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追いかけられた?それなら地下へ逃げ込もう!!
しおりを挟む横を見ると、エルちゃんも僕と同じように服の袖をまくり右腕を見せていた。そして、その右腕には十字架の模様があった。ふと、おじさんを見ると、顔が真っ青になっていた。
「おじさん、大丈夫ですか?顔色があまり良くないですよ」
「誰か、助けてくれ!!!ここに悪魔の兄弟がいる!」
おじさんは声を張り上げて大声で叫んだ。僕は何が何だか分からなかった。さっきまで、普通に話していたおじさんが、この十字架の模様見た途端、人が変わったように、叫びだしたからだ。
「おい、あいつらが悪魔だ捕まえるぞ!」
この掛け声一つで、何人もの大人が狂ったように僕たちめがけて走り出した。そして、僕たちも意味も分からず走り出した。
「エルちゃん、走るぞ!」
「エル、さっきいっぱい走ったからもう走れない」
「分かった、僕の背中に乗って」
「うん!」
後ろを向くと大勢の大人が追いかけてきている。僕は道も分からず走り続けた。曲がっても曲がっても人の大群。体力も限界に近づいてきた頃、建物と建物の間からひょこっと女の人が出てきて手を招いた。このまま逃げても捕まると思った僕は一か八かその女の人がいる建物の間に飛び込んだ。
「あのー」
「静かに!今はダメ」
「・・・・・・」
「人がいなくなったし、まずは自己紹介よね!」
「あのー」
「あぁ、ごめんごめん何?」
「あのホントに僕たち何もしてないんです。ただおじさんがパンをくれるって言うからもらおうとしただけで・・・」
「分かってる分かってる。だから助けたんじゃない」
「本当にありがとうございます!ほらエルちゃんもお礼言って」
「ありがとう!お姉ちゃん」
「うわー可愛い!!エルちゃんって言うの?」
「サール・エルです!6歳です」
「さっき自己紹介しようって言ったけど、やっぱりここじゃ危険だから私の家に来てしよ!」
「助けてもらったのに、家までお邪魔していいんですか?」
「いいよー、それじゃあついて来てねー」
「あっ、ちょっと待ってください!」
その女の人は猛スピードで走っていった。信じていいのか分からないが僕もエルちゃんを背中に乗せて、なんとか女の人の姿を追った。
20分、30分ぐらい走り続けた所で、女の人は立ち止まった。誰にも追いかけられずに済んだが、息は上がってクタクタだった。
「さぁ、家についた!ようこそ我が家へ!」
女の人がゆびを指した先にあったのは、きれいに整備された畑だった。
「え?畑の中に住んでるんですか?」
「まぁまぁ、そんなに焦るなって。こっちに来てみなよ」
「えっ、はい」
「さぁ、この辺の地面の土をどかしてみて」
エルちゃんが背中にいたので、足で土をどかしてみると銀行にある金庫のような扉が出てきた。
「さぁ、開けてみて!」
「エルが開けたい!!」
「エルちゃん可愛いー」
「分かった、一人じゃきっと重いだろうから僕と一緒に開けよう」
「そして、お兄ちゃん優しいー」
「うん!!」
「よし、開けるぞ!せーの」
扉は見た目よりも軽く開き、下を覗くと2.5mぐらいの深さだった。
「この地下が私の家、はしごがあるから気をつけて降りて」
「エルちゃん一回背中から降ろすね、一人ではしご降りれる?」
「うん、多分」
「よし、僕は先に下で待ってるから、怖かったらいいな」
「分かった!!」
僕は無事怪我をすることなく下りられた。そしてエルちゃんに聞いてみた。
「どう?エルちゃんは一人で降りられそう?」
「頑張ってみる!」
そしてエルちゃんは少し時間がかかったが、一人で下りられた。そして最後に女の人が扉を閉めて下りてきた。扉を閉めると真っ暗で何も見えなかった。
「ラルお兄ちゃん、エル怖い。どこにいる?」
「大丈夫僕は隣にいるよ」
「エルちゃん、安心して今私がロウソク点けるから。あれどこだ?これかな?これ、フランスパンか」
いくら暗闇でもロウソクとフランスパンの区別はつく自信がある。
「あったあった、それじゃあロウソク点けるねー」
『ぼっ』という音とともにあたりが明るくなった。あたりを見回してみると目の前にはまた扉があり、壁は石みたいなのが積まれている。上を見るとさっき入ってきた扉があった。そして、女の人が喋った。
「エルちゃん、目の前の扉開けてくれる?」
「分かった!!」
エルちゃんが扉を開けると長い廊下がありいくつかの扉があった。その突き当りにも扉が1つあった。ここは玄関だろう。
「まず色々話したいことがあるからリビングに行って、その後家の中を案内するね。多分お父さん家に居ると思うんだけど・・・」
「お父さんも一緒に住んでらっしゃるんですね。そんな所にお邪魔して大丈夫なんですか?」
「うん!全然大丈夫!むしろお父さんは大歓迎だと思うよ。」
「ならいいんですけど」
「さぁさぁエルちゃん、その扉を開けてみてよ!」
「えっ、開けていいの?」
「もちろん!」
エルちゃんはその女の人の声を聞いてからリビングにつながる扉を開けた。扉を開けた先はまるで住宅展示場などでしか見たことがないくらい綺麗なリビングだった。
家具は茶色を基調としていて、部屋の雰囲気に合っている。とにかく一言でまとめるならオシャレだ。そして部屋の奥に男性が一人座っている。きっと、あれがこの女の人のお父さんだろう。
「お父さんやっぱ家に帰ってきてたのね」
「あぁ、その子達は?」
「この人たちは、町中で追いかけられてたから助けたの」
「それはそれは大変だったろう。こんな小さい子まで。あいつらの思考はどうなってんだ。本当に」
「まぁまぁお父さん。落ち着いて。あぁごめんね、二人ともそこの席に座っていいよ。」
「あっ、はい。失礼します」
「そういえばまだ名前聞いてなかったね。私の名前はリター・スーベアー。そしてお父さんが、ファルソー・スーベアー」
「僕の名前がラルで、こっちの娘の名前が・・・」
「まってラルお兄ちゃん、エル自分で話せる!!エルの名前はエルです。6歳です。」
そう言って、エルちゃんが出した指が5本に見えたのは、可愛いし黙っておこう。
そして、リターさんのお父さんのファルソーさんが話し始めた。
「二人とも急に追いかけられて驚いただろう、怪我はないか?」
「怪我は大丈夫なんですけど僕たちなんで追いかけられたか分からなくて。ただ、パン屋のおじさんがパンをくれるって言うから貰おうとしただけなのに・・・」
「その時、右腕を見せなかったか?」
「そういえば見せました。見せた途端おじさんの顔色が変わって、そしたら沢山の大人が追いかけてきました」
「やっぱりそうか。今から少し残酷な話をするが、この世界で生きていくには必要な話だ。聞いてくれるか?」
「えっ、はい。分かりました、お願いします」
「それじゃあリター、あっちの部屋でエルちゃんと遊んどいてもらえるか?」
「分かったお父さん。エルちゃん!あっちの部屋でリターお姉ちゃんと遊ぼ!!」
「ラルお兄ちゃん、リターお姉ちゃんと遊んでくる!」
「分かった、迷惑かけるんじゃないぞ」
「はーい」
広いリビングには、ファルソーさんと俺だけが残された。そして、ファルソーさんは話し始めた。
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