騙されて奴隷にされてたおっさん、即買いしたらチートすぎてヤバい!

厨二病・末期

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エルフの過去

05話 隻眼のゴスババ様

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 『グギュルルルルーッ』と、大きな音を立ててお腹が鳴った。私は酷い空腹で目を覚ましたのだ。ここはどこなんだ?口端に垂れた涎を拭いながらキョロキョロと辺りを見渡す。

 何処かの薄暗い部屋にいて、目の前に何か薄ぼんやりと光るものがある。なんだこれは??よく目を凝らすと、その光と何故か視線が合う。これは、瞳??

 え、ひとみ??

 私はずっと、光るの目に見られていたのだ。

 「ひ、ひぃぃっ。ぎゃぁぁぁー!!」

 私は驚いて、悲鳴を上げた。その一つ目は瞬きもせず射るように、こちらをジィーっと見つめていた。それに、しゃべった。

 「はぁ、大袈裟だねぇ。静かにおし。」

 いやいやいやいや、私がリアクションを取りすぎた訳じゃ無いよ?至って普通よ?だってさ、全く知らないおばあさんと、起き抜けに目が合ったら誰だってこうなるでしょぉぉぉ??

 すぅ、はぁ。とにかく、落ち着こう、私。

 「すっ、すみません、あなたは?それに、ここはどこなんでしょうか。」

 私は現状を理解できていないまま、目の前にいたエルフのおばあさんに謝罪をした。左目にハート型の紅い眼帯を付けていて、ゴスロリ風なデザインがおしゃれだ。ん?ロリじゃ無いな、ゴスババァか?

 「アンタ、今なんか失礼な事考えてたね?」

 「い、いえ、ステキな眼帯だと思っただけです。エルダーゴス風な所が特に。」

 頭にかかる黒く長いヴェールには、よく見ると所々血飛沫を浴びた様な跡もある。まるで、棺桶から抜け出して来たような、そんな怪奇さを醸し出している。もし墓場で出会ってたら、間違いなく逃げる。むしろ、今逃げたい。

 「アンタ、考えてる事が顔に出過ぎだよ。」

 「え?そんな、前衛的でオルタナティブなファッションスタイルだなぁと思ってただけですよ?」

 「はぁ。まぁ、いいさ。あたしゃ闇薬師のカエン。ここは、里のはずれにある調剤用の隠れ家さね。厄介な悪垂れ精霊が突然やってきて、アンタをここに捨てていったのさ。」

 「あ!?ピカロは??カエンさん、その精霊は、何処に行ったんですか!?私、あの子と契約したんです。話をしないと。」

 「はぁ、馬鹿だねぇ。あの問題児と契約して、しかも忌み名まで教えたんだろう?アンタ魔力吸われすぎて、あとちょっとで死ぬとこだったんだよ?ホントもう、何やってんだか。親に契約の決め事も教わらなかったのかい?」

 「お・・・親は、いません。捨て子だったので。」

 「あぁ、あの捨て子かね。まだ生きていたとは、運があるのか無いのか。全くしょうがないねぇ、お前さん、ここでしばらく行儀見習として置いてやるよ。でないとアンタ、このままでいたら直ぐに死んじまうよ?」

 「ほ、本当ですか!!ありがとうございます。宜しくお願いします。」

 私はそう言って、頭を深々と下げた。

 おばあさんの見た目はホラーだが。初めて大人と会話ができて、ほっとしたんだ。だって、ずっと不安だった。相棒になってくれる筈のピカロには酷い目に合わされるし。今まで知らない事、訳の分からない事が多すぎて複雑な迷路に迷いこんだみたいに心細かった。

 前世は14歳まで生きて、今世の年齢と合わせたらもう成人くらいにはになるのに。

 何故か握った手の甲に、ポトリ、ポトリと涙粒が落ちていく。人前で泣いてしまうなんて、凄く恥ずかしい。自分の心はもうずっと、大人のつもりでいたんだ。

 そう思わなきゃ、やってらんなかった。

 「アンタ、名前は?あぁ、間違っても、忌み名は言うんじゃ無いよ!通し名の方だ。」

 「ずびっ。エリン、でず。」

 「おぉ、よしよし、今は泣いてもいいさ。でも、これからも生きて行きたきゃ、簡単に他人の言葉を信じちゃいけないよ?分かったね。自分以外は、全員疑う。そう言うもんだよ。他人を信じるのは、バカのやることさね。」

 「ずずずっ、ぐしっ。ばかりまじだっ。」

 骨ばったおばあさんの手が、そっと背中を撫でてくれて、それだけなのに涙が止まらなかった。

 
 
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