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柵の近くを散策しましょう

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ー次の日ー

「痛い痛い!エルちゃん降りて!」


 僕は、エルちゃんに体の上で飛び跳ねながら起こされた。せっかくの転生してからの初めての朝だったのに。

こんなことを考えている間にもエルちゃんは俺を起こそうとする、もう起きているのに。


「ラルお兄ちゃん早く起きて!今日はエルと遊ぶって約束したでしょ」

「分かったから少し降りて!」

「そうよエル、ラルくん困ってるでしょう降りてあげなさい、それから朝ごはんがもうできるからお父さん起こしてきて」

「はーーい」


こうして僕は一命をとりとめた。そして朝ごはんを食べに行こうとベッドから立ち上がろうとしたとき、思いっ切り転んだ。バナナの皮を踏んで滑ったみたいに。昨日は目を覚ましたあとすぐに寝たので、まだ体がうまく動かないのだろう。


「ラルくん大丈夫?まだ病み上がりなんだから気をつけて、ほら頭見せてみなさい」

「大丈夫ですよ、ただ歩いて少しバランスを崩しただけです。ほら、普通に歩けるでしょ」

「ならいいんだけど・・・」

「エル、おなかすいたー」

「あぁごめんごめん、ちょと待っててね。今すぐ準備するから」

「おはよー」

「あっ、おはよーございます。ライルーさん」

「おう、ラル元気か?」

「はい、さっき転びましたけどそれ以外は大丈夫です。」

「さぁ、朝ごはん食べましょ」

「もう食べていい?エルおなか限界」

「いいわよ、ラルくんもたくさん食べて」

「はい、いただきます。すごい美味しそうですね、このスープ」

「あら、そう?エルもそのスープ大好きなのよ」


 転生してから初めて食べるご飯はとても美味しかった。食べ物はあっちの世界とさほど変わりはなく、どこか懐かしい味がした。

 朝ごはんを食べ終えると、昨日約束していたエルちゃんとの遊ぶ時間だ。遊ぶ場所は家の庭。家の庭には、昨日サキルさんが言っていた柵があった。とても登れる高さではなく、見た感じだと出入り口はない。そんな真面目なことを頭の中で色々考えていると、エルちゃんがタックルしてきた。


「痛っ!」

「だってラルお兄ちゃん呼んでも無視するんだもん」

「ごめんごめん、考え事してて」

「そんなことより早く遊ぼ!」

「よし分かった!」

「じゃあ、ラルお兄ちゃん鬼ね」

「え?」


俺はてっきり女の子の遊ぶ遊びといったら、おままごととかと思っていたらまさかの鬼ごっこ!しかも二人で。これがなかなか疲れる。


「僕もう限界、少し休憩~」

「えーラルお兄ちゃん休憩早いよー、じゃあ5分だけね」

「ありがとう ぜぇはぁぜぇはぁ」


 僕とエルちゃんは家の庭にある木の下によりかかり休んだ。そして何気なくエルちゃんに提案した。


「家の外で遊ばない?そっちのほうが他の友達もいて、もっと大人数で遊べると思うんだけど・・・」

「そっかラルお兄ちゃんは、お母さんがいつも言ってること知らないんだ。いつもお母さんは外は危ないから出ちゃだめって言ってるんだよ」


 僕はこの時勝手に頭で推理した。エルちゃんのお母さん、サキルさんが外は危ないって言うってことは、外になにかある。外になにかあるってことは、この世界の秘密がある可能性が高い。もし、僕が外に出なかったらこのを世界を救えないし、何より僕自身が今度こそ死んでしまう。結論としていつかこの庭の外に出ないといけない。そしてふと疑問に思ったことを聞いてみた。


「エルちゃんは外に出たことあるの?」

「エルは一度もないよ、でもお父さんはたまに外に出てる」

「そうなんだ。何のために外に出てるかわかる?」

「前聞いたときは食べ物とかをもらいに行ってるって言ってたよ」

「そうか、ありがとう。それじゃあ一つ質問!エルちゃんは外に行ってみたいと思う?」

「行ってみたい!!それで家族全員外で遊ぶのが夢なんだー」


 エルちゃんは満面の笑みで、僕に目を輝かせながら言った。


「いい夢だね、きっとその夢叶うよ。よし遊ぶか!!」

「う!!」


 その後はエルちゃんと昼食の時間まで遊び、昼食を食べ終わったあとも夕飯の時間まで遊んだ。今日の夕飯は、焼き魚だった。この世界に来てから朝、昼、夜食べたが、どれも少し質素な気がした。別に自分が裕福だったわけではなく、至って普通の家庭で育ったのだが・・・

 そしてお風呂に入り、今日もなんとなく早めに寝た。はずだったのだが僕はあることを実行するために部屋を抜け出した。まず家の庭を歩いてみた。神様に言われた『2年以内に転生した先の世界を救わないと死ぬ』これを回避するためだ。そのためにはやはり家の外の世界に出ないといけない。

 僕は端から端まで外に出られるれるとこがないか探した。ライールさんが外に出られるのだから、どこか外に出られる出入り口があるはずだ。そして30分ほどだろうか庭の周りの柵を探した結果、一つ怪しい場所があった。夜なので見えづらかったが、よく見ると若干色が違う部分があり、そしてその部分を押してみると見事に開いた。

 もちろん外に今すぐ出ようとは思ったが一つの疑問が頭に浮かんだ。(エルちゃんをここに置いていくのか?)悩んだ末に出した答えは『一緒に連れて行く』だった。

 エルちゃんは、家の外の話をした時、目を輝かしていた。それに僕一人じゃ心細い。なので明日エルちゃんと 一緒に家の外に行くことにした。


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