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2.魔界の扉が開く時

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イヴァーノは自分の意志とは別に、それはもう美しく育った。

父の教えをしっかり守ってきたおかげで、修行僧の様に精神は無我の境地に達していた。

普通ならグレて癇癪持ちになってもおかしくなかっただろうが、前世持ちだったおかげで、周囲からは常識的で温厚な性格に見えているだろう。

この世界に何にも期待しない。希望を持たない。将来について夢もない。愛と勇気?なにそれ美味しいの。といった具合の前世ともまた違った何処か薄ら寒い人格になってしまっていた。

16歳のお披露目では、死んだ魚の目無表情をしていたのにも関わらず、社交界を賑わせ求婚者が続出したらしい。その中には王族も含まれていて父は満足そうにしていたけれど。。

イヴァーノ自身は相変わらず
ぽつり「どーでもいいわ。」
と日々を過ごしていた。

そうしていよいよ、この国の王太子の婚約者にイヴァーノの名が上がり始めた頃に、大規模なスタンピートが発生したのだった。

魔物の森の最深部に魔界の扉が開き魔王が降臨したらしい。

その付近一帯で魔素が濃くなり、ダンジョンが発生、中で急速に魔物が湧き、溢れ返ったモンスターが付近の村を襲い始めたのだ。

王都では、緊急対策措置として聖女召喚が行われた。呼び出された聖女は王家の秘宝、聖剣ドヴォルザークを操る王太子と共にチームを組んで魔王討伐に向かった。

戦いは苛烈を極めたが、イヴァーノの生活は何も変化が無かった。自身にもある魔力を使って戦いに参戦してみたかったが、精霊と契約をしないと何の魔法も使えないらしい。

無力な令嬢が参加しても、足手纏いにしかならない。正直ちょっと期待したのにがっかりだった。

しかも精霊のいる聖域には、女は足を踏み入れてはならないらしい。聖域が穢れてしまうんだとか。

なんだその男尊女卑。
もう一度言う。
「がっかりだわ。」

召喚された聖女には瘴気を払う力が備わっているが、その他の女が魔法を使うのは難しい。はぐれ者の精霊を狙うくらいしか方法が無い。

300年くらい前に世界樹を発見した女性の冒険者が精霊の契約者になったらしいが、それこそ眉唾物の雲をつかむ様な話だった。


戦で疲弊した民は救世主を求めていた。
そんな中、ついに魔王が討伐された。

公には発表されていなかったが、突如現れた異星人の王子が人族に協力したおかげで、勝利を収める事が出来たらしい。

圧倒的な強さを前に我が国の王太子と、召喚聖女はその戦いをただ見ているだけだった。

勝利の帰還、王都への凱旋でこの一風変わった風貌の異星人は、一際目立っていた。

だけれど、街への被害を最小限に抑えられたおかげで、人々からは、おおむね好意的に受け入れられる事となった。
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