゲームを始めた。それを見ていると飛鳥先輩が話しかけてきた。

「優希ちゃんは負けず嫌いだね~」

「ですね、照先輩はゲーム上手いんですね」

「上手なのかは分からないけど、よくゲームやってるからね」

 そんな話をして優希に視線を戻すと優希は照先輩の顔の前に腕を出してゲームの妨害を始めた。

『優希!?なにやってんの!怒られるよ!?』

 そう思いながら見ていると照先輩は凄く文句は言っていたが怒っているようには見えなかったので安心した。けど、照先輩が妨害を避けようとするので優希が照先輩に乗りかかり始めた。

『優希!?近すぎない!?何してるの!?』

 そう思っていると横から声がしたのでそちら側を見た。

「2人は仲が良いみたいだね~」

 見ると飛鳥先輩が笑顔でそう言っていた。しかし、私はその笑顔が笑っていて笑ってないように見えた。

『優希!やばいよ!これ、怒らせるとめっちゃ怖いやつだよ!!』

 そう思い、優希の方を見るとまだ乗りかかりながらゲームをしていた。そして、妨害していた優希の方がまた叫んでいたので、優希が負けたのかと思ったがやっと離れると思って少しほっとしていたら照先輩が笑い始めた。

『え、照先輩があんなに笑ってるの初めて見た!』

 照先輩の珍しい姿を見て感動に浸っていると凄い悪寒がした。飛鳥先輩の方を見ると凄い空気を纏って笑っていた。

『やばい・・・もうやばいしか出てこない』

 優希にはやく離れてと思いながら見ると次は照先輩からイヤホンを片方借りて2人で携帯を見ていた。

『!!ずるい!まだ私もした事ないのに!!』

 短い動画でも見たのか5分もしないうちにイヤホンを返していたが、私はまた悪寒を感じておもった。

『分かる。見なくても分かる。優希、やばいって!どうしよう。私は関係ないよね!?・・・よし、空気になろう!優希、頑張れ!』

 私は優希を見捨てて空気になる事を選んだ。案の定、凄い空気を纏った飛鳥先輩の圧が横に居る私にはやばいのが分かった。優希はいつ気付くのか見ていたら優希と目が合ったが私はすぐに逸らして壁を見つめた。

『優希、君は触れてはいけない部分に触れたのかもしれない・・・』

 そう思っていると横で笑顔の飛鳥先輩が声を出した。

「優希ちゃん、照は私のだよ?」

「へ?」

『終わった・・・』

「?」

 私は一瞬だけ優希と照先輩の方を見た。飛鳥先輩の言葉に驚いてちょっと引き攣った顔をしている優希とあの圧が分かっていないのか照先輩はキョトンとしていた。

『照先輩の鈍さか空気が読めていないのか分からないけど今はそれが羨ましい・・・』

 そう思いながら私は何が起きても空気になり壁を見つめ続けようと心に誓った。
しおりを挟む

処理中です...