騙されて奴隷にされてたおっさん、即買いしたらチートすぎてヤバい!

厨二病・末期

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エルフの過去

06話 クッソ婆あぁぁ!

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 私はゴスロリファッションのおばあさんの元で、見習いとして過ごす事となった。

 おばあさんは里の人達から大婆様と呼ばれている。だから私も、大婆様と呼ぶ事にしたのだ。

 「大婆さま、シャシャンボの実、沢山摘んで来ましたよ!」

 「じゃあ、洗って干しといておくれ。」

 「はーい。」

 井戸の冷たい水で、ジャブジャブ洗いながら冷えたシャシャンボを一粒口に放り込む。舌で押しつぶすとプチッと弾けた。

 「しゅっぱ。」

 「つまみ食いするんじゃないよ!」

 「へーい。」

 大婆様は1番の年長者で、里ではちょっとおかしなボケ老人だと認識されている。

 里の人達はみんな素朴な民族服を着ているのに、大婆様だけエルフらしからぬハード・コアな格好をしているもんね?

 例えるなら、人里離れたのどかな農村に、聖●魔IIせいきまつのデーモン閣下が混ざっちゃってる感じ。違和感ありありだよ。

 それから大婆さまは、都合の悪いことはぜんぶ忘れたふりをする。苦言なんかは全く聞こえ無いふりをするしね。

 「あれ!!さっき私が作っておいたオヤキが無い!?」

 「なんだい、それ?みてないねぇ。もぐもぐ。」

 「あ゛ぁぁー!!それ、私のオヤツ!!」

 「はぁ、全く。何の事だか?最近物忘れが酷くてねぇ。」

 「くっそ、ばばぁ。」

 「様をつけな、様を!」

 「大クソババぁ様、私のオヤツ返せぇ!!」

 こんないい加減なババァだけど、実は一流の薬師で、その知識は膨大だ。だから、密かに弟子入りしたいエルフは沢山いる。
 
 いつものように大婆様と言い争っていると、ノックの音がして、店の扉がぎぃと開く。

 「大婆さま、こんにちは!!」

 弟子になりたい筆頭。里長の息子で三男のポルチーニがまた来た。春風のように爽やかな見た目の彼は、薬学に興味があるのか大婆さまの所へ調合について質問にやって来る。噂では優秀らしいけど?

 「今日こそ弟子にして下さいよ!ね?」

 「え??何だって??」

 「だから、弟子にして下さいって!!」

 「えぇ??」

 「だから、弟子に!」

 「はぁ、すまないねぇ、最近耳が遠くてよく聞こえないんだ。あたしゃもう、老い先短い身だから。他を当たっておくれよ。」

 大婆さまは、誰が来てもこうやって追い返す。本当は凄い地獄耳だって事、私は知ってるけどね。

 ポルチーニは、見習いの私が気に入らないのか、毎回ギロリと睨みつけて来る。

 「チッ。人もどきが。」

 そしてこんな風に、すれ違い様に小声で悪態をついていく。でもね、こんなのは無視より断然マシ。そう思う。

 だって、全くいないものとして扱われる方が結構傷つくからね。必死に話しかけているのに、目すら合わせて貰えなかったりすると、まるで自分が透明人間か幽霊にでもなってしまった様な、そんな虚無感に襲われる。

 だから私は今までの不安を解消するように、大婆さまの元で真剣に学んだ。文字の読み書きから、エルフの掟や周辺国の力関係なんかまで。大婆さまは、質問すればなんでも答えてくれたしね。

 雑用や仕事の手伝いをする以外は、勉強に費やした。前世でもこんなに勉強した事なかったね。寝る間も惜しんで頭に叩き込む。早く1人でも生きていく術を身につけたかったから。

 だって里では相変わらず無視され続けていたし。大婆様は私を引き受けてくれたけど、時々別れを匂わせる事を言った。この関係は、ずっとは続かない。結局、私の居場所はここには無いのだとそう思ったんだ。



*****************


 『グゥー、ギュルルルー。』

 はぁ、お腹すいた。精霊と契約してから、最近やたらとお腹が空く様になった。ピカロが時々やって来て、私から根こそぎ魔力を奪っていくせいだと思う。何とかしないとな。

 そう思っていると、かまどの方から何か香ばしい香りが漂ってきた。(くんくん)自然と口内に、唾液が溢れる。(じゅるっ)

 「わぁ、大婆さま。いい匂いですね。」

 「ツキヨタケのクッキーを、焼いたんだよ、食べるかい?」

 「わぁ!やったー!いただきます。」

 そのクッキーは微かに発光していて、キラキラとファンタジーな見た目をしていた。私はそれを物珍しさから、喜んでパクッとくちにほうりこんだ。

 その後、後悔するとも知らずに。

 「ぐはっ、じ、じだが、じびれゔっ。」

 「イッヒッヒッ!!また引っかかったね!!アンタ本当にバカだねぇ。他人を信用するなってあんなに忠告してるのに、もっと疑い深くならなきゃ酷い目に遭うよ。こんな風にね。」

 「ぐっ、ぐぞばばぁぁーー!!」

 私はその後、このクソばばぁ様にさんざん騙され続ける事になる。でもこれは、人の世界で油断しないように躾けてくれてたんだって、今なら分かる。



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