一よさく華 -嵐の予兆-

暮れ六つ過ぎ。
十日ごとに遊郭に現れる青年がいる。

柚月一華(ゆづき いちげ)。
元人斬り。
今は、かつて敵であった宰相、雪原麟太郎(ゆきはら りんたろう)の小姓だ。

人々の好奇の目も気に留めず、柚月は「白玉屋」の花魁、白峯(しらみね)の元を訪れる。

遊ぶためではない。
主の雪原から申し渡された任務のためだ。

隣国「蘆(あし)」の謀反の気配。
それを探る報告書を受け取るのが、柚月の今回の任務だ。


そんな中、柚月にじわりじわりと迫ってくる、人斬りだったことへの罪の意識。

「自分を大事にしないのは、自分のことを大事にしてくれている人を、大事にしていない」

謎の言葉が、柚月の中に引っかかって離れない。
「自分を大事にって、どういうことですか?」
柚月の真直ぐな問いに、雪原は答える。
「考えなさい。その答えは、自分で見つけなさい」
そう言って、父のように優しく柚月の頭を撫でた。

一つよに咲く華となれ。
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