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8話
しおりを挟む今日はまたあの河川敷にて葵さんと二人三脚の練習をすることになった。今日はしっかり糸じゃなくて紐を持ってきた。準備万端だ!
「葵さん、今日はちゃんと紐持ってきたから!」
「安心してください。私も家から紐持ってきました。これで、片方の紐が切れても大丈夫です」
「よし、紐も結んだし準備万端!じゃあ、練習始めよっか。まず、お互い最初に出す方の足をきめないといけないから…………」
「セイギさん、安心してください。私、家でイメージトレーニングしてきたんで、説明とかいらないです」
イメージトレーニングしてきても、最初に出す方の足は決めとかないといけないんじゃ………。てか、二人三脚のイメージトレーニングって何?!
「セイギさん、行きますよ!」
「えっ、まってまって!!」
どうやら、俺の声は葵さんには聞こえないらしい。葵さんは俺を引きずって一人でズカズカと走っていく。
「二人三脚って、意外と簡単なんですね。セイギさんもそう思いません?セイギさん?セイギさん?って、すいません、すいません!セイギさん大丈夫ですか?!」
「ううん、だめ」
「ほんとにすいません。早く病院に……」
「うそうそ、大丈夫。今度はちゃんと最初に出す方の足を決めてやろ」
「はい、ほんとにすいません………」
相当落ち込んでる。まぁ、それぐらいやる気があったってことで。
「本番はどっち足からスタートするとか、どっちが右側とか決めた?」
「茜が左足なので、私は右足からです。立ち位置は教室の席と一緒で、私が右側です」
「分かった、じゃあ今日は俺が、茜さん役やるから」
「はい、お願いします」
「じゃあ、今から俺が『せーの』って言うから、そしたら葵さんは右足、俺は左足が最初。掛け声は『1,2,1,2』でいこう」
「セイギさん、一つ質問が」
「ん、どうした?」
「走るときって左手どうすればいいんでしょう?このままだと邪魔な気もしますし………」
どうするって、肩に置けば良いんじゃ……...。あっ、今気づいたけど男女で二人三脚ってなかなかヤバくないか?体なんかもちろん当たるし、手も相手の肩とかに置かなきゃいけないし………。でも、しょうがない肩に置いてもらおう。
「葵さん、申し訳ないんだけど左手は俺の肩に」
「分かりました。あれ?セイギさん」
「どうした?」
「肩に手が届かないです」
後ろを見ると、俺の背中で葵さんの左手がジタバタしてる。こうなったら、仕方ないか。
「肩に届かなそうだったら、腰辺りに手回してもらって良い?」
「分かりました」
葵さんの左手が俺の腰に回ったのを確認し、俺は葵さんの肩に右手を置いた。決して、やましい気持ちなんて無いです。ただ、なんか、いい、におい、がしました。
なんか、悪いことをしてるきがする。いや、俺は二人三脚の練習をしてるだけ。二人三脚の練習をしてるだけ、二人三脚の練習をしてるだけ……。よし!
「準備OK?」
「はい!」
「いくよ!せーの」
ーズドーン
思いっきり転んだ。原因は分かってる。葵さん、完全に左足を先に出してた。
「葵さん、右足が先だからね」
「あっ、そうでした。すいません。もう一回良いですか?」
「うん、次行こ」
まぁ、最初だし間違いはあるよな。
「いくよ!せーの」
ーズドーン
葵さん、見間違いかな?左足を先に出してた気がするんだけど………。
「葵さん、左足が先ね。左足」
「私いつも歩き始める時右足からだから、クセで右足から歩いちゃうんですよね」
それ、先言おっか。
「じゃあ、今度は葵さんが右でやってみよっか」
「すいません、何度も」
「全然大丈夫、いくよ!せーの」
「1、」
おっ!一歩目行けた!このまま二歩目いけるか?
「2、」
おぉお!いいじゃん!次3歩目!
「ちょっと待って下さい!」
ーズドーン
葵さん、急に止まんないで!
「どうした?急に止まって?」
「私掛け声『1,2,1,2』じゃなくて、『右、左、右、左』がいいです」
どっちでもいいわ!おっと、いかんいかん。女の子には優しく優しく。
「分かった、『右、左、右、左』でいこう」
「はい!お願いします」
「いくよ!せーの」
「右、左、右、左、右」
ーズドーン
「セイギさん、どうしました?」
これ葵さんには走りやすいかもしれないけど、俺からしたら掛け声と逆の足前に出すから、めっちゃやりづれぇ!
でも、今まで転んでた葵さんがこの掛け声で出来てるなら、俺が頑張るしか無いか………。
「よしゃぁ!もう一回!!」
「どんどん行きましょう!」
「いくよー!せーの」
ーズドーン
「まだまだいくぞ!せーの」
『右、左、右、左、右、左』
「ズドーン」
最初は転びまくりだったが、練習していく内に徐々にタイミングを掴み、まともに走れるようになっていった。しかし、俺と上手く走れても仕方がない。本番は、茜&葵ペアで走るのだから。
やれる事はやった。あとは二人の頑張り次第!!
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