悪役令嬢の夫は、パルメザン星人

厨二病・末期

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4.文化が違いすぎる政略結婚

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王宮庭園のガセポの下、私は彼と見つめあっていた。吸い込まれてしまいそうな、彼の大きな複眼は、雲一つ無い青空を映している。

いや、複眼だからか視線は何処を向いているのか正直よくわからない。
多分、私を、見ている。と、思う?

「あっ。」
突然ビュッと風が吹いて、被っていたつばの広い帽子が舞い上がる。

「フォッ。」
彼は、飛んでしまった帽子を見上げる事なく掲げた右のハサミで掴んだ。
残像が残る程の素早さだった。

「あ、ありがとう。」
彼に差し出された帽子を被り直すと、つばの部分がスッパリ切れていて、チラチラとそこから差し込む日差しが眩しい。

2人の間だけ時が止まったように、風で飛んだ薔薇の花びらがクルクルとゆっくり舞い降りてくる。

太陽を背にした彼の独特なシルエットと相まって、なんだかとってもカッコイイ。まるで、古い映画世界に迷い込んでしまったみたい。

「フォッ、フォッ、フォッ、フォ。」
彼は右手ハサミを私の前に差し出し、ハサミを開いた。握手を求めているのだろうか。

何故だか心臓部分が、キュッと締め付けられて。ドクドクと鼓動のスピードが上がる。死んだ筈の私の表情筋が息を吹き返したみたいに、瞼がピクピクと痙攣する。

まさかこれが、恋??‥では無いよね。
うん。ストレス性の動悸と息切れを、気合いで落ち着ける。

隣に立つ国王陛下が、無言で頷いているから。握手するしかないのだろう。

パルメザン星人の大きな手(ハサミ)は、どの辺を握れば良いのか迷ってしまう。開いている刃の間の部分に手を入れたら指が無くなりそうだ。

「初めまして、ウルトリアノ・イヴァーナです。イヴァとお呼び下さい。」

とりあえず危険なので、刃の外側をニギニギしておく。

「フォッ、フォッ、フォッ、フォ。」

うん。。
何言ってるか全く分からない。
表情も変わらないので、嫌われているのか、好意的なのかも分からない。
彼と結婚、やっていけるのだろうか。

「はっはっは。いや、めでたい!式はいつにしましょうか。」

国王は、どうやら言葉が分かるようだ。
結婚が正式に決まってしまった事だけは分かる。

「あの、陛下。彼は何とおっしゃっているのでしょう。」

そう、私は、婚約者を紹介するとしか説明されていないのだ。

「ああ、すまない。これを耳につけてごらん。翻訳機だそうだ。」

そう言ってイヤーカフを手渡された。
陛下も片耳にこれをつけていた。
うん。コレは、先に渡して欲しかった。
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