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1.貴族令嬢は籠の鳥

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ウルトリアノ・イヴァーナ辺境伯令嬢は、つまらない世界に転生してしまったもんだと鬱々とした日々を過ごしていた。

美しい宮殿カゴの中でエサを与えられ、自由に外も出歩けない。
「羽を切られたカナリアの様だわ。」

そうして、貴族社会の面倒臭いルールに縛られて生きていて、この檻からは抜け出せ無い。

父曰く
使用人には、親しげに話しかけてはいけない。上位の貴族には、自分から声をかけてはいけない。感情を表に出さないように下位貴族に舐められてはいけない。

「あー。めんどくさ。」

領地の改善策を思いついても、女は口を出すなと言われた。

私は父の言う通りに、豪華な宝石で身を飾り、美貌を磨き、優雅に踊って見せ。アルカイックな気分で微笑み、高く買ってくれる飼い主を見つけなければならない。

将来はそのご主人様に媚びて永遠に出ることの叶わない鳥籠に閉じ込められ生きていくのだ。今の母の様に。

「貴族令嬢ってまるで、家畜みたい。」

欲しくもない高貴な血統書がついていて、野良では生きられない。脆弱な子供を産んで高値で出荷しなければならない。

マナーの教師に「貴族の令嬢は、皆んなそんなものよ、諦めなさい。」と言われても、前世の記憶が邪魔をして納得出来ないのだ。

ここにはストレスの発散方法が無いんだもの。「前世のお一人様が恋しいな。」

深夜のレイトショーでヤクザ映画を見たり、ふらりと新幹線に乗って温泉地に行ってみたり。

ロックフェスで、周りに合わせて馬鹿みたいに飛び跳ねてみたり。時にはお酒を飲んで、酔ったフリでお持ち帰りされてみたり。

イヴァーナは非日常を求めていた。

この世界には魔法やダンジョン、魔獣や異種族が存在するのに、一度もそれを目の当たりにした事が無い。

「はぁ。」
イヴァーナは頬杖をつきながらため息をつく。

図書室の窓の外には雲一つない夜空が広がっていて、何故だかいつもより星がざわめいて見える。木の上にいる伝書フウロウが鳴き声のひとつも上げないで、静かに瞬きしていた。

貴族街を出れば、エルフやドワーフの冒険者だっているらしい。
それでもイヴァーナは、デビュタントするまで敷地の外へ出る事が叶わない。

虫の声もしない、静かすぎる夜。
流れ星がジグザグに流れていく。

異世界の流れ星って、UFOみたい。そうだ、願い事をしなくちゃ。。

そうね。前世でも体験した事のない物がいいわ。

「ふふっ。宇宙旅行に連れて行ってちょうだい!!」なんてね。。
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